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『肉食』 についての捜査メモ 3


「まさかこの日本で見る事になるとは……」


 喉の奥からこみ上げてくるモノを無理矢理に抑え込みながらも、現場の様子を見る。


「おい、新人!」


 背後から怒号が飛んでくると同時に、乱暴に肩を掴まれて押しのけられる。


「どけ! お前のような若僧が出張ってくる事件じゃねぇ!」


 直属の上司である村木は、人をこうも見下す。


「これは私の父がアメリカで見たという『ミートイーター』という食人鬼の……」


 グン! と、服を掴まれて舌を噛みそうになる。


「いいか! お前の親が有名な医者のは分かっている! だがな、それとお前がここでやっている仕事とは関係がないんだよ! この村で一番の警官は俺だ!」


 村にある駐在所の古株だっていうだけで、こうも偉ぶれるのかと思う。


「それと、そうやっていきなり犯人を決めるのは軽率だ。たしかに現状がお前の言う殺人者と似ているのだとしたら、より多くの証拠を集めろ! 初見で判断するのは危険だと、心得ておけ」


 ただ、言う事と行動が正しいのも事実だ。


「……それで、どういう状況だ?」


 私は襟元を直しながら説明する。



 被害者の名は加藤源蔵かとうげんぞう 、職業は農家。

 犯行時刻は聞き込みによると、昨晩から翌朝にかけてのようだ。昨日の夜、彼は行きつけの飲み屋に友人と一緒に行ったというのが分かっている。

 そして彼は「酔いが回った」 と、友人に告げるとひとりで帰路に着いた。

 翌朝、仕事に来ない事を心配した同僚が様子を見に来て発覚した。


 発見時彼は衣服を着ておらず、周囲に衣服が散らかっていた事から着がえをしようとした所を襲われたのだろうと推察できる。

 それともうひとつ。

 彼の周囲には薪割り用の斧が投げ捨てられていた。


 たぶん、こうであろう。

 飲み屋から戻った彼は、ほろ酔いながらもしっかりと着替えて床につこうとしていた。

 しかし、急な来訪があった。

 開いた戸の方を向くと、そこには見ず知らずの誰かが立っていたのだ。

 その異様な雰囲気に彼は斧を構え威嚇してのだが、その来訪者は一切気にするそぶりを見せなかった。

 

 常人とは思えない動きで被害者に近づく『ミートイーター』

 しかし、彼にも誤算があった。

 被害者が斧を振り下ろしたのだ、そしてソレが『ミートイーター』 を傷つけた。

 その証拠に小上こあがりから外に向けて、血痕が飛び散っている。


 それが彼を怒らせることになったのだろう。

 刃物を嫌う『ミートイーター』 は、自らに突き立てられた斧とその持ち主に対して激しい怒りを向ける。

 それはいつもの手法さえも忘れさせ、ただひたすらに部屋の中に鮮血を飛び散らせる結果になった。


 斧を弾き飛ばし、内臓の中身を壁に叩きつけ、体中の血液一滴残らず全て飛び散らせる。

 それはいつもの食事とは、一線を画すただの破壊衝動でしかない。

 そして『ミートイーター』 は、どこかに消えた。

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