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廻る乖離転生  作者: 朔
第四章 魔人三種族戦争編
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第三十四話 もう一人の自分

真っ暗だ。

何も見えない。

しかも浮いている。

あり得ない。

でもあり得ないことが起きる空間。

それは夢。

俺は夢の中にいるってことか。

確か俺は・・・・・僕は意識がもうろうとしていて足取りが危うかったからサラとアレンに支えてもらいながら宿に戻った。

そこでベッドに寝かせられそのまま眠った。

で、今か。

それにしても真っ暗。

恐らく目の前に人がいても目では認識できないだろうな。


「―――――」


突然後ろから声を掛けられた。

でもそれは何を言っているか分からなかった。


「なんですか?」

「・・・・・」


返事は聞こえないが恐らく今もそこに居る。

何か分からないが歩み寄ってみることにした。

なぜか歩まないといけないと言う気がした。

俺が・・・・・僕がその者に触れた瞬間一瞬にして周りが明るくなった。

真っ白だ。

そして果てしなく真っ白な空間が続いている。

いつの間にか僕は地面の上に立っており、地面には数センチ水が溜まっている。

その地面が水平線まで続いている。

何も無い。

触れたはずなのに、手にはその者の感触が残っているのに、いなかった。

目の前には何もいなかった。

だがそれと引き換えに後ろから誰かが泣く声が聞こえた。

振り返るとそこにはもう一人の自分がいた。

小学生ぐらいの僕だ。


「どうして泣いているの?」

「・・・・・」


目の前の自分は俺の・・・・・僕のことを無表情に見て泣いている。

頬に滴る涙を拭うことをせず僕のことを見ている。

思わずその涙を拭おうとするが涙だけでなくもう一人の自分に触れることができない。

透き通ってしまうのだ。

しばらく見ていると今度は小学生の僕が話しかけてきた。


「何であなたは・・・・・

      笑っているの

            ・・・・・」



「ハアハア」


目が覚めた。

僕はあの時笑っていた?

いや、笑っていなかった。

それによくよく考えてみれば僕のことを見ているようではなかった。

見ていたのは僕の後ろ。

僕の後ろを見ていたようだった。

でも後ろに何かがいたようには思えない。

ではやはり僕を見ていたのか?

それに僕自身一人称も変だった。

僕ではなく俺と自然に思っていた。

今まで意識しない限り俺なんて言う一人称は使っていない。

何なんだよ。

ふと隣を見るとソレイが丸くなって寝ている。

思わずモフる。

更に隣を見るとサラが寝ている。

更に隣、床にはアレンが寝ている。

外を見ると日が昇り始めていた。

外に出たい。

無性に外に出たい。

僕はベッドを降り部屋から出る。



宿の外に出る。

あまり人がいない。

山。

山に行きたい。

昨日行った山に行く。

あれ?

何で僕(俺)こんな事しているんだろう?

でも行かなきゃいけない気がする。

何だろう、この気持ち。


《不明》



昨日ゴロムシと戦った・・・・・いや、戦えなくなったことに気付いた場所に着いていた。

何も無い。

何だ。

何もいないじゃん。


「ハハ」


なーにも居ない。


(そう。君の外には)


なーにも。


(俺は君の中)


突然後ろの草がごそごそと動いた。

反射的に振り返るとそこには人型の何かがいた。

すぐさま草を掛け分け逃げようとする者の腕を掴み引き寄せる。

子供?

いや、肌の色が緑色であるから人間ではない。

肌の色が緑?

・・・・・ゴブリンだ。


《魔人のゴブリン。個体名なし。ゴブリンは単体では弱いが集団だと龍種を倒すほど強力。その緑色の肌と長い鼻、背が低いのが特徴》


やっぱりゴブリンか。


「お、お助けでヤンス!」


ヤンス?


「お前はなんだ?何で僕のことを見ていた?」

「そ、それは・・・・・復讐を手伝ってくれそうな魔人を探していたらなんか突然目の前に強そうな亜人が現れたんでびっくりして様子を窺っていたんでヤンス」


ゴブリンはおどおどした様子でそう答えた。

そう言えば魔気が全開になっていた。

悪夢のせいだな。


「復讐?」

「そうでヤンス。突然強くなったオークとオーガ、ウィズの国同士で戦争を起こしたことは知っているでヤンスか?」

「ああ」


アレンの言っていたやつだろ。


「それでですね、オレッチの住んでいたゴブリンズ村はその戦場のど真ん中でしてオレッチ達は命辛々この山に逃げ込んできたわけでヤンス」

「はあ」


なるほどね。

戦争の影響で国をめちゃくちゃにされてしまったので復讐したいということか。

流石に三つの種族の国を敵に回すことはしたくない。


「ちょっと無理ですね」

「お願いでヤンス!オレッチ達ゴブリン族と強くなっておかしくなったオークとオーガ、ウィズ族を、魔王を倒して救って下さいでヤンス!」


うん?

