『肉食』 についての捜査メモ 1
オレゴンの片田舎には不釣り合いなほど、異様な光景だった。
「こんな悲惨な現場、見た事がないぞ。大丈夫か、新人?」
「は、はい」
自分でも声が震えているのが分かる、けど強がりでも履いていなければやっていられない。
「無理はするなよ? 医者はなんて?」
事前に医者に尋ねて書き留めたページを開く。
「これは熊などの野生動物の仕業ではないそうです。動物にしては腹の裂き方が綺麗すぎると」
手帳のページをめくる。
「彼が殺されたのは昼間だったようですが、なにぶんこんな所に来る人は少なく発見が遅れたのではないか? という事でした」
今の時期は小麦の背が高く、それも発見を遅らせた要因だろう。
「最近起きた牛の連続死との関係についてなにか言っていたか?」
手帳を閉じ、彼の目をしっかりと見た。
「同一犯であろう、という事でした」
※
もし、このメモが捜査資料して提出された時の為にひとつ注意事項を追記しておく。
ここから書き記す事はあくまで、現場の状況と残った証拠から考えた個人的な考えという事だけはご了承頂きたい。
今回の事件は、ゴードン氏の所有する村はずれの農場の一角で起こった。
村の周辺では、最近野生動物や家畜の馬や牛が殺される事件が起こっていた。初めはオオカミか熊の仕業であろうと仲間内で話していたのだが、事件発生の数日前に見つかった牛の死体で考えを改めた。
裂かれた腹の中に、明らかに人間の歯が刺さっていた。
それから起こったのが今回の変死事件。
ここに誘われて来たのか、ここに来たのを殺害したのかは分かっていないが、被害者のコールが殺されたのは血の量などから、ここで間違いない。
コールは犯人と揉みあいになったらしく、彼の爪の間には固まった血のようなモノが挟まっていた。
しかし、その抵抗もむなしく……
犯人は彼を殺害した後、今まで家畜にしてきたのと同じように腹を裂く。
ただ、動物のように簡単には裂けなかったようで途中からコールの持っていたナイフを使いその胴体をこじ開けた。
そして、人ですらも家畜と同じように中身を貪る。
ただ、喰い慣れていなかったのか、そのまま吐き出してその場を立ち去った。
現場から森の中へと一直線に血の道が続いていた。
この……『ミートイーター』 とでも名づけようか、犯人が見つかるまでそうはかからないだろう。