表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廻る乖離転生  作者: 朔
第六章 第一次魔王討伐編
82/137

第八十話 魔王カゲインとの戦い(前編)

 ㇽシファーを殺すとリユイは一つのスキルを獲得していた。

〈幻影〉

触れた相手を精神世界に連れ込むことができるスキル。

リユイはこれにより精神世界で戦う羽目になってしまっていたのであった。

だがこのスキルを手に入れたお蔭でもう他者からこのスキルをかけられてもレジストできるようになった。

そんなような説明をリユイは世界説明から聞いた。

そしてㇽシファーから刀を引き抜くと部屋を見やり魔王を探した。

が、探しだそうと足を一歩前に歩み出したその時。


「フフ、フハハハハハハ」


 突然高笑いがどこからか聞こえてきた。

リユイはその高笑いが聞こえてくる方向を、五感を研ぎ澄ませ集中し聞くと見つけた。

この部屋のはるか奥の中央。

迫程までは無かった筈の部屋の端の中央。

大きな椅子に腰かけ上を向いて声高らかに笑う魔王カゲインの姿が。


「カゲイン!」


 リユイは持っている刀を強く握りしめた。

刀は小刻みに揺れリユイの怒りを表している。

リユイのそんな様子も面白いのかカゲインは更に笑いの激しさを増し、そして数分間かけやっと落ち着くと話し出した。


「イヤー失敬。あまりにも君が面白かったからつい。久しぶりだな、リユイ」

「お前があの双子に僕の国の民を殺すよう命令したのか」


 カゲインは口をにやつかせ頷く。


「そうだ。その方が、お前が俺の宣戦布告に気が乗るだろうと思ってな。現に今、少し早かったが挑発に乗り俺の目の前に君はいるじゃないか!!」


 魔王カゲインは立ち上がり、そして両腕を上げながらリユイへと近寄っていく。

その足取りはとても軽やかだった。


「やっと、やっとだ! 君と言う素晴らしい存在とやっと戦うことができる!!」

「貴様ァァァァ!!」

「俺にまた、あの狂気の戦いを見せてくれないか?」


カゲインの呟くその言葉を聞いた瞬間リユイはカゲインに斬りかかった。

カゲインは紙一重でリユイの刀をかわし、右拳から短剣をだしリユイに殴りかかる。

リユイは剣を振ったばかりだと言うのにその魔王のカウンターを反射的に出した小太刀を左手で持ち、拳から出る短剣を弾きく。

そして右腕に持つ刀でリユイはカゲインへとまたしても斬りかかった。

カゲインは左手の甲から短剣をだしリユイの刀を防ぐ。

そして足の裏から短剣を出すと両手を攻防に使ってしまっているリユイの腹を蹴り飛ばした。

が、リユイはすぐに小太刀を逆手に持つとその足の裏から出る短剣を何とか受け止め、そしてそこを起点に回り、そしてカゲインを右手に持つ刀で斬りつけた。

蹴りの体勢であるカゲインは当然その刀による斬撃を避けきれず――

と思いきや瞬間消えた。

そしてリユイの背後に姿を現した。

だがリユイはこうなるだろうと前の戦いでの経験から分かっていた。

前方を斬りつけた刀をそのまま回り、背後をまで斬りつける。

魔王は超反応するリユイに驚きながらもそのままリユイに左手の甲から出る短剣で斬りかかる。

二本の刃は激しい金属音をたて弾き合う。

そのまま連続してお互い斬撃を放ちお互い弾きあう。

激しい火花がお互いの刃がぶつかり合うたびに散る。

そして何回か弾き合うと二人は互いにバックステップした。

そんな中カゲインは思った。


(前よりも遥かに強くなっている。だが、だが何かが足りない。あの全身に刃を突き付けられているような恐怖感を一切感じない。あの人を苦しませるのを栄養とする狂気さを感じない。何故だ? 己の民を殺すごときじゃその段階までいかないのか?)


