第五十二話 僕が貴女を殺してあげよう
ウィズの姉の方が言うにはどうやらこの作戦は魔王に筒抜けだったようだ。
そしてリユイとリユイに協力する者達を効率的に殺していくための奇襲の仕方も魔王の配下に教わっていたらしい。
だが計算外だったのはユミがこちらの味方になっていたことと僕が前よりも強くなっていたことだ。
それにより僕と僕に協力する戦闘員は勝った。
だが問題は非戦闘員であるゴブリン村長達だ。
そちらの方へはあのシュルさん達を亡くなる原因となった黒ワンピースの少女だ。
これは不味い。
ゴブリン村長さん達が危ない。
「・・・・・って感じです」
「分かったありがとね。ユミとサラは来て。アレン達は王の子達に国の様子を教えてもらって。行ってくる」
僕はウィズの姉の方の話を聞き終えるや否やゴブリン村長さん達の所へつまり中央カマクラ山へと飛んでいった。
サラを背中に乗せたユミと共に中央カマクラ山に到着した。
すぐにゴブリン村長達と別れた所へ向かう。
だがそこには大量のゴブリンの死体と今にも死にそうなゴブリン村長がいた。
身体中切り傷だらけでちがベットリと垂れ流されている。
村長さんの下にはちょっとした血の池できていた。
「村長!」
急いで駆け寄るがどうやらもう村長は目が見えていない様子だった。
「リユイ・・・・・様?そこに・・・居るの・・・リユイ様です・・・か?」
「そうだ!僕だ!リユイだ!サラ、ヒールを」
だがサラは頭を横に振る。
「・・・・・もう手遅れです」
「そんな!」
何故だ?
何故こんなことに?
全てうまく行くんじゃなかったのか?
せっかく戦争を終わらせまた皆で笑いながら生きていけるというのに?
やっとゴブリン村長の夢見た戦争前のような関係に戻れるというのに?
どうして?
どうして?
どうして?
クッソがあああああああ!
「どうしてだよ。どうすれば良かったんだよ! なんでいつもいつも上手くいったと思ったらこうなるんだよ!」
「リユイ・・・・・様」
「どうした?」
今にも息絶えそうな村長が何かを一生懸命に伝えようとしているのに気づいた僕は耳を村長の口に近づける。
「子供・・・達が・・・危ない」
村長はそう息絶え絶えにそう言うとある一方へ指を指す。
「分かった。ゆっくり、休んで下さい」
「・・・は・・・い」
村長はその言葉をいい終えるとゆっくりと瞼を閉じ永遠の眠りに就いたのだった。
「ぐう、うああああああ・・・・・殺す、絶対に許さない、あの女。殺してやる!」
僕はそれだけ言うと静かに立ち上がり村長の指差す方向へ走り出したのだった。
走って走ってやっと着いた。
だが既にあに黒ワンピースは来ていた。
子供達を懸命に守った兵の頭を片手にぶら下げて。
「またあったな!」
「・・・・・」
少女は全く喋る様子がなくただただそこに立ち尽くしているだけだった。
そしてその方が少女の背後にはゴブリンの子供達が絶望し泣き叫んでいる。
「何か喋ったらどうだ?」
どうせ喋らないだろう。
そう思ったが意外なことにその少女は何か言葉を発しようとした。
だがモゴモゴ喋っているせいで何を言っているのか分からない。
だが必死に何かを伝えようとしているのは分かった。
「何が言いたい? しっかり喋れよ!」
すると少女は顔を覆った髪を少しずらして口元を見せてきた。
糸で縫い付けられてあった。
そしてたまたま見えた目からは涙が流れてきていたのが分かった。
意味が分からない。
何故そんなに泣いている。
「クッソ、胸くそ悪い。その糸切ってやるからちゃんと喋ろ!」
僕は少女の間合いのギリギリまで近づくと心映武器の長さを調整し一振りする。
少女は軽く悲鳴をあげたが糸はしっかりと切れ喋れるようになった。
「あ、ありがとう、ございます」
その声は何処か聞き覚えがあった。
とてもか細くて可愛らしくて恥じらいのある喋り方。
いつも誰かの後ろに隠れ喋っているその人。
・・・・・エマだ。
「何故・・・・・あなたが? 死んだ・・・・・筈じゃ?」
「分からない、です・・・・・でももう、私は人を殺したくないです。助」
助けて。そう言いかけたエマの口は何故かまた先程のようにきつく糸で縫い付けられていた。
糸が勝手に直っていきまたエマがこれ以上喋らせまいと元に戻ったのである。
そしてエマは手の皮膚を突き破り飛び出てきた短剣を僕に向けた。
その時僕は確信した。
彼女はもう彼女ではないのだと。
そして彼女に心の中で誓った。
貴女を殺してあげようと。
エマがこちらへ走ってくる。
そして手からでた短剣を斬りつけてくる。
僕はそれを流しバックステップ。
「ユミとサラは子供達を皆の所へ運んで!」
二人は僕の言葉に頷くとサラは怪我をして動けない者をヒールで回復させサラは〈化皮〉を解除し大型ドラゴンの姿に戻るとサラのヒールが終わったもの達から背中に乗せていった。
僕はその様子をエマの攻撃を回避しながら見ていた。
そしてユミが全員を背中に乗せ飛びだったのを確認しやっと僕はエマとの戦いに集中した。
それにしてもエマの動きは相変わらずおかしい。
多分だが、今目の前で動いているのはエマの死体なのではないだろうか?
