第八十七話 カゲインの過去(5)
場面は処刑場から民家へと移った。
「流石に人手が足りないか・・・・・」
民家に立て籠ったカゲインは外の様子を見てそう口にする。
「悪魔召喚されてはいかがでしょうか?」
「あまり使いたくない・・・・・けど仕方ないね。悪魔召喚」
カゲインそう口にすると以前と同じように地面に魔方陣が描かれ悪魔が出てくる。
「ウアアアアアアアア」
カゲインは一瞬魔王の力に飲み込まれかけたがなんとか今回もこらえられた。
魔方陣から二人の悪魔が出てきた。
「双・・・・・子?」
「カゲイン様、ご命令を」
「あ、ああ。うん。じゃあ・・・・・姉がツミ、妹がバツという事でツミは――の出産の手伝いを、バツは俺と一緒に戦って」
「「了解」」
戦いは熾烈を極めた。
なんとか兵士を一人も家の中へと入れることなくカゲインと配下の悪魔達は守りきった。
「カゲイン様、産まれました! 元気な女の子です!」
ツミが泣き喚く赤ん坊を抱え家の中から声を張り上げた。
「分かった! グラッド、――を背負え。バツ、後方からくる攻撃に対処してくれ。ツミ、赤ちゃんを抱っこしてくれ。逃げるぞ!」
悪魔達と姫はカゲインの命令の通りに動きその場から逃げる。
だが兵士の数が多過ぎて流石にこのまま逃げきることは出来ない。
「グラッドとツミは先に逃げろ! 俺とバツはここで時間稼ぎをするから」
「了解」
カゲインは逃げていくグラッド達を見送ると兵士達を見る。
「ここから先は誰もいかせないよ」
そして両の手の甲から短剣を出した。
「ハア、ハア、ハア」
あれから数十分後。
バツがいるお陰でカゲインは今もなお戦っていた。
「カゲイン様、そろそろ」
「あ、ああ。逃げよう」
そして二人は逃げ出した。
カゲインとバツは先に逃げたグラッド達を追った。
最初に見つけたのは倒れたツミだった。
「つ、ツミ? 大丈夫!?」
バツは急いぎツミへと駆け寄る。
だがカゲインは動かずツミの更にその先を見つめていた。
何故か?
グラッドと・・・・・姫の死体がそこにあったからだ。
リユイも動揺する。
(え、なんで? ここで死んでしまったといいなら何故僕は――さんとグラッドさんと会えたんだ? いや、待てよ・・・・・これ、偽物なんじゃ・・・・・)
《マスターの言う通りです。姫とグラッドは偽物の死体を使い逃走しています。バツは本物ですが》
(そんな・・・・・じゃあカゲインは・・・・・!)
カゲインは力が抜けたように膝をついた。
そしてカゲインの顔は怒りで歪められていった。
「赦さない。赦さないィィィィ!!」
「カゲイン様・・・・・」
「上位悪魔召喚!!」
カゲインは怒りに任せ魔王の力を使ってしまった。
それも最も大きな魔王の力を。
「グオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアア」
カゲインは塗り替えられていく自分の心を感じるも上位悪魔召喚を止めなかった。
そして――
「ハア、ハア、ハア、ハハ。ハハッハハハハッハハハハハ」
カゲインは壊れた。
悪魔召喚よりも複雑に描かれた魔方陣からゆっくりと筋骨隆々な悪魔が現れる。
「カゲイン様――」
「お前の名はルシファーだ」
「は、はあ」
召喚完了した瞬間から名前を決められ少し驚くもルシファーは喜び思わずにやける。
「悪魔軍召喚」
カゲインはそう呟くとカゲインの目の前に紫のオーラを纏った真っ黒い門が現れた。
そしてその門が開くとそこから大量の下級悪魔が出てくる。
「う、うう」
「ハッ、ツミ? 大丈夫?」
「う、うん。それよりもお姫様は・・・・・」
バツは首を横に振る。
ツミは俯き拳を握りしめた。
その顔は悔しさで歪んでいた。
「ツミ、バツ、ルシファー、そして下級悪魔ども! この国を滅ぼせェェェェ!!」
