第三十六話 生き残るには?
マズイ。
今来られても困る、戦えないし。
会いたいとは思っていたけど困る。
てか何で来たんだ?
どうしてここが?
いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。
ゴブリン達を避難させるまでの時間稼ぎをしなければ。
「おい、ゴブン!」
「え?おオレッチのことでヤンスか?」
「そうだお前だ!」
ゴブンに戸惑いながらも頷くと突然胸を抑えた。
「え?何している・・・・・って大丈夫か!」
急いで駆け寄るとゴブンが苦しみだした。
「だ、大丈夫でヤンス。な、名前ありがとうでヤンス」
え、名前・・・・・あ。
そうか、名付けてしまったのか。
魔力がスーッと抜けていったと思ったらそう言うことか。
てことは進化しちゃうってことか?
すると突然ゴブンが雄たけびをあげ魔素を急激に吸収し始めたかと思うとみるみると筋骨隆々なゴブリンへとなっていった。
《解説:魔人のホブゴブリン、個体名ゴブン。ホブゴブリンはゴブリンの上位個体であり強力、単体だけで小型竜を狩るとされます。外見的な特徴は肌の色が緑色ということのみ》
うわ、小型竜狩れるんだ。
確かに今目の前に居るゴブンは僕より背が高く(恐らく2メートル)筋骨隆々で頼りがいがある。
「終わったでヤンス」
うわ、渋くなったな声。
「マスターどうぞご命令を」
「マスター?」
てか、ヤンスはどうした?
「はい。オレッチはこの恩忘れません。ですからマスターをそう呼ぼうと思いましたでヤンス」
あ、良かった。
ヤンス言った。
「そ、そうか。じゃあゴブリン達を避難させるまでの時間稼ぎを頼む」
「了解でヤンス」
ゴブンはそう言うと例の者へと駆け出して行った。
今のうちに何とかしないと。
とりあえず洞窟の外へ逃げてもらおう。
「皆さん落ち着いて僕の指示を聞いてください!」
ゴブリン達はパニックになっており僕の声が聞こえていない。
どうしようこのままじゃゴブンが・・・・・。
「皆の者、静まれ!」
村長さんの静かでありながらもしっかりと聞こえる凛とした鋭い声が洞窟内でこだましている。
ゴブリン達はぴたりと動きを止めパニックが収まった。
「その亜人様の言うことを聞け!」
ゴブリン達が一斉に僕の方を向く。
え~と、これは喋っていいんだよね?
「とりあえず僕の前に集まってください」
ゴブリン達が一斉に僕の前に集まる。
ここまでぴったりに大勢が動くと逆に気持ち悪いな。
さてと。
それでは脱走方法を考えよう。
ふと思い立つの二つの案だ。
一つ目は少々危険を伴うが洞窟の出口から出て逃げていく。
二つ目は僕のスキル空間操作でこの山のどこかに全員を転移させる。
どちらもデメリットがある。
一つ目は逃げる途中殺される可能性があるということ。
二つ目僕が死んでしまう可能性が高くなる。
僕の空間操作は自分には使えない。
ゆえに僕だけここに残ってしまう。
今の僕は戦闘ができない状態のためこのままでは逃げきれず死んでしまう。
いったいどうすれば・・・・・。
時間は無い。
より多くの生存者を残せる案にしよう。
「ゴブン、来い!」
ゴブンは血だらけの状態ですぐさまこちらに走り出す。
敵もこちらに来ているがゴブンの方が速く着く。
すぐさま時間経過完全回復をゴブンにかけ、ゴブンが来た瞬間ゴブリン達とゴブンを転移させた。
ゴブンは何でと言うような顔で転移していった。
すまんなゴブン。
これ以外方法が思いつかなかったんだ。
例の者を見る。
「四日ぶり」
「・・・・・」
「お前には訊きたいことがある」
「・・・・・」
ダンマリか。
「殺す」
喋るのかい。
目の前の者は猛スピードで僕へ向かい走りだす。
そして僕の所へ来た瞬間、心映武器である鉤爪を出現させ斬りつけにくる。
急いで回避するが少し服が斬れた。
あ、こんな時になんだがこの天使から貰った服は破れても一日でもとに戻る。
「おっと」
今度は僕の首を斬りかかってきたのですぐさましゃがみながらバックステップ。
だが敵もそのまま足を踏み込み追撃を仕掛けてくる。
急いで横へ飛びのき追撃を回避する。
それにしても先ほどから足が震えてしまい転びそうだ。
避けるだけなら何とかなるが攻撃に転じた瞬間体が言うことを聞かなくなるだろう。
さあどうすればいいでしょう?
《今使用できるだろうスキルを言いましょうか?》
頼む。
《〈空間操作〉〈夜快目〉〈神速〉〈超脚力〉〈超感覚〉〈目視模倣〉〈料理人〉〈家事達人〉〈思考共有〉〈限界突破〉です。ですがどれも本来の劣化版になっています》
なるほど、身体強化系のスキルや戦闘には直接的な関係が無いスキルが使えるかんじか。
〈限界突破〉ってなんだ?
今までにこんなスキルあったっけ?
《魔王との戦闘により習得した模様》
そんなの習得してたか?
《一度気を失ってから復活した時に習得しています》
つまり僕の記憶が無い時のか。
《恐らくその時かと》
そのスキルはどんな効果なんだ?
《不明です》
は?
《不明です》
いや、そうじゃなくて。
お前にも分からないスキルがあるのかと思ってびっくりしただけだ。
この〈限界突破〉は止めておこう。
効果の分からないスキルを使って自爆したくない。
そう考えてくると無難に〈神速〉〈超脚力〉〈超感覚〉で逃げながら〈思考共有〉でソレイに助けを求めるか。
だが目の前の奴から逃げられる気がしない。
なぜかと言うと〈神速〉はさっきから使っていたがそれでも追いついてこられていた。
つまりスピードは同じ、だが僕は恐らく奴よりスタミナが無いだろうからすぐにスタミナが切れ追いつかれ簡単に殺されてしまうだろう。
やはり何とかして戦えるようにならないと生き残れない。
「ふぁ」
危ない危ない。
普通に斬り殺されるところだった。
やはりこのまま逃げ回っていても埒が明かない。
戦おう。
それしか道は無い。




