第九十話 帝国最終兵器始動
カゲインを殺したところへ戻ってきたリユイは後ろを振り返らず死んだカゲインを見ながら背後の者へと話しかけた。
「なんでカゲインのもとへ帰ってあげなかったんですか・・・・・キャシャ姫?」
名前の後ろに姫とつけられ呼ばれたキャシャは驚く。
「なんで・・・・・知っているの?」
「カゲインの記憶を見ました。あの時、一体何があってその後どうなったのか、そして何故カゲインのもとへ帰ってあげなかったのか、教えて下さい」
キャシャは眼鏡をはずすと少し俯き静かな声で話始めた。
「娘を産んでカゲインさんと離れてから私とグラッドさんとバツちゃんはオイトさんに会ったの。
どうやら私達を助けようとしに来てくれたみたいだった。
そこで私は決めたの。
この人だったら娘を預けられるって。
だからオイトさんに娘を預けて私達とは別のルートで逃げてもらった」
(オイトさん、嘘をついていたのか)
「でもその直後、兵士達に見つかった。
バツちゃんが足止めしてくれている間にグラッドさんが私達の死体をスキルで作ってくれてそれを置いて逃げた。
バツちゃんはもう既に倒れていた。
グラッドさんは私を背負っていて大変だらうに休むことなく逃げてくれた。
途中小型ドラゴンを捕まえたからそれに乗ってまた更に遠くへ逃げた。
そしてオイトさんがいるって言っていた東聖国に着いた。
でも東聖国に留まってはいけなかった。
結局オイトさんは見つけられなかったし、カゲインさんの魔王としての動きが活発になってしまったせいで国の外へ出ることも出来なかったの。
色々な方法で脱走を試みたんだけど全部ダメ。
そして数年が経ってしまった。
やっと国を出られるようになった私達はすぐにカゲインさんのところへ向かった。
けどバツちゃんに見つかっちゃって。
バツちゃんは私達のことを本物だと思わなかった。
危うく殺されかけた。
その時私達は足に傷を負ったの」
「じゃあグラッドさんも嘘をついていたのか」
「申し訳ございません」
リユイの言葉にグラッドは謝る。
「・・・・・別にいいです。話を続けて下さい」
「東聖国になんとか帰って来た私達は仕方なく新しい仕事を見つけて働いた。
そんなある日貴方とサラちゃんを見つけたの。
サラちゃんを見てすぐに私の娘だと分かった。
急いでグラッドさんに伝えたらグラッドさんが鍛冶屋に変装してくれて、貴方とサラちゃんが話している言葉のなかにオイトさんの名前が聞こえたから間違いないって確信した。
それからは・・・・・貴方の知っている通りよ」
「そう、ですか・・・・・」
リユイはキャシャから一通りの出来事を聞き俯く。
(カゲインとキャシャさんとのやっとの再会がこんな形になってしまうなんて・・・・・)
瞬間、城が崩壊し始めた。
主をなくなしたせいでこの世界に存在するエネルギーが絶たれたためだ。
そしてグラッドもまた足から上へとどんどん消えていく。
「チッ。キャシャさんここから逃げましょう!」
「リユイさん、私達はここでカゲインさんと死にます」
「え」
「外に先程言った小型ドラゴンがいますのでどうぞ使ってください。それではリユイさん・・・・・ありがとう、さようなら」
二人の間に城の瓦礫が落ちて互いの姿が見えなくなる。
(カゲインさん、すぐにそっちに逝きます。待っていてください)
キャシャは横たわるカゲインの手を握る。
そして頭上から大きな瓦礫が落ちていき――
キャシャは目をおもいっきり瞑り構えたが一向に瓦礫が落ちてくる様子はなかった。
「え?」
キャシャは不思議に思い振り返るとそこにはリユイが心映武器を巨大な盾にしてキャシャを庇っていた。
「僕はもう仲間は誰も死なせないって決めたんだ。勝手に死なれちゃ困るよ」
「・・・・・リユイさん」
リユイは盾に乗っかっている瓦礫を、心映武器を食虫植物のように形を変えて口を閉じると瓦礫は粉々に砕け散った。
