第四十四話 帰還
目を開けるとまだ日の昇っていない、けれども真っ暗と言うわけではない空が広がっていた。
隣ではユミが寝ている。
頬には少し涙を流した後が見えた。
この状況から考えるにどうやら僕達はあの戦いの後にそのまま寝てしまっていたらしい。
仲間達が少し心配だが恐らく大丈夫だろう。
「う~ん・・・・・ふぁ~」
横で寝ていたユミが起きた。
「おはよ」
「ん、おはよ」
・・・・・え?
改めて見て気づいたことがある。
昨日の夜は暗かったしユミの顔しか見ていなかった。
だから気づかなかったのだろう。
ユミは・・・・・服を着ていませんでした。
僕は慌てて後ろを向く。
「どうしたの?」
どうしたの?じゃないだろ!
「服・・・着てないじゃん!」
「あ、元の姿に戻った時に服が破けちゃったみたい」
「天使の服なら復活するだろうからそれまでの間これ」
僕はそう言いながらポンチョを脱ぎユミに渡す。
ユミは素直に受け取り着た。
その瞬間ポンチョが形を変えワンピースになった。
天使の服にはこんな能力もあるのか。
《天使の服のレベルが上がりました。様々な形や材質に変化するようになりました》
へ~それは便利だ。
「凄い!こんな服どこで手に入れたの?」
え? どういうことだ?
転生者は全員この服をもらえるわけではないのか?
「転生したときにもらえなかった?」
「うん。そんなの渡されなかった」
「いや、渡されるわけではなくて気づいたときにはもう着ているんだよ」
「え?転生中に着せられるってこと?」
「うん」
ユミは首を曲げすごく悩み始めた。
「そんな高度な事できるんだここの世界の人って」
「いや、人じゃなくて天使に」
「天使?」
何だ。
さっきから話が噛み合わない。
「ちょっと待って。ユミはこの世界にどうやってきたの?」
「ここの世界の人たちに魔法で転生させられたよ」
「え・・・?」
絶句してしまった。
どういうことだ・・・・?
いや待て、冷静に考えよう。
ユミは強制的にここの世界の何者か・・・恐らくユミに魔動機械を付けた者だろう。
その者たちが何らかの魔法かスキルでユミを強制的にこの世界に転生させた。
そうなると前世での結美の原因不明の突然死は説明がつく。
普段からユミは運動をしているため健康的であるのだからそんな簡単に若いのに病気で突然死何てこと普通は無いだろう。
そうなるとそのユミを強制転生した奴らが前世で結美を殺した犯人になる。
許さない!
絶対に許さない。
骨の髄まで痛めつけそして餓死させてやる。
一番つらい死に方だ。
それにしてもなぜユミはドラゴンになったんだ?
それもスキルか魔法のせいなのか?
その所も聞き出さないとな。
「リユイ?」
「ああ、ごめん少し考え事を」
ユミは昔と一緒だね、と言うと嬉しそうに笑った。
だがすぐに顔を引き締め声のトーンを落とし喋り始めた。
「ねえ、リユイ・・・じゃなくてタカシの方がいいかな。この話の時は」
「なに?」
「私って向こうの世界ではどうなっちゃてるの?」
はっきり言って聞かれたくなかった。
でも僕には話さないといけない義務がある。
一人の人間として。
「原因不明の突然死。僕は理解できないまま君のお葬式に行ったよ。そしたら君の両親にも会った。ひどく心を痛めてたよ」
「・・・そう、なんだ。ありがと」
「え?」
「私ずっと気になってたの。この世界に来た私は向こうの世界ではどうなっちゃっているのかなって。でもタカシのお蔭で分かった。これですっきりした。ありがと」
「・・・・・うん」
少しの間沈黙が続いた。
辺りの空気がとても重かった。
僕をその場から動けなくさせるほどに。
だがその沈黙はユミの思わぬ言葉によって終わった。
「そう言えばタカシ、どうやってこの世界に来たの? もしかして死んだんじゃないでしょうね!」
「そのもしかして、だよ。君のお葬式の後寄ったコンビニで強盗にお腹を刺されてね」
「バカ! 武器を持った相手からは逃げろって言ったでしょ!」
なぜか戦ったとは言っていないのに言い当てられてしまった。
さすがの勘の鋭さだ。
「ごめん」
そう言った瞬間思いっきり頬を叩かれた。
かと思うと思いっきり抱きしめられた。
「・・・・・ここまでつらかったよね。でもそんな顔はしないで」
ユミが優しく頭を撫でてくれた。
その手はとても暖かかった。
山から降りるとゴブリン達とソレイ、それにこれから山を登り始めようとするアレンとサラがいた。
「リユイ様!」
「リユイさん!」
「リユイ!」
皆が驚きと共に歓喜の声をあげた。
因みにユミは少しこの場に来るのは待ってもらっている。
きちんとした話合の場で紹介しないと混乱になると思ったからだ。
がすぐにアレンが僕まで走り寄ってくると思いっきり僕の頬を叩かれた。
う~両ほっぺが痛い。
「何で勝手に一人で山へ行ったんだ!」
先ほどのユミのビンタとは違いとても痛かった。
「ごめん。自分でも分からないんだ。何で山へ行っちゃったのか」
よくよくアレンを見てみると左腕の袖が不自然に垂れ下がっていた。
まるで左腕が無いかのような・・・?
左腕が無いのか?
もしかして僕をユミから守るときに失ったのか。
「本当にごめん」
「馬鹿野郎! ・・・・・でも無事で本当に良かった」
そう言うとアレンは力ず良く僕を抱きしめた。
嬉しい。
でもきつくて痛いからもうやめてくれ。
「リユイ様、ゴブリン達は皆健康です。ですが魔人達の戦争は一時中断した模様。原因は不明のためゴブンとその他数名のゴブリンが調査に向かっています」
「分かったありがとう、ソレイ」
「つきましてはゴブリンが帰り次第全員で会議を開こうかと」
「ああ、そうしよう」
その言葉で一旦この場はお開きとなった。
先ほどから怒りの視線を向けてくるサラの所へ行く。
「ごめん、サラ」
「私達が一体どんな思いでここで待っていたのかわかっていて言ってるんですか?」
「・・・・・分からない。でも心配かけたのは分かる。だからごめん」
サラは今にも泣き出しそうな顔で僕に詰め寄ってくる。
「心配だけじゃありません!私達を頼ってくれなかった悲しみ!勝手に一人で行動してしまうことへの怒り!私達ではどうしようもできないもどかしさ!もう、何で」
サラの目からは大粒の涙が流れ始めた。
「もっと、もっと私達に頼ってください」
そう言うとサラは僕によっかかってきた。
それに応え僕はサラを抱きしめてあげる。
なんだかこうすると昔のこと(と言っても2ヶ月前ぐらいだが)を思い出す。
あれは初めてサラさんと出会った日のことだった。
あの時がとても昔のことの様に思うのはなぜだろうか。




