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廻る乖離転生  作者: 朔
第一章 異世界転生編
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第四話 魔人への恐怖

何とか町を抜け森の中に逃げられた。


「ごめんなさい」


なぜか謝られてしまったな。


《魔人は人間にとっては全て魔物と思われていますので恐れられるのは当たり前です。

それでも彼女はあなたを町に入れてしまった。

つまりマスターを混乱の原因にさせてしまったことにお詫びを言っているのでしょう》


そんなことまで教えてくれるのかい世界説明さん。


「私はあなたにこの世界を見てもらいたかったのです。

でも、逆効果になってしまいましたね」


うん?どういうことだ。


「昔私を助けてくれた転生者は私に、転生する前の世界の人間は

誰も優しい心を持つものがいない悲しい世界だと教わりました。

だからこの世界はそんな悲しい世界じゃないって知ってもらいたかっただけなんです。

あなたにこの世界を好きになってもらいたかっただけなんです」


そう言いながら目に涙を浮かべてうつむくサラさんにどう言葉を掛ければいいか迷う。

けどこのまま何も言わないわけにはいかない。


「僕がついつい目立っちゃただけだから気にしないで。

それにサラさんとお店の人とのやり取りを見ていたから優しい人達なんだなってわかってる。

あとさ、僕が前にいた世界でも優しい人はいたよ」

「え?」

「たぶんその転生者さんは前の世界で優しさを見つけ出すことができなかっただけだと思う」


サラさんは僕の顔を見上げる。

その時にトパーズのような目から出た一粒の涙が頬を濡らした。


「でもね、そんな風に僕にこの世界を見せてくれようとしてありがとう」


その言葉をきっかけにサラさんは静かに泣き始めた。


サラさんが泣き終わった。

僕はサラさんが泣いている間抱きしめてあげていた。

勿論落ち着かせるためであってべ、別にやましい気持ちとかはないよ。

無性だしね。

サラさんは泣き止んで僕から離れる。

なんとなく胸に暖かみが残る。


「すいませんでした」

「いいよ。それよりほら、三つ目のお願いは?」


僕の言葉にサラさんは一瞬キョトンとしたが一瞬で思い出したようだ。


「それはもういいです。

あなたにそんなことをしてもらう権利、私にはないです。

逆に私に何か命令してください」


なんだよそれ。

まあいいか、命令させてもらおう。


「じゃあ一緒にまた町に行ってくれるかな」

「え?」

「野菜、買い忘れてるじゃん」




サラさんと共に町の中へ入っていく。

すると先ほどの騒動を見ていた人たちが驚き身構える。

兵士たちが急いで僕の所へ飛んできた。


「魔物がこんな所に何しに来たのだ」

「少し話を聞いてくれませんか」


少し大きな声でそう言い辺りの人が注目するのを確認する。


「僕はあなた達と敵対する意思はありません。

それにサラさんが僕をここに連れて来たのには意味があります。

それはあなた達が心優しい人間であることを僕に教えてくれるためです。

だからサラさんを責めないであげてください」


町の人の反応は微妙だ。


「少しいいかのう」


年老いた老人がトコトコと歩いてきながらそう言う。


「町長さん・・・・・」


サラが驚いたように言う。

なるほどあれが町長か。


「魔人は半年前、私達を襲ってからは魔物にしか見えん。

それを簡単に払拭出来るほど君は私達が甘い人間だと思っているのかね」


なるほど、半年前サラさんを襲った魔人達はこの町にまで襲っていたのだろうか。

確かに魔物へ対する恐怖心は植え付けられているのだろう。


「待ってください!リユイさんは魔物なんかじゃなくて優しい魔人です!」


サラさんが必死に町長に抗議する。

だが町長はサラさんを鎮めるように右腕を上げる。

今気づいたけど町長の左腕が無い。

恐らく魔物に襲われたとき失くしたんだろうか。


「だがな」


町長は意外にも言葉を続けた。


「君は悩まされていた盗賊を捕まえてくれた。

殺すのではなくね。

魔物なら奴らを殺していただろう。

他の魔人は信じないが君は信じよう」

「町長さん・・・・・・有難うございます」


思わぬ町長の言葉に驚いたな。

でも理解のある方で助かった。


「町長さんが認めるなら認めるしかないな」

「そうだね、町長さんがそう言うなら」

「村長さんが認めたんだから弟子になってもいいんだよね」


町の人たちが僕を認めてくれる。

今思うとこれが魔人と人との共存のきっかけだったのだと思う。




勿論後で野菜を買いました。


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