第八十三話 カゲインの過去(1)
(ここは・・・・・!)
リユイは日本の東京にいた。
辺りを見渡すと懐かしいものを目にする。
アスファルト、車、日本人、コンビニ、ビルどれもリユイの知っているもので懐かしいもの。
リユイはこの出来事に驚くも嬉しく思えた。
(ここは現実じゃない。でも・・・・・またこの景色を見られて良かったな)
リユイの目からは一滴の涙が流れた。
だがリユイはその涙を乱暴に拭うと先ほどから近くを歩いている家族だろう三人を見る。
母、六歳ぐらいの子供、父の順で手を繋ぎ歩いている。
恐らくあの子供がカゲインだろうか。
(ということはカゲインも異世界転移者、または転生者?)
三人は仲良く何処かへ歩いて行く。
「智、今日で七歳か~」
「うん!」
「大きくなったな」
「うん!」
(七歳、か)
父親と子供の会話で子供の年齢が分かった。
が、突然子供が倒れた。
唐突だった。
親は突然電源が切れたように動かなくなった息子に狼狽する。
「智さとし? 智さとし! 大丈夫か!」
「嘘、嘘? 大丈夫? 智、さとし? 誰か、誰か救急車を!」
倒れた息子を抱きかかえ父親が必死に子供に声を掛ける。
母親は周りの人に必死に助けを求める。
原因不明の突然死。
リユイの頭の中ではその言葉が思い浮かんでいた。
(ユミと同じ・・・・・強制転移?)
そうリユイが考えた瞬間、辺りは一瞬にして変わり、どこかの実験室のような部屋にリユイはいた。
リユイは直感でここはもう既に異世界だと確信する。
子供・・・・・智は魔動機械だろう物の中におり、その魔動機械の中の床には魔法陣が書かれていた。
その装置の周りには大勢の白衣を着た大人は静まり返っている。
と思った瞬間一斉に喜びだした。
「実験成功だ!」
「やったぞ!」
「おお!」
ひとしきり大人たちは喜ぶと大人たちの一人が魔動機械の扉を開ける。
「さあ、おいで」
大人は智に向かい手を伸ばし抱き上げる。
智は良く分からないと言った表情で固まっていた。
「君は勇者だ。魔王を倒してくれ」
大人は智に優しく言った。
だが言われていることの意味が智には全く分からずとうとう智は泣き出してしまった。
瞬間、また場所が変わった。
今度は時も経っているようだった。
智の背が伸び顔つきも大人っぽくなっている。
場所は本棚が沢山ある綺麗な部屋だ。
「サトシ君、稽古の時間だ」
本を読む智に一人の男がそう言う。
智は頷くと本を置き部屋の外へと男と共に出ていく。
リユイも二人について行く。
中庭らしき場所で二人は来ると剣術と魔術の稽古を始めた。
それから八時間後。
全く休憩なしで稽古を行いやっと終わった。
「それじゃあ帰ろうか」
「はい」
男と智はそう言うと部屋へと帰っていく。
(こんなに稽古をすると言うのはやっぱり魔王を倒すためか?)
リユイはそう考察しながら二人の後ろをついて行く。
「そう言えば今日で八歳か」
「はい」
あれから一年経ったことが分かる。
「今度実際に狩りに行ってみようか」
「え! ・・・・・はい!」
智は男の言葉に一瞬驚くも嬉しそうに頷いた。
そしてまたしても時と場所が変わった。
場所は先程と同じ本棚が沢山ある部屋だ。
智の背丈があまり変わっていないことからあれから数日後だろうとリユイは考える。
「サトシ君。今日は狩りに行ってみようか」
「・・・・・! はい!」
場所はまた変わる。
今度は夜の草原の中にいた。
「ここは?」
智はボロボロの格好で折れた剣をもっており腕から血を流した。
(迷子になっている?)
よくよく見てみると腕の血は智自信の血ではないことが分かる。
他人の血がベッタリとついているのだ。
(確かにこんな大量に血を流していたら死んでいるか・・・・・待てよ、そうなるとこの血は誰の・・・・・? 普通に考えればモンスターの血。だけど折れた剣なんかで殺せるか? 例え殺せたとしても返り血があんな風に腕や手につくか? そもそもなんで一人なんだ?)
リユイは推測し、そして一つの結論に結びつけた。
(モンスターに襲われ智の稽古をしていた男が死んだので逃げてきた・・・・・そう考えるのが一番妥当、か)
そう結論づけたリユイは智の様子を見守る。
がすぐに何かを思い付くと世界説明に言った。
(世界説明、何があったか見られないか?)
《検索した結果そこの部分の記憶が曖昧であったため見ることができません》
(・・・・・そうか)
リユイはまた智の観察に戻る。
智はひたすらに歩き続けるが一向に近くの町にたどり着けない。
「キャアァァァァ」
そんな中突然女の子の悲鳴が聞こえた。
智はそちらの方へ走り出す。
リユイは智についていく。
悲鳴の発信源には智と同じぐらいの年の女の子がモンスターに襲われていた。
カゲインは持っていた折れた剣をモンスターへと投げつけ自分を注目させる。
モンスターは投げつけられた折れた剣をもろに喰らい怒りだすと智へと突進していった。
智は冷静に光魔法を詠唱するとモンスターへと放った。
(え、光・・・・・魔法?)
モンスターは急いで方向転換するも間に合わず智の光魔法を直に喰らい絶命した。
「大丈夫、ですか?」
身を縮め恐怖で震える女の子に智は恐る恐る声を掛ける。
「モンスター、やっつけましたよ」
その声を聞き女の子は震えながらも顔を上げ智の顔を見つめる。
「もう、大丈夫?」
「はい。一応、大丈夫だと、思います」
久々に喋る智の声は微かに震えていたがしっかりと女の子に届いていた。
「ありがとう!」
女の子は安堵のあまり思わず智に抱きついた。
智は動揺して両腕をどうしていいか分からず宙をかいていた。
そして気づく。
女の子が泣いていることに。
「もう、大丈夫、ですよ」
「うん。ありがとう、ありがとう。怖かったよ~」
「ああ、えっと・・・・・だ、大丈夫、大丈夫ですよ」
大泣きする女の子に智は更に激しく動揺するも女の子の頭を撫でることで落ち着いた。
女の子も頭を撫でられだんだん落ち着いていった。




