第六十四話 三重人格?
男について行くとそこにはボロボロの木で出来た柵があった。
入り口が見当たらない。
どうするのだろうと見ていると男は落ちている葉で隠された地下へのマンホールの様な物を持ち上げそこに入るよう僕達に首を振って促す。
素直に地下へと順番に入っていくと最後に男がマンホールのような物を閉めて降りてくる。
一本に続く地下を男を先頭に歩いていく。
とても長い。
やっと着いたと思うとすぐに地上にあがるよう促され素直に上がっていく。
地上を見てみるとそこには廃墟が広がっており所々に亜人がいる。
だがどの人も皆やつれており傷や泥だらけだ。
まるで産まれてから一回も体を洗っていないかのように汚かった。
「ここは・・・・・」
あとから登ってきたアレンがそのあまりの貧しさに驚き思わず呟く。
サラも口にてを当てこの景色に驚愕している。
ユミは顔をしかめ僕の手を思わずといったように繋ぐ。
ソレイは顔色一つ変えず僕の横に控える。
「此方だ」
いつの間にかに上がってきていた男が呆気にとられていた僕達に一言掛けついてくるよう促す。
僕達はその男の背にそのままついていく。
他の家よりは少しだけましな大きな家の中へと案内される。
木製の床はきしみ、僕達の足音をいっそう大きな音へと変える。
壁には虫がわきあがっており近づく気になれない。
今にも何かが出てきそうな雰囲気のこの家はまさにホラーゲームに出てくる家そのものだった。
廊下を進み地下へと階段で行く。
何回か角を曲がると一際大きな部屋に着いた。
男がその部屋の扉を開けると奥にはしわくちゃの老亜人が座っていた。
目の色と髪の色はこの世界では珍しい黒だった。
「来たか・・・・・リユイ」
何故かその老人は僕の名前を知っていた。
「何故僕の名前を?」
老人は僕に片手をあげ喋るのをやめさせる。
「その前に自己紹介しようじゃないか」
その老人はしゃがれた声を発する。
席から立ち上がり杖を使い僕達のところまで歩いてくる。
「わしの名前はミシェル。そこに突っ立ってる怖い男はクロードだ」
ここまで案内してくれた男を杖で差しミシェルはそう言う。
「君らの自己紹介はしなくていい。知っているからな」
何故知っている。
一体なんなんだこの爺さんは。
予言者か?
「そしてここに来た目的も知っている」
「ならば話は速いですね。国を建ててもよろしいでしょうか?」
「まあそう焦るな。少し昔話をしよう」
ふと違和感を感じ振り返るとそこにはユミ達はいなくなっており先程入ってきたドアも無くなっている。
ミシェルを見るといつの間にかに椅子に座っていた。
一体どうなってるんだ?
「昔、まだ魔物の森がそう呼ばれる前のこと。
一人の龍人族の王がいた。
その王は自国を最強の国にし、人間達を退けるのが夢だった。
それゆえに最強の兵を求めた。
だが自分の配下だけでは最強とはよべなかった。
そこで彼は禁忌の門を探し求めた。
その門とは魔獣を召喚する門だった。
彼は探し求めたが見つからなかった。
そこで彼は考え、そして思い付いた。
自分で作ってしまえばいいのだと。
そして彼は最後のパーツである自分の魂を入れその禁忌の門を完成させた。
彼は門になったものの意識はあった。
それゆえに絶望した。彼の配下はほとんど魔獣に殺された。
門である彼はそれを止めることは愚か配下を殺していく魔獣を産み出すことしか出来なかった。
二人の強力な亜人が助けに行く空しく、結局龍人の国は滅んだ。
最強を求めたが故に。
そして今もなおその門は龍人国の王の間にて魔獣を産み出している。
いつしか魔獣は国の外へと出て行き森へ行った。
そしていつしかその森は魔物の森と呼ばれるようになった」
それが本当の龍人達が逃げ出した真実か。
二人の亜人は関係ないようだな。
それにしてもだんだんと部屋が赤く染まり始めているのが凄く気になる。
なんだこれ?
血か?
あれ?
ふと目を離した隙にミシェルは消えていた。
振り返るとドアが戻っている。
そのドアを開き部屋から出ると先程とは違う薄暗い血だらけの廊下がどこまでも続いていた。
先の見えない廊下を歩いていくと何かが動いているのが分かる。
歩いていて近づいていくとそれは消えた。
そこからひたすら前へと歩んでいく。
だが扉は現れることはない。
背後に何かがいた気がし、振り返ると真後ろに新たなドアがあった。
そのドアには肉片のようなものがへばりついておりどくどくと心臓の鼓動のように動いていた。
恐る恐るドアノブを掴み捻る。
明らかにドアが開く音ではないようなぶちゅぶちゅといった音がする。
部屋へ入るとそこには四肢を腐りに繋がれた男がいた。
よくよくその男を見てみるとそれが転生前の自分だと分かる。
「やあ、やっと来たね」
声が聞こえた後ろを振り返るとそこには『俺』がいた。
「ここはなんなんだ?」
「ここは精神の間。そして君の目の前にいるのが君の心の奥底に眠る悪魔さ」
悪魔?
「君は本当に受けていたいじめが軽いものだったと認識しているのかい?」
「はっきり言ってよく覚えていない」
小学校で僕はどういう人間だったのか?
友達は何人いたのか?
担任の先生、クラスメイトの名前はなんだったか?
全て記憶が曖昧なのだ。
「そう、か・・・・・俺はどうやら勘違いしていたらしい。今までの無礼を謝るよ」
「何?」
「君と悪魔は全くの別物だった。そして君は三人目だ」
相変わらず訳の分からない話をする『俺』。
「俺が一人目。いじめられた元凶である意気地無し。そしてこの悪魔が二人目。いじめてきた奴等を殺しかけた殺人鬼だ」
『俺』は今度は僕を指差す。
「そして三人目。何もかも忘れた穢れを知らない君だ」
「なんの話をしている?」
「そして君は度々目を覚ます二人目に影響を受け始めている」
『俺』が近寄ってきて肩に手を置いてくる。
「そして俺が君の心にリミッターをかけることで二人目に飲み込まれることを防いでいる」
『俺』はそう優しく語りかけてくる。
はっきり言って気持ちが悪い。
この部屋には今三人も自分がいるのだ。
訳がわからない。
先程までミシェルと話していた筈なのに。
「混乱するのも無理はないよ。でもこれだけは覚えていてくれ」
『俺』が耳元に口を寄せてくる。
「今の君では二人目に飲み込まれる」
その言葉を聞いた瞬間、僕は目を覚した。




