第八十二話 魔王カゲインとの戦い(後編)
リユイを吹き飛ばしたカゲインは息を乱していた。
(躊躇った?)
カゲインは先程リユイが自分を殺し損ねたことに疑問を持っていた。
気絶したリユイを見つめるがその答えは出てこない。
分かるのは先程カゲインが蹴り飛ばした時に腹に足の裏から出した短剣が深々と刺さったことで血が出ておりそれが服を汚していることぐらいだった。
〈影転移〉で気絶したリユイの目の前にカゲインは現れるとしばらくリユイの顔を見つめると手の甲から短剣をだしリユイの頭を狙った。
そしてリユイの頭へと短剣を突き刺した。
が、瞬間リユイは目を覚ますと顔を逸らし短剣を回避する。
カゲインの手の甲から出る短剣は壁を突き刺し止まる。
「〈限界突破〉」
そうリユイが言った瞬間――カゲインは物凄い魔気を感じ、そして吹き飛ばされた。
青白く怪しく光る魔気に、だ。
突然跳ね上がったリユイの魔気にカゲインは吹き飛ばされたのだ。
カゲインは己の身に起こったことに理解できず無様にも吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。
それでもリユイが復活したと言う事実に対応し、瞬時に右腕の断面から短剣をだし、左腕のそれぞれの指の間からナイフをだし鉤爪のようにする。
そして更に己からでる短剣全てに闇魔法を纏わせるとリユイへと構えた。
「フ、アハ、アハハハハハハハハ」
(来た!)
突然高笑いをしだすリユイにカゲインはやっと来たかと感激のあまり顔がにやけた。
「い、痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い・・・・・でも、それがいい」
リユイは先程刺された腹を押させジタバタするがそれをピタリとやめるとにやけた顔でリユイはゆっくりと顔を上げた。
長い髪がリユイの顔にかかりその不気味さを増す。
カゲインはゾッとするも喜びで武者震いが止まらなかった。
リユイは刀を出現させ掴むと光魔法を纏わせカゲインへと切っ先を向ける。
瞬間、カゲインの目の前にリユイがいた。
先程よりも圧倒的に速いリユイのスピードにカゲインは驚き動揺するも緊急回避を行いリユイの刀を避ける。
リユイの振った刀はカゲインの頬を切り裂くも致命傷にはならなかった。
(狂って・・・・・ない?)
だが前回感じたような完全に狂ったリユイではないとカゲインは気づいた。
前回は支離滅裂の斬撃を本能のままにリユイは斬りかかっていた。
だが今回はそうではなくちゃんと意思のもった斬撃であった。
だが人を痛め付けるのを快楽としているのと本気で殺しにかかっているのはそのままと分かりカゲインは安堵する。
(いや、今の方がもっと面白い)
己の頬から噴き出す血にカゲインはそう感じていた。
カゲインはリユイの腹に右腕から出る短剣を突き刺そうとする。
だがリユイは先程の斬撃よりも更に速く動くとカゲインの右腕から出る短剣を刀で弾き返した。
カゲインは何とか弾かれた衝撃を足で踏ん張り、体勢を立て直す。
だがリユイは止まらない。
リユイがまたしても刀はカゲインへと斬りかかった。
カゲインは流しきれず体を切り裂かれる。
「グガアァァァ」
痛みに耐えながらもカゲインはすぐに〈影転移〉し、一旦リユイから逃げる。
が、既にリユイは背後にいた。
「ハハ」
「え?」
カゲインは頭が真っ白になる。
全くこの事態に理解できないながらもまた〈影転移〉してリユイから逃げた。
が、今度はリユイが転移先で既に斬りかかってきていた。
いつの間にか刀から大剣になっている心映武器でリユイはカゲインを吹き飛ばした。
カゲインは壁にぶつかっても止まらず壁を破壊し外へとまで吹っ飛んでいった。
(近接戦では勝てない・・・・・!)
城の一部にぶつかりやっと止まったカゲインは朦朧としながらもそう考えると城の頂上に転移する。
するとリユイが盛大に壁を吹き飛ばして破壊し城の外へと出てきた。
そしてカゲインの所へと城の外壁を駆け上がっていく。
カゲインは急ぎリユイには見えない筈の究極魔法を放っていく。
だがリユイはその悉くを手に持つ光魔法を纏わす大剣で相殺していく。
大剣を目にも見えないスピードで振るリユイにカゲインは絶望する。
だが諦める訳にはいかない。
カゲインは闇魔法の魔の手を使い城の一部を掴んでいくと剥ぎ取りリユイへと投げつけていく。
だがそれさえもリユイは大剣一本で超高速で切り裂き砕いて、刻一刻とカゲインへ迫っていく。
焦ったカゲインは大きな城の欠片を数本の魔の手で掴むと一斉にリユイへと投げつけた。
城の欠片がぶつかり合い煙が舞う。
そしてそこからはリユイは出てこなかった。
(やったか?)
と思った瞬間カゲインは空中に浮いていた。
(え?)
「ハッ」
かと思うと今度は背後のリユイに襟を掴まれ城へと投げつけられた。
城の頂上にカゲインが打ち付けられた瞬間既にリユイに顔を掴まれており城の屋根に押し付けられる。
そして直後、屋根がミシリと音をたてる。
屋根は壊れ最上階の部屋の床にカゲインの頭は押し付けられる。
が、リユイの力はそれだけに止まらなかった。
カゲインのリユイに掴まれた頭は次々と床を破壊していき最下階の床へ打ち付けられる。
が、瞬間カゲインはリユイの背後へ<影転移>しリユイの背中に掌から短剣が出た左手を押し付けると闇究極魔法を零距離発射した。
だがカゲインが魔法を放つのとリユイが刀を振るスピードの方が圧倒的に速かった。
カゲインの左腕は吹き飛び血が噴き出す。
「フハハハハ、シャアァァァァァ」
リユイの斬撃は止まらなかった。
リユイの斬撃を全てもろに喰らったカゲインはリユイの最後の一撃を喰らうと壁へと吹き飛ばされた。
そこにリユイはナイフを四本投げた。
ナイフはカゲインの両腕、両足を壁に縫い付ける。
そんな中カゲインはリユイの遥か後ろを見てとても驚いたような顔をした。
そしてリユイは一瞬にしてカゲインの心臓へと何の躊躇いもなく突き刺した。
こうしてカゲインは絶命した。
「ハア、ハア、ハア・・・・・ハハ、ハハハハハハ」
カゲインの胸に突き刺した刀をリユイは見つめる。
《魔王カゲインを殺したためスキルの効果により〈影転移〉を吸収しました》
(・・・・・僕、本当に殺したんだ)
リユイの手にはまだカゲインを殺した感触が残っていた。
リユイは気絶から目を覚ました後いじめられていた過去の全てを思い出していた。
そして混乱しながらもカゲインと戦い勝ったのだった。
だが瞬間、辺りが真っ暗になる。
(どうなっているんだ?)
《〈目視模倣吸収〉によりカゲインの記憶を吸収したため再生します》
(カゲインの過去を再生?)
瞬間辺りは明るくなり、リユイは見覚えのある場所に立っていた。
(ここは・・・・・!)
日本だった。