そう、前回のような感覚に陥らないカゲインは先程までのリユイとの闘いに物足りなさを感じていた。

確かに技術的な面ではリユイの天才的な返しに楽しんではいるのだが、感情的な面ではリユイと言う人物にカゲインは楽しんでいなかったのだ。

だが戦いは続く。

カゲインは瞬時にリユイの背後へと〈影転移〉し、リユイの背中を斬りつけようとする。

がリユイはそれをまたしても読んでおり消えた瞬間背中をガードしカゲインの斬撃をパリィした。

己の斬撃による衝撃を返されたカゲインは体勢を崩し後ろへとよろける。

そこにリユイは斬りかかった。

が、カゲインは〈影転移〉し今度はリユイの真横に現れた。

斬りかかろうとしていたリユイはすぐさま刀をカゲインが斬りかかってくる軌道に持っていきカゲインの短剣を弾いた。

かと思うとまたカゲインは左横へと転移した。

リユイはすかさず刀をカゲインの方へと持っていきカゲインの斬撃をパリィした。

こうしてカゲインは様々な場所へ転移しては斬りかかり、そしてリユイはその斬撃をパリィすると言うのを繰り返した。

それを何度か繰り返すとリユイはその繰り返しに終止符を打った。

リユイはカゲインの斬撃を防ぐのではなく避けたのだ。

これまでは避けるよりも防ぐしか攻撃を回避する手段は無かったのだが魔王の〈影転移〉に慣れてきたことでだいたいここにくるだろうことを予測し、そして余裕を持って次の斬撃に備えていた結果避けられたのだ。

避けるとは思わなかったカゲインは空を斬る己の短剣に動揺し、すぐに転移出来なかった。

その隙にリユイはカゲインの首を掴み上げた。

そしてカゲインの胸にリユイが刀を突き立てようとしたその瞬間、カゲインは今起こっていることに理解できていないながらも何とか転移をしてリユイから逃れた。

(まだ狂気のリユイを見れていないのに危うく殺されかけたてしまったとは・・・・・強く、なったな)

カゲインは己を殺しかけたリユイを心の中で思わず褒めてしまった。

そして気づく。

自分の中にまだそんな相手を褒めるなどと言う人間のような心があったのだと。

カゲインは、今度は近距離戦ではなく魔法による遠距離戦に切り替えることにした。

遠くに転移したカゲインは暗弾を大量にリユイへと放つ。

が、その暗弾はリユイに届く前にリユイの放つ聖なる矢により相殺されていった。

カゲインは己の桁違いの威力を持つ暗弾を相殺され驚いたが冷静にすぐに次の暗弾よりもスピードが速い魔法へと切り替えた。

漆黒の矢だ。

以前ヒトミが使っていたこの魔法だが、威力は圧倒的にカゲインの方が高い。

それも一発で小型ドラゴンが死んでしまうほどに。

カゲインの放った漆黒の矢は銃弾よりも速くリユイへと迫った。

だがリユイはそのすべてをことごとく相殺し、カゲインへとスピードを緩めず迫っていく。

そしてとうとうリユイはカゲインへと斬りかかった。

カゲインは冷静にリユイの遠くへと転移した。

が、直後カゲインは己の体に無数のナイフが刺さっていることに気付く。

そう、リユイはカゲインが転移するだろう所へナイフを投げていたのだ。

そしてリユイはカゲインが怯んでいる隙にカゲインとの距離を詰め、そして己の中で最高速である攻撃の抜刀術を使いカゲインを切り裂こうとした。

が、カゲインはそのリユイの刀が己の腹に当たるや否やでリユイの頭上へと転移した。

そして右手で掌から短剣をだしリユイの顔を掴みかかろうとする。

リユイは抜刀したその勢いに任せそのまま空を切り裂いた。

カゲインの右腕はリユイの刀により斬り飛ばされ腕の断面からは大量の血が噴き出しリユイの顔へとかかり、リユイの視界を妨げた。

それを好機と考えたカゲインは、今度は左手の掌から短剣をだいリユイの頭を掴もうとした。

が、見えていない筈のリユイは刀を振る右手とは逆の左手でカゲインの左手首を掴むと体を捻らせ床へとカゲインを叩きつけた。

そしてリユイはその隙に刀を振り上げ、カゲインの首へと斬りつけようとした。

が、刀はカゲインの首に当たる寸前で止まった。

リユイはカゲインを殺す直前で止めてしまったのだ。

何故か?

リユイはカゲインの目を見てしまったからだ。

カゲインの瞳のはるか底にある人間をリユイは見つけてしまったのだ。

人を殺す。

その言葉がリユイの頭に浮かんでしまった。

リユイは今までは殺してきた魔獣や悪魔などを人間として見てはいなかったのでためらいはあったものの殺すことは出来た。

だが人間は違った。

コンビニで殺したときはほぼ無意識で殺していたが、いざ意識して殺そうとするとリユイは人を殺せなかった。

そして過呼吸になり息ができなくなる。

額からは汗が吹き出し刀を持つ手が小刻みに震える。

こうして、リユイは魔王カゲインを殺せなかったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