プロローグ
それは突然に起きた。
俺、橘 陸人はとある一流レストランで見習いをしていた。もともと手先が器用だったからか自分で言うのもあれだが、料理ができる。しかも、この店のオーナーのお墨付きだ。だから厨房を見習いが任せてもらえた。一流レストランにはあるまじき行為だが、俺的には楽しいからなんの問題もない。いや、あってたまるか。そんなレストランで仕事として、料理を作っているうちに、俺の心に変化が起きた。最初は、自分が作った料理を食べてもらって、喜んでもらえるのが嬉しかった。だが最近になって、料理を作ることの楽しさ、食べてもらうことの嬉しさ、そう言うものが感じられなくなってしまった。ただ注文された料理を作ってお客様に出す。そんなプログラムされたロボットのような仕事をしているとオーナーから声がかかった。
「橘ー。お前これ行ってみるか?」
「はい?」
それは料理が上手くなりたい、と思う人達が行く講習会のようなものだった。
「行きませんよ。講習会なんて面白くないし。」
「でもな、この講習会なんと、あの笹崎シェフが来るんだとよ!」
俺はその言葉に耳を疑った。笹崎シェフというのはこの料理会のエリート中のエリートで、このシェフが作ったものに不味いものなどないと言う、シェフ達にとって憧れる人だ。
「なら行かせていただきます!いえ、行かせてください!」
「おっ行く気になったね〜じゃーこれ明後日だからがんばって!」
「はい!」
俺はオーナーと一緒に明後日の話などをした後、明日の店の支度を始めた。普段は絶対やりたくないのだが、今日は特別だ。なにせこの店とオーナーのおかげで笹崎シェフに会えるのだから!ありがとう!この店!あとオーナー!俺が感謝をしながら支度をしていた時、後ろから『ヴォン…』と音がした。
「ん?」
振り向くとそこには黒い穴があった。
「なにこれ?」
そういうと同時に、俺は頭を掴まれ、黒い穴に引きずり込まれてしまった。
初投稿です。至らぬ点しかないと思いますが、ゆっくり投稿していこうと思いますのでよろしくお願いします。