第五十七話 ソウとソレイと町長さん
その頃ヒトミとシズクは三種族の中から魔法がある程度使えるものを集め終えていた。
全員で三十万以上いるというのにこれ程の時間で既に魔法が扱える者が集まるほどに魔法を扱える者は少ない。
といっても十万はいるのだが。
流石にこれ程の人間を同時に訓練することは出来ない。
そこで闇と水属性のみ残ってもらった。
何故なら自分達の扱える属性ならば簡単に教えることが出来るので直ぐに使い物になるためである。
そして残った人数は一万百人だった。
水属性は一万人で闇属性は百人。
これからわかるように闇属性は世界的にも非常にも少ない。
では一番多い属性は何かというと地属性だ。
この属性は戦闘以外での需要がある。
例えば建物を作るなどだ。
それによりわざわざ危ない仕事をせずとも稼げたので一番多く生き残っている。
だが闇属性はその真逆。
どちらかというと暗殺など見つかればすぐに殺されるような危険な仕事しかないのだ。
それゆえこの数である。
まあそれ故に人数は絞れたのだが。
ヒトミとシズクは早速訓練を始めたのであった。
その頃ホムラとカエデはひたすらにかかってくる配下達を投げ飛ばしていた。
「そんなんじゃあリユイ様の駒にもならねぇぞ!」
「兄さんの足元にも及ばないよ!」
二人はそれぞれに叱咤の声を迫りくる配下に投げ掛け投げ飛ばす。
二人の考えはとにかく実戦あるのみなのだ。
だが恐るべきことにもう既に十万人を吹っ飛ばしているのだから驚きだ。
その頃ブーたんとアレンはひたすらに国民の意見を聞いていたのだがそれは割愛させてもらおう。
ソレイは今、町長室で町長と話ながら父親であるソウを待っていた。
「リユイさんは今何をしているのかな?」
「国を作っています」
「国!?」
思わぬことを言われた町長は驚きのあまり口を大きく開いた。
まるで顎が外れたのではないかというほどに。
「その事については父上が到着してからで」
「わ、分かった」
待つこと三十分。
二人は特に話すことがなかったのでずっと黙っていた。
そのせいだろう、時間の流れがとても長く感じる。
何か喋ろうかとソレイが町長に話し掛けようとした時に来た、ソウが。
「お待たせしました」
そう町長に一言言うとソウはソレイを見て少し驚いた。
「立派になったな」
思わずと言った様子で言われたその言葉にソレイは嬉しくなるが今は抑える。
仕事中なのだから。
「有難うございます、父上。久々の会えて嬉しいです」
またもやソウは驚いた。
自分といたときは一切言葉を発することはないでもなかったがはっきりと自分の意思を言うことはなくましてはありがとうなどは一切言われたことがなかったのだから。
ソウが驚きのなか席につくのを確認したソレイは話を始めた。
「今回帰って来たのには理由があります。その理由とはリユイ様の国造りに協力してもらいたいからです」
「協力?」
「はい。しばらくの間、そう、国に国民の家ができるまでの間この町に大勢の魔人を置いてもらいたいのです」
町長は悩ましい顔で天井を見つめている。
ソウは顔色を変えない。
「勿論おかせておもらう魔人達はその分しっかりと町のために働かせてもらいますので・・・・・どうでしょうか?」
町長は考えた様子で少しも動かない。
寝ているのではないかと疑ったソレイは「あの~」と小声で話しかける。
だが一切町長は動かぬまま五分が経過した。
「分かった! だが条件がある」
突然動き出した町長に驚き飛び上がりかけたソレイはその条件とは何かと耳を澄ませる。
「条件とは?」
「私達町の者もその国に住まわせてくれ!」
「え?な、何故ですか?」
ソレイは全く予想にしていなかった条件に戸惑うも理由を聞く。
「東聖国が陥落してからというものここらは物騒な場所になってしまった。町ギリギリまで魔獣がうろついているため食料もあまり入ってこない。そのため食料が高くなり買えない者は盗みを働くようにまでなった。もうこの町も限界なのだよ」
はっきり言って今ソレイには決定権がない。
それゆえにリユイに聞いてからでないと判断は下せない。
「少し待っていてください」
ソレイはそう言うとスキル〈思考共有〉でリユイに話しかける。
『リユイ様』
『あ? なに』
何故かリユイはとてもイラついたような声で返事をした。
今まで聞いたことのないようなきつい言い方に本当にリユイか疑ってしまう程に。
ソレイは思わず黙ってしまう。
『すまない、ちょっと今取り込んでて。で、どうしたの?』
ソレイは先程の話を一通り話した。
置いてもらうには条件があるということ。
その条件は国に住まわせること。
そしてその住まわせてほしい理由。
全てを聞き終えたリユイはなるほどと呟く。
『分かった。その条件を飲むと伝えてくれ』
『了解』
リユイとの通信をきるとソレイは町長に向かって言う。
「条件を飲むそうです」
「良かった。いや~良かった。それじゃあ今後とも頼むよ」
「はい」
ソレイはふとソウの方を見ると千切れんばかりに尻尾を振っているソウと目があった。
時は少し遡る。
ユミと共に王都にはいると辺りの雰囲気がどっと迫ってくる。
そう言えばこれまでこの王都の様子をしっかりと見てなかった。
この国は活気に溢れており建物はどれもしっかりとした江戸時代のような住宅だ。
だがどの人もおしとやかで静かな雰囲気。
一つ違和感があるとすれば服装が近代なことぐらいか。
ユミは一向に機嫌を直すことなく黙りを貫いている。
一応必要なことには感情のこもっていない声で返事をしてくれはするが。
「なあ」
「・・・・・」
こんな具合だ。
「僕は行ってくるからその間待っててくれる?」
今のユミと共にカマクラ国王と話す気力がない。
今ユミと話を一緒に進めようとすると喧嘩になりそうだ。
それはカマクラ国王に失礼だろう。
「分かった」
ユミはそれだけ言うと何処かへ行ってしまった。
まだ集合場所を決めていないのに。
帰るときはカマクラ国王に許可をとって上空から探すか。
僕はそう思いながらカマクラ城へと入っていった。




