第八十六話 カゲインの過去(4)
二人はとある町にそれぞれ正体を隠し普通の人間として行き始めていた。
カゲインはモンスターの討伐で金を稼ぎ、姫はギルドの受付嬢として働いた。
姫は既に身籠っていながらも働いた。
だがそれがよくなかったのだろう。
姫は倒れてしまったのだった。
「――!」
カゲインは姫の名を叫びながらドアを勢いよく開けながら姫の寝ている部屋へと入ってくる。
「大丈夫だから落ち着いてください」
「そ、そう? それなら良かったけど・・・・・本当に大丈夫なんだね?」
「はい。お医者様に見てもらいましたが子供に心配はないと。ですが私はもう仕事を辞めてしっかりと育児に専念するよう言われてしまいました」
「・・・・・ごめん、無理させちゃっていたんだね」
「ううん。私が自分の体調管理を怠っただけだよ。ごめんなさい」
二人のやり取りが一通り終わると部屋は静かになる。
そしてまた二人の唇は近づいていき・・・・・
(世界説明、飛ばして)
《了解》
リユイの命令の下場面は変わる。
今度は二人が暮らす家の前にいた。
外には一切人が歩いていない。
「町長さん、町の外はどうなっているんですか?」
「カゲインさん・・・・・家の中で話し合おう」
(え、町長さん・・・・・若い。じゃなくて魔王と関わりがあったんだ! というか町長さんがいるってことはこの町はオイト牧場の近くの町ってこと?)
《その様です》
カゲインと町長は家へと入っていく。
リユイもその後に続いた。
「カゲインさん、今町は国の兵士に囲まれています。――さんがいるのは分かっているから連れてこい、と言われました。私にはよく分からないですがこれ以上町に迷惑がかかるようならば出ていって頂きたいのですが・・・・・」
「・・・・・」
カゲインはどうすればいいか分からず黙ってしまう。
今逃げるとしても姫に無理をさせることは出来ない。
だが逃げなければ捕まってしまうのだから。
それを分かっているから町長も弱気なのだ。
「あ!」
突然町長が何かを思い付いたように声を上げた。
「どうしたんですか?」
「実はですね、オイトさんという方がいらっしゃいましてその方に事情を説明したらなんとかしてくれるかもしれません!」
場面が変わる。
今度はカゲイン、姫の二人がオイト、ライトとの二人と話終わった所からだった。
「分かりました。ではついてきてください」
「兄さん、私は少し外の様子を見てきます」
「分かりました。私達は先に行っているのでライトは後から追い付いてきてください」
「了解です」
ライトはこの場から立ち去る。
「それでは行きましょう、カゲインさん、――さん」
「な! 騙したんですか!?」
カゲインと姫の前には大勢の兵士とライトがいた。
オイトに言われるがまま秘密の地下道から逃げ出していたカゲインは出口で待ち構えていた兵士を見てオイトが自分達を騙したと思う。
「ち、違――」
「兄さん、速くこちらへ」
違うと言いかけたオイトに被さるようにライトが言葉を放つ。
それでオイトは全てを察した。
そう、ライトが裏切ったのだ。
渋々オイトは兵士の側へと向かっていく。
ここで反抗してしまったらオイトは魔王の脱走を協力したとして死罪となるからだ。
「そんな・・・・・」
オイトを信頼していたカゲインは絶句する。
そしてこの絶望的な状況に動揺は止まらなかった。
だが止まっている時間は無かった。
カゲインは手の甲から短剣を出すと兵士から姫を護るように立ち構える。
(あともう一人いれば・・・・・)
いくらカゲインでもこの量の兵士を相手にして姫を護りきる余裕は無かった。
そこで思い付いたのが悪魔召喚だった。
魔王のみが使える悪魔を召喚できる召喚魔法だ。
だがこの魔王の力を使ってしまうのは自分を魔王だと認めるということになってしまうのであまりしたくないと言う感情もある。
だがカゲインは自分の意志よりも姫を護る事を優先した。
「悪魔召喚」
カゲインがそう口にすると地面に魔方陣が描かれていく。
そしてその魔方陣から一人の悪魔がゆっくりと出てきた、のだが。
「クッ」
カゲインは悪魔召喚を行ったことで魔王の圧倒的な力に飲み込まれそうになる。
だが歯を食い縛り必死に抵抗することで何とか飲み込まれずにすんだ。
「ハア、ハア、ハア、おい、悪魔・・・・・いや、グラッド」
「グラッドとは俺の名前でしょうか?」
「そうだ。グラッド、――を護れ」
「は!」
瞬間カゲインは兵士へと攻撃を仕掛けた。
結果、カゲインはオイトとライトに勝つことは出来なかった。
ライトは無様にも倒れるカゲインを見下し、そして止めを刺そうとする。
が、カゲインはなけなしの力で<影転移>しその場からなんとか逃げることができた。
そして先に逃げ出した筈のグラッドと姫を探すが見つからなかった。
そして場面が変わり数日後・・・・・姫の処刑を開催すると書かれた号外を見つけたのであった。
そしてまた場面は変わる。
今度は姫の処刑が行われる所だった。
大勢の人が姫の処刑を見に来ている。
その中にはカゲインもいる。
処刑の内容は首吊りだった。
姫はロープにまで無理やり連れてかれる。
だがお腹を押さえて苦しんでいると言うのに。
カゲインはその様子に苛立ちを隠せなかった。
だが今すぐに姫を救出するわけにはいかない。
処刑人が姫から離れてからではないと姫にならべく負荷をかけずに助けられないとカゲインは考えているからだ。
そして処刑人が姫の首にロープをかけ離れた。
瞬間カゲインは<影転移>を行い姫の影へと転移すると姫の首にかけられたロープを手の甲からでる短剣で切り裂き姫を抱き締める。
「ごめん、遅くなった」
姫は頭を横に降る。
「ううん、助けてくれてありがとう」
お互い安否を確認しあい大丈夫だとわかりと安堵する。
だがこれからが重要だ。
「グラッド、――を――」
「ううう」
カゲインがグラッドに命令仕掛けたときに姫が突然苦しみだした。
カゲインは慌てて姫を見る。
「どうした!」
「う、産まれそう!」




