第五十九話 ユミの気持ち
無言が続く。
お互い何を言い出せばいいか分からないのだ。
いや、ユミは言いたいことが多すぎて何から言おうか整理しているのかもしれない。
でもここは男?として僕からしっかりと話しだそう!
「あの「あのさ!」え、あ、ああ、うん。何?」
せっかく話し出しと頑張ったがユミが話し出してしまい結局ユミが話だす。
「ごめんね。でも私はリユイには私だけを見ていてほしいと思う。私ね、私とリユイとは全く恋人らしいことしていないのにリユイはサラさんとは恋人らしいことをしていてちょっと焦ったし嫉妬した」
「え?」
「私にだけ全部打ち明けてほしいとか、もっとリユイとしっかりと繋がっていたいとか私は思っちゃうの。だからさ、もっと私との時間を作ってほしいの。勿論今すぐそう言う時間が欲しいってわけじゃなくて後々そう言う時間を作ってほしいかな~って・・・・・」
一生懸命笑顔を作りながらユミは懸命に言葉を絞りだそうとしたが自分の感情を抑えきれなかったのだろうか。
そこまで言うと泣き出してしまった。
「ほ、本当は、か、悲しかったの。な、何で私じゃなくて、サラなの?って。ほ、本当は私のことなんて、す、好きじゃ、ないんじゃないかって」
途切れ途切れになりながらもユミは必死に言葉を発する。
ユミの目からはぽろぽろと涙が溢れ彭を伝い、顎までくると地面へと落ちてゆく。
そんなに辛かったのか?
僕がサラに本心を話したことがそんなに苦しかったのか?
「何でそんなに僕のことを思ってくれるの?」
「そんなの愛しているからに決まってんじゃん!」
「なんでそんなに愛してくれるの?僕のどこがそんなに好きなの?」
「そんなの全部に決まってんじゃん!」
ユミはそう言うと抑えきれないといった感じで抱き着いてきた。
「私はリユイとこういうこといっぱいしたかった!でもリユイは最初の一回以来一切してくれなくて、でもサラとはハグしてて、私はとってもとっても辛かった! 悔しかった! 胸がはち裂けそうだった! その後もリユイは全く私に話しかけてくれなかった! せめても王都に着くまでの間は話ぐらいと思ったら冷たい言い方で後にしてくれって、言われて、私は! 私は!」
そうだったんだ・・・・・。
全く気付かなかったし、考えもしていなかった。
何て僕は最低なんだ。
「私は我慢できなくって、ついついきつい言い方になっちゃって、ホントはリユイともっと仲良くしたかっただけなのに」
僕は彼女の涙を拭って抱きしめた。
「ごめん。気づかなかった」
「私だってリユイがこっちに来るまでの間、一人で、誰も周りに見方がいなくて、怖かったし、寂しかったし、辛かったし、リユイに会いたかった! 一緒にこの気持ちを吐き出て、泣いて、そして最後には、一緒に、笑いたかった!」
そうだった。
ユミもまたこの世界に訳の分からぬまま突然連れてこられた中学三年生なのだ。
それに更にユミは半年間一人で頑張ってきたのだ。
僕なんかよりもずっと辛かったのだ。
挙げ句にはその辛さから逃げようとし、無理矢理いうことを聞くようにするため心操魔動機械を付けられ僕を殺さねばならなかった。
一番辛かったのはユミなのだ。
だが情けないことに僕はたった数ヶ月だけで泣き叫んだのだ。
情けなくて仕方がない。
穴を掘ってでも隠れたい気分だ。
「ユミ、ごめんね。もう君にそんな気持ちをさせない」
謝って許してもらうとは思っていない。
せめて態度で示そう。
そう心に決めた。
ユミを少し痛いぐらいに抱き締める。
するとユミの温かさが伝わってくる、サラに抱き締めてもらう時とは違った気持ちになる。
とっても心が落ち着くのではなくとっても求めたくなる。
いとおしくて仕方がない。
なんなのだろうかこの気持ち。
ふと顔を上げると泣き顔のユミと目が合う。
数秒目が合いそしてお互い目を閉じ唇を近づける。
お互いの唇が触れ合おうとした瞬間・・・・・。
『リユイ様』
すぐにハッとし、ユミを遠ざけ「ごめん」と言いソレイの通信に応える。
『あ? なに』
ついついキスの邪魔をされたことに対するイラつきとキスをしようとしていたという恥ずかしさを押し殺すためについついきつい言い方になってしまった。
『すまない、ちょっと今取り込んでて。で、どうしたの?』
ソレイから一通り話しを聞いた。
置いてもらうには条件があるということ。
その条件は国に住まわせること。
そしてその住まわせてほしい理由。
全てを聞き終えると僕は「なるほど」とつい呟いてしまった。
『分かった。その条件を飲むと伝えてくれ』
『了解』
ソレイとの通信を終えユミを見るとユミが顔を真っ赤にさせていることに気付いた。
僕は既に仕事モードに切り替わっているため顔は赤くなっていないだろう。
「なんだって?」
「町の人達も僕の国民になるそうだ。多分オイトさんもそうなると思う」
「オイトさんって?」
「ユミのお義父さんだよ」
お互いの間に気まずい空気が流れる。
何と言っていいか分からない。
と言うか僕達は人の城で何をやっているんだ?
速くここから出よう。
「ユミ、そろそろ行こう」
「あ、う、うん」
僕達は急ぎ足で外へと向かう途中メイドさんに一週間後に来てくださいと言われたので「分かりました」と答え外へと目指す。
後方でクスクスと笑うメイドさんの声に疑問に思い振り返ると僕はどうやらユミの手を部屋から出ていく時に無意識に握っていたらしい。
先ほどまであれほど喧嘩していたと言うのに部屋から出てきたら一緒に手を握っている。
他人から見れば微笑ましいだろう。
僕はそのまま気にせず手を握り、いや、より一層強くユミの手を握ると歩き出した。
視界の端でユミが恥ずかしそうにしているのが少し嬉しかった。
ユミは普段は強気だが押しには弱いのだ。
国がある程度仕上がったらユミとデートをしよう。
そう心にそっと秘めたのだった。