「カゲインだってキャシャさんが死ぬことを望んでいないと思いますよ。それに・・・・・サラをまた一人にさせてしまうんですか?」
「・・・・・!」
リユイの言葉にキャシャはハッとする。
そんな様子のキャシャを見たリユイは頷くとキャシャへと手を差し伸べる。
「ここから脱出します。いきましょう」
「・・・・・分かりました!」
その頃アレン達は・・・・・
「あ、城が崩れ始めている」
「ってことは殺ったのか?」
既にユミとサラとは合流し、魔王城の前に丁度着いたところだった。
「そんな・・・・・リユイ」
アレンの言葉を聞き心配になったユミは誰よりも先に城へと走っていった。
「あ、危ない感じですよ!」
「私はドラゴンだから大丈夫」
ユミが城の近くに着いた時、既に城の崩壊は終わっていた。
「リユイ・・・・・リユイ?」
必死にユミはリユイを探すがそこには誰もいなかった。
「そんな・・・・・」
ユミは膝から崩れ落ちる。
リユイが死んでしまうことを覚悟はしていた筈なのにいざリユイが死んでしまうとユミは悲しみを押さえきれなかった。
一つ、また一つとユミの目から涙が零れ落ちる。
その時、ユミの頭を撫でる人物がいた。
「ごめん、心配かけた」
「え」
ユミが顔をあげるとそこにはリユイがいた。
リユイの背後にはなぜかキャシャまでいる。
ユミは血塗れでボロボロなリユイを見て魔王ととの戦いの激しさを理解した。
「大、丈夫なの?」
「うん。魔王、倒したよ」
「そうなんだ。よかった」
ユミは溜息をつくとリユイへと抱きついた。
リユイは抱きついてきたユミをしっかりと抱き締め返す。
「サラちゃん」
「キャシャさん? なんでここに? 国の避難所に逃げた筈では・・・・・?」
「貴女に話さないといけないなことがあるの」
「え?」
流石に察しのいいサラもキャシャの心は読めていなかったらしい。
キャシャの口から告げられた事にサラは混乱するも最後までしっかりと聞いた。
そして全てを聞き終えたサラは俯いておりキャシャはその表情を伺うことは出来なかった。
「・・・・・サラ、ごめんなさい! 貴女を迎えに行けなくて、出会ってからも黙ってて」
キャシャは許されないのを覚悟で謝った。
自分はそれほどに娘に対して酷いことをしたのだから。
でも、許されるならば今からでも家族として一緒に生きていきたい。
直後、キャシャは温もりを感じた。
目を開けるとサラが自分に抱きついているのが分かる。
「お母さん・・・・・会いたかった!」
サラはキャシャの肩に顔を埋めて流れてくる涙を隠した。
自分を受け入れてくれた娘にキャシャは嬉涙を流しサラを強く抱き締めた。
その様はまさに母と娘の愛情の強さを表していた。
だが――
「うわっ」
「なんだ!?」
「伏せろ!」
物凄い揺れが皆を襲った。
「な、なにこの揺れ?」
ユミがリユイから離れながら立ち上がる。
リユイもまた立ち上がりある方向を向いた。
「帝国の最終兵器・・・・・皆! 震源は中央カマクラ山だ! 一旦空へ飛べ」
「「了解!!」」
その頃博之(カマクラ王)は・・・・・
(なんだこの地震は?)
リユイ達が感じた揺れよりも遥かに大きい立っていられないほどの揺れを感じていた。
しばらくして揺れがおさまるとなにやら大きな、まるで土砂崩れでもしているかのような音が聞こえた。
博之は気になって外を見ると中央カマクラ山の中から巨大ななにかが出てきていた。
「クソッ、動き出しやがったか! おい! 軍を急ぎ中央カマクラ山まで出動させろ!!」
「は、はひ!!」
博之の命令に側近が噛みながらも応え急ぎ部屋から出ていく。
博之は窓を開けて懐から銃のような魔道具を取り出すと空へと向けた。
そして引き金を引くと天へと赤色の狼煙が放たれた。
「来てくれ、元反乱達」