何故に魔王が出てくる?


「魔王?どういうことだ?詳しく教えてくれ」

「分かったでヤンス。

昔はお互いの国を理解し尊重して共に生きるために協力していたんでヤンス。

でも魔王の手下が来た後から突然国の様子ががらりと変わり国に入ることすらできなくなったでヤンス。

今までならあり得ないことでヤンス、門前払いなんて。

そして次の日には戦争が始まりオレッチ達の村は戦場となりもうぐちゃぐちゃでヤンス。

こんな事になったのは魔王が来たせいでヤンス。

魔王のせいでこんなことに・・・・・お願いでヤンス!

オレッチ達を救って下さいでヤンス!」


地面に土下座しながら地面を叩き、涙を流すゴブリン。

何だろうこの気持ち。

とっても苦しい。


~~~


「おい、どうしたんだよ!立てよ!www」


目の前の元親友達が俺を殴り倒し、見下し、あざ笑う。

その笑い声がひどく俺の心をえぐった。

悲しい。

昔は仲の良かった親友。

なんで突然いじめてきたか分からない。

でも確かにこれだけは言える。

もう彼は親友・・・いや、友達ですらないって。

そう思った瞬間何故だか笑えてきた。

なんで僕はわざわざ殴られてやっているんだろうって。


「ハハ。アハハ」

「うわ、何笑ってんのこいつ、マジキモwww」


その瞬間俺の心の中にあった何かが切れた。

それまでは話し合えばまだ何とか分かりあえるって心のどこかで思っていた。

でも所詮は他人。

他人なんだよ。

強い者の意見しか聞かない。

所詮は弱肉強食で、虎の威を借る狐でないと生きてけないんだ。

もう疲れた。

楽になろう。


気が付いたら親友はもう元の顔が分からなくなるぐらいぼこぼこになっていた。

元親友は泣いて謝ってきた。

けどその言葉は一ミリも僕の心には届かなかった。


僕は元親友を拷問した。

誰が元親友に俺をいじめさせるようにたぶらかしたかって。

目の前の元親友はありもしない噂を吹き込まれていた。

犯人はここら一帯の不良小学生を取り仕切っている者でなぜ僕をターゲットにしたかは不明。

でもそれだけで十分だった。

元親友は自分の意志で僕をいじめてきたわけではなくその犯人に意図的にそうするように差し向けられただけであった。

でもだからと言って確実に目の前の子供は親友では無くて知り合いでしかない。

僕は許せなかった。

僕の親友にありもしない噂を吹き込み、僕をいじめるように差し向けた奴を。

絶対に許さない。


~~~


あの後僕は結美にあらゆる戦闘術を教わった。

そう言えばそんな過去もあったな。

今のゴブリンはきっとあの時の僕と同じ気持ちなんだと思う。

そう思うといてもたってもいられなくなった。


「分かった。魔王討伐は無理だけど戦争を止めることは出来るかもしれない。協力しよう」


なぜそう思ったかと言うとこの魔王と接触した後に突然態度が変わると言うことはソウの時と似ている。

どうやら昔、ソウが治めている獣人の国は一切人を襲うことは無かったらしい。

だがあの豹変ぶり。

原因は知っての通り魔動機械。

つまり今回もそれぞれの国の王が心映武器に例の魔動機械をつけられ操られているのが原因ではなかろうか?

そう思ったのである。

もし本当にそうなのであれば後は簡単だ。

それぞれの王の心映武器に着いた魔動機械を破壊すればいいだけなのだから。


「本当でヤンスか!」

「わざわざこんな嘘なんてつかないよ」

「あ、ありがとうございますでヤンス!」


ゴブリンは土下座しながら喜びの涙を流した。

お前泣いてばっかだな。


「でも何で助けてくれるでヤンスか?」

「お前の気持ち分かるんだよ、仲良かった奴を敵にされる気持ち。だからかね」

「そうでヤンスか・・・・・」


今ならまだ元の関係に完全には戻れなくとも近づけることができるかもしれない。

目の前のゴブリンが昔の自分に重なってしまったのかもしれない。

僕は昔の僕を助けたいのかもしれない。

なんか暗いな空気が。


「よし!そうとなったひとまずオレッチ達の仲間に会って下さいでヤンスよ」


僕はそう言い走りだすゴブリンの後を追いかけるのであった。


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