第四十一話 操られしドラゴンとの闘い
ドラゴン。
それは幻ノ者といわれるものの一つ。
絶対の強者であり圧倒的な力で人や魔人にとどまらず魔王にまで恐れられる存在。
東大陸にのみ存在する龍と対をなす悪として恐れられる。
そのドラゴンは何万年と生きると言う。
鱗の一つ一つは全ての魔法を受け付けず、また、自分の属性である魔法は全て使えると言われる。
その頑丈な鱗は己の心映武器を勇者として神々に認められ鍛えてもらわなければ貫かぬとも言う。
まさに出会ったら最後、気まぐれで生かされなければ必ず殺されると言う存在。
とは世界説明さんの言葉である。
つまり魔法は効かないし剣も効かない。
死を覚悟せよということだ。
だが今回の勝利条件はドラゴン討伐ではない。
結美の心映武器に着く魔動機械の破壊である。
それさえ済めばもう戦うことは無い。
ならべく速く終わらせよう。
「グガァァァァァオオオオオ」
ドラゴンの遠吠えだ。
凄まじい風が僕を吹き飛ばそうとする。
それにしても驚いたな。
どうやら結美は今まで〈化皮〉と言うスキルで人の形になっていただけらしい。
ちなみにだがその〈化皮〉はコピーしといた。
彼女は転生してドラゴンになってしまったらしい。
まあ僕は自分自身亜人になってしまったこともあってかあまり驚かないが。
さあ第二戦目の始まりだ。
《推奨:〈物理攻撃緩和〉の発動》
あれ?
つけ忘れていたか。
でもなぜさっき言わなかったんだ?
《・・・・・わすれておりました》
・・・・・あ、はい。
それにしてもすごい魔気だ。
下手したら魔王よりすごい。
心映武器は何処だ・・・・・あった。
爪をコーティングするように上から張り付いている。
これは当たったら即死だな。
こいつはまず、グ!
先ほどまで数mもあった距離を目の前のドラゴンはその巨体を物ともせず一瞬にして目前に迫ってきた。
「〈龍突〉」
物凄いスピードで重心を狙ってくるが反射的に何とか避ける。
が、次の瞬間には50mほど吹っ飛ばされた。
これはやばい。
多分肋骨の数本が折れた。
ドラゴンを見るとさっきまで僕がいた所に尻尾があった。
恐らく尻尾で吹っ飛ばされたのだろう。
あれ?
なんか骨がゴキゴキ言っている。
なんだ?
《〈超身体〉により肋骨の接着と内臓の回復を行っています》
凄いな〈超身体〉。
でも念のため時間経過完全回復をかける。
うん?
何やってるんだあのドラゴン。
ドラゴンは口を大きく開けてまるで深呼吸をするかのようだ。
《大気中にある魔素を吸収し大型の火炎弾を放とうとしています》
斬撃による相殺は出来そうか?
《できません》
了解。
走り出す。
ドラゴンが恐らく僕の体ほどある炎の球を吐き出す。
スピードはたいしたことは無い。
避けるのは簡単だ。
走りながら迫りくる大型火炎弾を避ける。
それを数回繰り返す。
今はドラゴンまで25mと言ったところか。
と思った先からドラゴンが攻撃手段を変えてきた。
今度は鱗の一つ一つから顔ぐらいの大きさの黒い球を飛ばしてきた。
これはなんだ?
《解説:暗弾。闇の魔力を凝縮し発射する闇魔法。威力は使用者により左右する。この暗弾は鱗の一つから出ているため小型であるので威力は無いと思いますが十発受けると今のマスターでは死にます。魔法剣で光の力を帯びさせれば斬撃で相殺できるかと》
了解。
にしても馬鹿みたいに暗弾の数が多すぎて異常だ。
ざっと見て五十個ぐらいあると思う。
それに次々と発射していっている。
まあ仕方ない。
全部斬っていってやる。
スローモーションになっているように感じる。
無数の暗弾をまとめて五個ぐらい斬っていく。
それを何度も何度も繰り返していく。
やっと残り5mぐらいになった。
チッ、さっきから6個ぐらい喰らってしまった。
まあ大丈夫だ。
このままいけば到達する。
と思ったらなぜかドラゴンは暗弾を発射するのを止めた。
なぜ?
瞬間、あっという間に近づいてきて左手で薙ぎ払ってきた。
が、今回は何とか対応できた。
ジャンプする。
薙ぎ払ってくる腕が丁度真下を通る。
その瞬間真下に向かって体を反転させながら魔法剣の長さを少し伸ばし、又、魔力を思いっきり込め薙ぎ払う。
そして左手の魔動機械を破壊する。
すぐに着地し、距離をとる。
後は右手の魔動機械を破壊すれば結美は解放される。
「グガガガガ」
うわっ、びっくりした。
「黙れ黙れ黙れ黙れ!話しかけてくるなアアアア!ウガァァァァァ」
恐らく魔動機械が片方無くなったことにより本来の結美が今の結美に話かけでもしているのかもしれない。
「貴様ァァァァ!殺すゥゥゥゥ!」
うわ~やばいよこれ。
「結美っ!聞いてくれ。僕は今まで君に守られてばっかだった」
「黙れェェェェ!」
「結美のお蔭でいじめてきた奴を追い返したあとも僕はなんだかんだいって精神面で君に守られてばっかだった。でも、今君と再び出会ってそして気づいた。僕は・・・・・君が好きだ!だから・・・・・今度からは僕が君を守る存在になる!」
「タ・・・カ・・・シ・・・」
「結美!」
「グガガ。黙れ黙れ黙れ、黙れェェェェ!」
ドラゴンはそう叫ぶと翼を広げ空高く飛び出した。
すぐさまジャンプし〈化皮〉でドラゴンの翼を背中に生やし空を飛ぶ。
爪による斬撃と鱗から発射される暗弾を魔法双剣の光魔法を帯びた斬撃で相殺していく。
もう少し・・・・・あと一歩・・・・・。
これで・・・・・!
だがその時ふとした油断が生まれてしまった。
斬撃をもらってしまった。
それにより体を斜めに切り裂かれた僕は意識を失い〈化皮〉が解除されたこともあり落下していった。
だが幸運にも先ほどかけておいた時間経過完全回復により体が回復したことと落下寸前で意識が戻ったことにより腕の骨を折ったが何とか着地できた。
まあこれぐらい数秒で治るから大したことは無い。
だがすぐさまそこに急降下してきたドラゴンの吐く中型火炎弾が迫りくる。
斬。
又来る。
斬。
又。
斬。
そして最後に右爪による龍突が来る。
それを紙一重でかわしながら魔動機械を切り裂く。
斬。
ドラゴンは地面におもいっきり叩きつけられそのまま数m転がっていく。
やった。
やり遂げた。
終わった。
そう思うと体の力が勝手に抜けて倒れかける。
その背を誰かが支えてくれた。
不思議に思い振り返る。
結美だった。
そこにはかつての笑顔の優しい結美がいた。
「タカシ・・・・・いや、この世界ではリユイ、だっけ。リユイ、ありがとう。私も、いや、私は、ずっと前から好きだったよ」
そうかわいらしく言いながら目に涙を浮かばす結美を見るとなんだか前世に居るようでとても安心した。
「結美!」
僕はそう叫び結美に抱き着く。
結美もそれにこたえ僕を優しく抱きしめてくれる。
お互いの心が今、やっと、やっとつながった。
こうして操られし結美との闘いは終わった。




