第六十三話 魔物の森攻略開始
オイトさん達国民を転移させ残りの民をブーたん達に託すと僕達は魔物の森を開拓するための作戦会議を僕を含めた五人で開くことにした。
「それでは僕とユミが魔物の森に行ってみて分かったことを報告する」
サラ達が注意深く耳を済ませ僕の話を聞き逃さないようにしている。
「まず空は飛ぶ魔獣に埋め尽くされており森の中は暗い。地上にも大勢の魔獣がいる。超大型魔獣もいる」
超大型魔獣という単語を聞いた途端皆に少し動揺が走る。
やはり超大型魔獣は危険な魔獣なのだろう。
「魔獣は全方位から襲ってくる。
そのため真ん中にサラ、その回りを囲むように立ち、僕達がサラに攻撃がいかないようにする。
サラは魔法で敵を攻撃、または傷ついた仲間をヒールで回復させてくれ。それぞれがそれぞれの役割を果たさないとすぐにこちらのテンポを崩され危険だ。注意してく
れ。集合は十分後、以上解散」
皆一斉に頷き装備の点検を行い始める。
この時間の間に僕は前々からずっと気になっていたことをアレンに聞こうと思った。
アレンに近づき話掛ける。
「アレン」
「お、どうした?」
「ちょっと気になることがあってね。アレンの心映武器って何?」
以前僕が戦闘できなくなっていた時アレンが見せた心映武器の斧、普段は剣の筈なのに斧を持っていた。
つまりアレンの心映武器も無形なのではないだろうか?
僕はそう考えたのである。
「・・・・・俺の心映武器は複数あるんだよ」
は?
そんなことってあり得るのか?
《あり得ます。心映武器は一人一個しか持てないとは限りません》
それってどういう・・・・・まさか。
《はい、そのまさかです。死んだものから心映武器を奪ったり受け継いだりし、自分の物にすることも出来ます》
知らなかった。
《教えてませんもの》
そ、そうですね。
「死んだ家族から受け継いだ」
そういうことか。
確かアレンは三才の頃から修行を始めたと聞く。
前酒を飲んだときに言っていた。
その前から家族は亡くなっていたのだろうか?
「ご家族は何歳の時に?」
「十五になった誕生日の夜だった。修行に専念していた俺はすっかり自分の誕生日を忘れていて本当は帰る筈だったが忘れていた。
心配した俺の家族は夜俺を探し始めてしまっていたらしい。俺が夜中に自分の誕生日に気付きその日はもう遅いから明日行こうと思い、次の日行ってみれば家付近に心映武器を持った所々体が無くなっている家族全員の死体があった。
恐らく腹を空かせた魔獣が襲ったんだろ」
アレンは家族の死をそう淡々と話すと一息つき拳を握りしめた。
「だから俺は魔獣が大っ嫌いなんだ。だから今回の作戦は俺にとっても魔獣どもにうさはらせるいい機会だ。俺を作戦に入れてくれてありがとな」
「いや、こっちがお礼を言いたいよ。ありがとう。それに辛い話をわざわざ僕に教えてくれて」
「ああ。じゃあ行くか?そろそろ十分経っただろ」
アレンが立ち上がろうとするのを手を引っ張って手伝う。
「おっしゃっ!じゃあ行くか!」
「うん!」
魔物の森開拓作戦は僕とユミが先に森の前まで行き、僕が空間操作でアレン達を転移させてから開始された。
サラを囲み前方僕、右にユミ、左にソレイ、後ろにアレンだ。
前回とは全く違い効率的に迫ってくる大量の魔獣を殺せる。
血しぶきが絶えない。
僕の心映武器が自由に動くので魔獣が接近してく前にある程度殺せるので他の者の援護も少しできる。
とっても順調だ。
だが時々アレンが右手だけなので疲れてしまう時がでてくるようになった。
その時はサラとアレンが交代することで何とか前進を止めずに行けた。
そして魔物の森を進むこと一時間、魔獣とは違った気配を感じた。
人。
そんな感じだ。
そしてその気配を感じ始めてから魔獣の数も減ってきている。
恐らくこの近くに亜人の村があるのだろう。
そう思い一歩踏み出したが先程の考えが間違っていたことに気づかされる。
魔獣の数が減っていたのはただたんに人里近くだからではない。
超大型魔獣が群れをなし歩いていたからだと。
超大型魔獣は僕達よりも速くこちらに気づいていたのだろう、既に僕達は超大型魔獣に囲まれていた。
流石にこの数は皆を守りきれないし、かといって一人一体倒すのは難しいだろう。
どうすれば・・・・・?
世界説明に打開策を聞こうと思ったその時、何かが一瞬にして超大型魔獣の群れ全員の首を切り落とした。
あまりに突然の出来事に何が起こったのか理解できない。
だが超大型魔獣の脅威は去ったということだけが分かった。
だがその何かはすぐにまた闇へと消えていく。
慌てて呼び止めようと走りだそうとするが、
「止まれ」
低い男の声が僕を止めた。
声の主を探すが見当たらない。
各々が自分の武器を構え警戒する。
「誰だ。何しに来た」
短く、だがしっかりと疑問を述べた男はゆっくりと暗闇の中からまた姿を表した。
その背は高いとは言えないが低いとも言えない微妙な背の高さだが、その背の高さからは想像出来ない威圧感を与えてくる。
更に近づいてくるとその右手には巨大な大剣が握られていることが分かる。
その大剣から血が滴り落ちているのがなお僕達の恐怖心を高める。
鑑定しなくても分かってしまう圧倒的な力の差。
首からは冷や汗が流れ持っている心映武器を思わず強く握ってしまう。
呆気にとられ応えるのが遅れてしまった。
急いで用意していた言葉を思いだし言葉を発する。
「僕はリユイと申します。亜人です。えーと」
用意していた言葉が思い出せず言葉が詰まる。
何か言わなければいけないと焦るがそれが余計に思い出すのを邪魔する。
そこで男の足は止まった。
近づいてきたことでわかったがあその男は若く、だが白髪だった。
若白髪というものだろう。
だが目の色は赤かった。
亜人ではないのだろうか?
だが耳が尖っていることやここにいることから亜人であると推測できる。
服装はスカートのような黒いだぼっとしたズボンで上は着圧のような筋肉質な体がよく分かる半袖の黒い服を着ている。
左肩には肩当てを着けておりその肩当てからは左手を覆う程の布がついていた。
慌てて言葉を絞り出す。
「この森に国を建てたいのですが!」
違う!
そうじゃない!
間違えた!
ヤバい、出だしから間違った!
ど、どどどどうしよう。
「ついて来い」
が、目の前の男はその一言だけ言うと僕達に背を向け、歩き出したのだった。