国は滅んだ。
姫の父親である王も姫の母親である王妃も死んだ。
一方的なカゲイン軍の殴り殺しで。
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
滅んだ国を眺めるカゲインにルシファー達はかける言葉が浮かばなかった。
「ほ~う。随分派手なことをしてくれたじゃないか」
そこに何者かの声が聞こえてきた。
カゲインと共にリユイが背後を振り返るとそこには一人の男がいた。
「勝手なことされると困るんだよね、だから君も・・・・・僕の手下になろっか?」
「俺に関わるな! 関わると言うならば――」
瞬間、カゲインは倒れていた。
「うん? 関わるというならなんだい? 君は僕にそんな事を言える立場なのかな?」
カゲインが倒れている地面の下に魔方陣が描かれていく。
それに気づいたカゲインは急ぎ身を起こそうとするが全身に力が入らず起き上がることは出来なかった。
<影転移>を行おうとしても全身が痛みだし出来ない。
「契約魔法」
その声を合図に魔方陣から無数の鎖がカゲインへと巻き付く。
悪魔達はその鎖を阻止しようとするが魔方陣へ近づいた瞬間吹き飛ばされた。
そして場面は変わった。
カゲインは契約魔法を強制的にかけられてしまったせいで謎の男に逆らえなくなってしまった。
カゲインは仕方なく謎の男と話をするしかなかった。
「早く話すこと話しちゃって下さい」
「まあそう焦んなって、帝国の最終兵器を潰すのにちょっと疲れちゃってんだから。あ、そうそう、君にその帝国の最終兵器を預けるから管理よろしくね」
謎の男は親指をたてカゲインに突きつける。
「は?」
「場所は反乱軍が立て籠っている山と山の真ん中に今新しい山作ったんだけどその山の中だから」
「はあ」
なんだかよく分かっていない顔でカゲインは頷く。
(確かそこって中央カマクラ山だよね)
《はい、そうです》
「因みにだけど、君が死んだらあれ動き出すから死なないように人間達のためにも頑張ってね」
(「え・・・・・は、はぁぁぁぁぁ!?」)
リユイとカゲインの二人は驚き叫んでしまった。
どんなカゲインの様子を見て謎の男は面白そうに笑った。
「ハハハハ。面白い反応だね」
「お前!! なんでそんな事を――」
「だって君、今にも死にたいって顔してるんだもん。せっかく契約魔法を使ったんだから簡単に死なれちゃあ困るよ」
「・・・・・!」
謎の男はカゲインの心を見抜いていた。
それゆえに簡単には死ねぬようにカゲインの命と帝国の最終の封印を結びつけたのだ。
(じゃあ現在世界に戻ったら帝国の最終兵器とやらを壊さないといけないな)
《そうですね》
「そろそろ本題を話そうか」
謎の男はカゲインへと向き直った。
「まず僕の自己紹介といこうか。あ、君のことは知っているから別にいいからね。僕は全ての魔王を統べる大魔王とでもいった者だ。名前は・・・・・面白そうだからあえて言わないどこう」
「いや、言えよ」
「やだね。話を続けるよ? 魔王達は皆僕の指示で動いているんだ。なんでかって言うと人間の数を調節するために」
「? なんで人間の数を調節する?」
「神が降りてこないようにするためだよ。まず人間の数が増えすぎると魔素が増えて減りすぎると魔素が減ってしまう。これは知っているね?」
「ああ、一般常識だ」
「この世界で魔素の大きな変動があると神がこの世界に降りてくる必要条件が揃ってしまうんだ。神が降りてきてしまったらそれは終焉を意味する。僕達はなんとかそれを防ぐ為に人間の数の調整をしているんだ」
「・・・・・知らなかった」
「人間に知られていたら困るよ。それじゃあ」
大魔王は振り返る。
「また来るからね。バイバーイ」
そして大魔王は消えた。




