万策尽きた
香月と早乙女の静かなる攻防は続く。
男冥利に尽きる好事なのだが、俺的には経験したくはない悪夢だ。
「中々決着が着かないよ」
「激戦が繰り広げているのはいいが、もう、タイムリミットだぞ」
と、俺は弟の写真を背景にしているスマホで時間を確認して伝える。
そう、祭りのそう仕上げ。
オーラスの花火打ち上げ時刻が刻々と近づいているのだ。
「そうなると僕らが負け、世界滅亡へと確定してしまう」
「相変わらず、何でこんなデートから世界の滅亡に直結しているのか、俺には理解が苦しいが、そんな事はこの際どうでもいい。弟との約束を不意にしてまで強行したんだ。最善の結果を出さなければ、この後訪れる遙斗との死闘に耐えきれない」
「こんな時でも桂ちゃんはぶれないのだ」
「褒めるなテレる」
「褒めてない」
などと気休めのジョークを交えながらも、色々と次の展開を俺なりに考えていた。
だが、
「ぬう、これは詰んだかな」
「おいおい一条」
万策尽きたと聞こえてきそうな困り顔がそこにある。
まさか一条からギブアップの声があがるとは予想出来なかった。
「ここから数十パターンシミュレートしてみたけど、時間がネックになっていて、ご破算になるビジョンしか映らない」
「お前が言うんだから間違いないだろうな」
「面目ないのだ」
だが、ここで終わる訳にもいかない。
答えが分かっていても悪足掻きはさせてもらう。
しかしながら、俺の頭では選択肢は少ない。
俺が出向いて喧嘩を吹っ掛ける。
一条が出向いて彼女と言い張る。
香月がもっと頑張る。
などと並べてみたが、どうにも決定打にかけた。
俺が喧嘩を売ると、お互い庇い合って多分仲が良くなるだろう。
一条が彼女は、ロリコン犯罪臭がして早乙女に信じてもらえない可能性がある。
香月に至ってはこれ以上煽ったら俺が殺されるだろう。
相変わらず引き出しが少ないのが、俺の弱点だな。
ボキャブラリーが多くても何の役にもたたない。
一条は頭を抱え、「うにゅうう!」と唸っていると、呪いの効果音みたいなメール音が鳴った。
「こんな時に誰からだ?」
「凛子。祭りにきているんだった」
そうだ、円谷はどうだろうか。
久保田とも同じ部活で、因縁というか面識があるし、未だに円谷に横恋慕している。
だが、あの真面目ちゃんへどうやって協力を取り付ける?
大体、前に俺が振ってから一度も顔を付き合わせていない。
幾らその場しのぎ嘘でも、直ぐ前言撤回出来る程、残念ながら俺達は大人ではないのだ。
すいません、ラストの展開に悩んでいたら、更新出来ませんでした。




