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『肉食』 についての捜査メモ 2


「この手口はヤツだ」


 ワシントン州サウスイースト、その民家の集中している一軒の民家。

 その中のよくある変哲のない家の中からから「異臭がする」 と、通報を受けた州警察の警官は臭いとその現場の凄惨さで倒れたそうだが、その気持ちも分からなくはない。

 俺だって「ヤツ」 と関係がない事件ならば、こんな所に来るのは願い下げだ。


「ウッ……」


 新人にはコイツはキツいだろうが、慣れてもらわなくては困る。


「おい、ここで吐くなよ」


「は、はい……」


 俺の新しい相棒としてあてがわれたのは東洋人の医者だった、えらく神経質そうな顔立ちで上手くやって行けそうにないと思っていた。


「とりあえず、被害者を教えろ」


 東洋人は口元を時々抑えながらも手帳のページをめくる。


「被害者は……この家の父親であるケント、母のジョディ、息子のジムとその彼女のケイトリンです」


 他の奴らが家の中を行き来しているが、集中しているせいで紙の擦れる音が嫌に耳についてしょうがない。


「一階の応接室にケントとジョディがいたそうでその首筋には手形がくっきりと残っていたそうです」


 普通の警官ならばひとりを殺した所にどちらかが入ってと思うのだろうが……違う。


「二階のジムの部屋では、彼とケイトリンが……」


「いい、見ればわかる。この血だらけの部屋を見たらな」


 辛うじて天井だけは見えているが、狭いとはいえ部屋の中をこうまでも染めるだなんてどれだけの事が行われたのか、まったく。


「……よく平気な顔をしてられますね」


「それは皮肉か?」


 コイツがそんな事を言うような性格出ない事は数ヶ月の付き合いだが分かっている。


「長いからな『コイツ』とは」


 回数自体はぞんなに多くはないが、もう十年以上は追いかけている。


「『ミートイーター』と相対するならば、多少の冷淡さがなければやってはいけない。肝に銘じておくんだ」


 つばを飲み込む音が響く。



 今回の事件を考察する。

 あくまで私の想像であり、実際の状況と同じであるとの断言は出来ないとだけ書き加えておく。


 今回の被害者である一家と『ミートイーター』 とは知り合いだったのだと思われる。それは応接室に夫妻の遺体があった事から読み取れる事だ。

『ミートイーター』 の殺しは、基本的に本能に忠実であるがごくまれに、今回のような計画的な行動をとる事もあるのが読み難さに拍車をかけている。


 家のベルを鳴らした『ミートイーター』 は、いつもと何食わぬ顔で夫妻と軽い会話でもしながらもその内心では舌なめずりをしていたのだろう。

 応接室に招いたのはケントだろう。

『ミートイーター』はジョディも同席してくれないか? と、でも言ってふたりを部屋に居させた。

 出来る限り最短時間でコトを済ませたかったのだろう。

『ミートイーター』 の前に座ったふたりは立ったままでいるソイツを見上げた、その証拠に首筋の跡は真上から椅子に押しつけられたかのようになっていて、遺体の目は白目を向いたままだった。

 ヤツの握力は異常であるのは過去の事件からも疑いようがなく、今回もふたりを同時に占めたかのように首筋に残った跡は片手ずつだった。


 夫妻を殺害した後に『ミートイーター』は、ある事に気づいた。

 二階で物音がする事に。

 二階のふたりは下で人が殺されているだなんて思わなかっただろう。

 先にふたりに気づいた『ミートイーター』は気づかれないように二階へと上る。


 ゆっくりと部屋に入り、そのまま首を掴む。

 その姿に『ミートイーター』は何を思っていたかは知らないが、まともな思考で無いのは疑いようはない。

 ふたりが息絶えた後、彼らの中身をいつものように素手と木槌を使い抜き出して食い散らかした。

 支配欲とでもいうものだろうか。


 ただ、今回の事件では向こうが思っている以上にたくさんの証拠が挙がった。

 指紋、足のサイズ、背丈、そして近隣住民の証言も。

 奴までもう一息だ。

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