つまりやはりエマはあの時死んでいた。
そのまま置いておかれたエマの死体を見つけた魔王の配下はそのエマの死体に憑依した。
それにより無理矢理生き返させられたエマは自分の意思とは関係なく動いており、実際は憑依している魔王の配下に体を動かされている。
そんな感じなんじゃないか?
《その可能性が高いです。ですが一つだけ訂正するとエマはあの時まだ死んでいなかったということです》
え?
《いかなる上位の者でも死んだものを蘇らせ動かすことは不可能です》
じゃああの時、シュルさんとニックさんがエマさんを見つけた時にもまだエマさんは生きていたってこと?
《はい》
・・・・・そんな。
じゃあシュルさんとニックさんはエマさんが死んだと見ただけで思い込み自暴自棄になり死んでいったとういことか?
《・・・・・はい》
そう・・・か。
あれ?待てよ。
そうなるとまだエマさんは生きているというのにことか?
《はい。ですが魔王の配下の憑依を解いてしまうと死んでしまいます。既に臓器がしっかりとした機能を行わなくなっているため腐敗もだいぶ進んでいますし》
助かる方法は無いのか?
《殺してあげることが彼女を救う最後の手段です》
・・・・・分かった。
僕が殺そう。
小太刀の取り出し構えエマの動きに備える。
刀だとエマの回避スピードまでにカウンターを入れられないからだ。
エマは頭を右におかしな角度で曲げると地に四肢を這わせ物凄いスピードで襲ってきた。
予想外の移動方法で驚いたが難なく幼稚な振りを受け流すとすぐにエマの背後を切り裂こうと小太刀を振る。
が、エマは身を地面すれすれまで這いつくばらせ僕の小太刀が通り過ぎたのを確認するとその場から木へ飛び付いていった。
かと思うと直ぐ様こちらへ斬りつけてくる。
空ぶった後の体勢が崩れやすい時に来られたのですぐに反応できず回避するので精一杯だった。
エマは空振り地面に四肢を着け着地する。
そこにすかさず小太刀の刃渡りを伸ばし刀にしながら突きをする。
エマは回避出来きなかったのだろう右腕に僕の獲物が捕らえた。
だが、エマの右腕は容易く引き裂かれ木の方へ逃げていく。
そしてまたすぐに仕掛けてくる。
これじゃあきりがない。
何か方法は・・・思いついた。
多分これが一番早くて・・・そして一番相応しい彼女の死に方だと思う。
僕はエマの攻撃を避けずにそのまま肩に受けると抱き締めた。
エマはその見た目からは想像出来ない力強さだ。
だがその力も<怪力>には勝らない。
エマは何とかして抜け出そうとし噛みついてくるが僕はこの手を緩めることはなかった。
そして<炎鎧>を発動させる。
「ウー、ウー」
エマは開かない口から悲鳴を漏らす。
先程よりも更に強い力で暴れるが容赦なく抱き締めたため骨が軋み折れていく。
肉が焦げる臭いに思わず顔をしかめてしまう。
思わず流れてしまった涙が蒸発していく音がする。
エマの皮膚は徐々に焼け焦げ皮膚が垂れていき、骨が見えてくる。
もう顔も誰か分からない有り様だ。
だがその表情は解放され安心し微笑んでいるかに見えた。
そして最後の断末魔が聞こえた瞬間、ありがとうと言う声が聞こえたような気がしたのは気のせいだろうか。
エマさんの体は骨さえも塵になり風へ飛ばされていく。
こうしてやっと、一連の騒動は終わったのであった。
四章 終




