第五十六話 懐かしい人、懐かしい場所
翌日。
ソレイは今オイト家の近くの町に来ていた。
リユイの空間操作により転移してもらったある。
辺りを見回すと多くの獣人、つまり仲間や家族が協力し合い生きていっている町があった。
人が持ちきれない荷物は代わりに背中に背負い、警備兵の手伝いをしたり、獣人が人に道を教えたり、泣いている子供に声を掛けたり。
逆に人間がそのようなことをしてくれている姿も見られた。
これこそがリユイ様が造り出したい未来だろうとソレイは感じていた。
そう町の様子を見学しているとき一人の仲間が声をかけてきた。
「おいしっかり働・・・・・? あ! ソレイじゃないか」
「うん? お、おう」
その声を掛けてきた獣人はお世話係の獣人の一人だった。
名前は覚えていないが自我のないソレイを必死に笑わせようと頑張っていた獣人だった。
だがどれも冷たい親父ギャグばかりで全く笑えなかったのだが。
「へ、返事した・・・・・お、お前返事できるようになったのかハハハよかったよかった」
「それで父上と町長と会いたいのだが」
「うん?ああ分かったよ。俺に任せときな。で、何処に集めればいいんだ」
「どこが言いと思うこの町で?」
ソレイはあまりこの町に来たことがなかったので思い付かなかった。
だからといって獣人族の村で話し合いを行うのは老人である町長には少しばかりきついだろう。
そこでこの町の何処かだが先程いった通りソレイには分からないため聞いたのだが、目の前の獣人は全く思い付かないといった様子だった。
「う~んどこが言いかな?」
「いつもはどこで会議を?」
「え? そんな事やってないぞ」
ソレイはその言葉を聞き唖然とした。
リユイ様はあれほど行っている楽しい会議を一切やっていないなど信じられないと。
「う~ん、やっぱり一番いいのは町長室じゃねえか?そこなら町長も既に居るし」
「分かった。父上をそこに呼んできてくれ。ありがとう」
「おう。またなんかあったら頼っていいぞ」
何だかんだで答えを出してくれた目の前の獣人にソレイはお礼を言い町長室へ向かったのであった。
一方その頃サラはリユイの空間操作オイト牧場へと転移していた。
サラは久々に見る牧場に懐かしさで胸を一杯にしていた。
少し近づくと幼い頃から仲の良かった羊達が近寄ってきた。
その羊達を撫でながら牧場の方へと近寄ったその時。
足元に何かを踏んだ感覚が伝わってきた。
すぐさまバックステップをし不自然に動いた地面に炎の魔法弾を放った。
こちらに飛んできそうになった矢はサラの魔法に焼かれ焦げ落ちてゆく。
恐らくリユイと旅に出る前では避けられなかっただろう罠だった。
罠を避けられたことにホットしていると何処からか獣人達が現れサラに武器を向けた。
「貴様何者だ」
「私はオイトの娘のサラです」
「あのご老人の娘?」
戸惑う獣人達。
だがそれも後から出てきた獣人族の長、つまりソウによって静まる。
「サラ様」
ソウがサラへと跪づく。
周りの 獣人族はソウが跪づくのを見てあわててサラへと跪づく。
「お久し振りです。お強くなられましたね」
「お久し振りです。そうですね、色々ありましたから。お父様のところへ行きたいのですが?」
「はは、只今」
ソウの合図で罠が解除されたのだろう物凄い振動が地面を震わした。
その振動が治まるとソウはサラに付いてくるよういい道を案内し出した。
「全ての罠を解除したわけではないので」
サラはその言葉で理解した。
だがあまりにも物騒過ぎるのではないかと内心思ったが最近魔素の濃度が上昇していたというのを思いだしその考えを改める。
「分かりました」
サラはソウに連れられオイトの家にて入っていった。
ソレイとサラを転移させた。
ヒトミとシズクとホムラとカエデとブーたんとアレンはそれぞれの仕事を開始していた。
僕達も向かうとしよう。
「ユミ行こうか」
「ええ」
僕は部分的に<化皮>を発動ユミは解除して背中にドラゴンの翼を生やし広げると空高く舞い上がった。
それにしてもこの翼は実に便利だ。
行きたいところに直で行けるのだから。
そうはいっても流石に直接カマクラ王国の王都に行く訳にはいかない。
下手したら攻撃されかねないだろう。
僕だったらそうするし。
「リユイ、ここら辺で降りたほうがいいんじゃない?」
「そうだね、そうしようか」
ユミの言葉に同意し、地上へ降り立ち僕は<化皮>を解除、ユミは発動させる。
ここは王都まで十分くらいの場所だ。
それも走ればすぐに着くだろう。
そう思い走り出そうとする僕にユミはこう言った。
「どうせなら王都に着くまで話さない?」
はっきり言って何故ここで話そうと思うのか分からなかった。
皆がそれぞれ働いてくれている中僕達がゆっくりお話をしている訳にはいかない。
それにこの後は魔物の森へ向かうのだ。
ちんたらやっている時間はない。
「話なら後にしてくれる?今は出来る限り急ぎたいんだ。そうしないと国民の不満が溜まってしまう恐れがあるから」
「歩きながらでいいから」
なんだろうか?
ここまでしつこいと少し苛つく。
もし恋愛のことなら止めてほしい。
今は出来る限り国造りに集中したいのだ。
「リユイってさ」
なんだ?
いつも表情とはかけ離れて暗い表情のユミがそこにいた。
「私よりもサラさんの方がいいの?」
「は?なんでそうなるの?」
ユミは少し悲しそうにでも明らかに苛つきの方が多い表情で僕のことを見つめてくる。
場合によっては睨んでいるといった方が正しいかもしれない。
「だってリユイ、私じゃなくてサラさんに自分の本音をぶつけてたじゃん」
え?そんな事でユミは怒っているのか?
「それはサラにも関係のあることあったからそれを報告した時にサラが母親みたいに優しくしてくれたからつい甘えちゃっただけで・・・・・」
「そんなの言い訳じゃん! じゃあリユイはサラさんのことどう思ってるの?」
「友達」
「どうだか」
サラはそれだけ言うと振り向き走り出していった。
僕も慌てて追いかける。
全く何なんだよ、たかがあれぐらいで。
女心はよくわからん。




