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廻る乖離転生  作者: 朔
第一章 異世界転生編
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第五話 サラの主人

「君は何者だね」


その言葉と共にただならぬ鋭い目線が僕の動きのすべてを把握しようとしているのに気づいた。


《〈目視鑑定(ヴュアーアプレェィザァ)〉を〈技術模倣(スキルコピー)〉でコピーしました》


なるほど、意外にもスキル持ちで僕のことをそのスキルで調べようとしていたか。

どうやら普通の爺さんではないようだ。

その爺さんは僕の持っているスキルの中に今自分が使っているスキルが突然現れてびっくりしただろう。

だが爺さんはそんな様子を外には出さず僕を睨みつける。

それから一分ほど僕らは睨み続けることになる。

その間にどうしてこうなったか説明しよう。


僕は町で認めてもらった後、買った荷物を届けることになった。

多分買ってきたものを届けるだけなら爺さんとは会わなかっただろう。

けどサラがこんなことを言い出した。


「そう言えばリユイさん、行くところないですよね。

良かったらご主人様に雇ってもらって、しばらくの間ここでお金を稼いでおいたらどうですか?」


確かにその方が良いだろう。

だが僕は魔人なんだぞ。

簡単に雇ってもらえるのか?


「ご主人様はとてもお優しい方ですから大丈夫ですよ。

私なんか娘のように扱って下さります」


それなら物は試しだ。

行ってみようか。


「ご主人様」


サラがドアを二回程ノックし、開ける。

部屋はどうやら主人の書斎のようだ。

奥で椅子に座る主人に視線を向ける。

主人は優しそうな僕よりも背の大きいしっかりとしたご老人だった。

白い髪に黒い目、がっちりとした筋肉質な肉体だった。


「初めまして、亜人のリユイと申します」

「ほう、魔人ですか。

いや、失礼。初めまして。

私はこの家の主人、オイトと言います。どうも」


そう言いながら手を伸ばされる。

意外にも魔人であることにそこまで反応を示さず平然としている。

伸ばされた手を握り握手をする。

だがその瞬間オイトの表情がご老人のそれでなく、敵を分析しようとする騎士の目になった。

そして


「君は何者だね」


と今に至ったのである。

全く持って隙のないその目に思わず全く身動きが取れなくなってしまった。

と言うだけでなくどう答えればいいか浮かんでこない。

今は目の前の鋭い目を受け流すだけで精いっぱいだった。


「ほう、全て受け流したか」


その言葉を合図に二人の時間が動き出す。

サラは後ろで不思議そうな顔をしていた。


「なかなかやるな」

「いえ、僕も自分のスキルが無かったら受け流せていませんでした」


解説しよう。

僕らは睨んでいる間のことを。


オイトさんは僕を睨んで居る時に〈目視鑑定(ヴュアーアプレェィザァ)〉をしていたのはご存知だろう。

このスキルは相手のスキル情報だけでなく、その者のステータスや心、記憶まで鑑定してきた。

僕も瞬時に〈技術模倣(スキルコピー)〉で獲得した〈目視鑑定(ヴュアーアプレェィザァ)〉を作動させ鑑定を相殺させていた。


だがこれがなかなか難しかった。

ところどころ鑑定されそうになり焦ったものだ。

まあ別に鑑定されたってどうってことないんだけど一応転生者であることを隠そうと。

そんなことを分かっていないサラはキョツトンとしている。


「して、ここには何用で」


そう言えば忘れていた、本題を言わないと。


「良かったら少しの間雇ってもらえないでしょうか」

「なるほどそう言うことですか。サラに言われて?」

「はい」


僕はサラにこれまでのことを話してもらった。

勿論転生のことは省いてもらった。


「分かりました。ではあなたにはこの家の用心棒になってもらうとしましょう。よろしくお願いします」

「いえ、こちらこそ宜しくお願いします」


案外簡単に雇ってもらえて助かった。

将来恩返しできたらいいな。


オイトさんはウシ、ウマ、ブタ、ニワトリ、ヒツジ、ヤギを飼っている大牧場主だった。

ここら辺一帯ではほとんどの人がオイトさんの牧場にお世話になっているそうだ。


家の大きさは物凄くデカい。

町で見かけた家の数倍はあるだろうか。


玄関は部屋かと思うぐらいの大きさで中に入っていく右手に上の階へ行く階段が、左手にはリビングが広がっている。

また、そこを素通りし、階段の後ろ側にある部屋はサラの寝室である使用人部屋がある。

そしてそこを更に進み突き当りにあるのはキッチンだ。


キッチンと言っても前世と同じ様なキッチンの形ではない。

魔法石と言われる魔獣を殺したときに手に入る石を使って食材を温めたり、冷やしたり、洗ったりする。

そのためその石を入れるスペースがありその上に鍋を乗せる板や、冷やす棚や、蛇口が付いていたりする。

よくよく見てみると皿を自動で洗うため食器棚もあった。

はっきりいって魔法は色々と便利だ。

まあどこの家にもこれがあるわけではないのだが。

そしてサラはここでいつもオイトさんの食事を作っている。

僕も少しここで料理してみたいな~とさりげなくサラの近くで言ったらじゃあ今度そうしましょうと言われた。

果たしてそうなる日か来るのだろうか。


次に二階へ。

ここさまざまな部屋が廊下一本に全てつながっている。

どれも扉が付いており鍵がかかっている部屋が多い。


一つは上がってすぐ左手のオイトさんの寝室。

ここは鍵がかかっている。


反対側の部屋はオイトさんの書斎。

ここはオイトさんがいる時にだけあいている。

ここには様々な本が置いてあり基本的には騎士についてのことが書かれた物語や剣の指南書がある。


奥から二番目の左手の部屋は倉庫。

ここも鍵がかかっている・・・・・はずなんだけど壊れていてあいてしまった。

中には入っていません。


その反対の部屋はオイトさんの運動部屋。

ここも普段は鍵がかかっているが中を見せてもらった。

そこらじゅうに丸太が転がっていたのは少し驚いた。

いったいこの人は丸太で何を・・・・・?


そして最後の奥左手の部屋。

ここはトイレだ。

トイレはまた今度話すとしよう。


そしてその反対側の部屋は・・・・・なんだか知らない。

でも厳重にロックされている。

やばそう。


まあざっとこんな感じだがオイトさんはこの家のほかに離れもある。

貴族ではないそうだがいったいどこでこれほどの家を造る金を儲けたのか・・・・・僕はまだ知らない。


そんなこんなで僕はオイトさんの家の用心棒になりました。




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