第三十三話 死が与えたモノ
ここの宿屋は東聖国と同じ様な宿屋だ。
案外とどこも宿屋なんて同じなのかもな。
急いでリュックの中からソレイを出す。
「プハー」
外に出て毛づくろいをするソレイは少しデカい猫にしか見えない。っと思っていたが最近は成長してきたので猫にしてはデカすぎる。
だからトラだな。
フォワイト、いや、プラチナタイガーだ。
そんな事は置いといて。
「とりあえずギルドに行ってリハビリをかねて簡単な討伐クエストをやろうと思う」
「そうですね。でも本当に大丈夫ですか?」
サラは優しいのう。
「大丈夫だよ」
「それならいいんですけど」
寝かけていたソレイがこちらを見て目をしばしばさせている。
どうしたのだろう?
「またリュック?」
「ああ」
「じゃあボクは休んでいてもいいか?」
ソレイが辞退するなんて珍しい。
疲れたのかな?
「ソレイは休ませてあげましょう」
サラがこういう風に言うのは珍しいな。
というかソレイはそんなに疲れているのか?
「どうして?」
「リユイさんが寝ていた時ソレイはほとんど寝ずに頑張っていたんですよ。獣人だ、って罵られながらも必要な物を冒険者から買ってきたりあなたが助けた男の子の親を探したりとか」
ソレイ・・・・・影ながら頑張ってくれていたんだな。
本当にありがたい。
「ソレイ」
ソレイの頭を撫でる。
「ありがとな。ゆっくりお休み」
ソレイはゆっくり目を閉じ、静かに喉を鳴らした。
宿にから出るとアレンがいた。
いったいなぜここが分かったのやら。
「リユイ!ここだと思ったよ」
「なんですか」
少々冷たげに言ってしまった。
だって魔人だと知って若干ひかれたことを少し根に持っています。
「なんだとはひでえな。せっかく知っている光魔法を教えてやろうと思ったのに」
あ、そう言えばそんな約束していたな。
そのためにわざわざ来てくれたのか。
「あ、そうなんだ。ありがと。でも今からリハビリがてらに討伐クエストに行こうと思うんだけど・・・・・」
「それなら俺もついて行ってやるよ。もし体に痛みが出てなんかあったらサラだけじゃどうにもなんないだろ」
確かに。
Aランクの冒険者が一緒の方が安心できるしその方が安全か。
あ、僕達もAランクだった。
いや、そうじゃなくて人数が多い方がいいだろう。
「じゃあよろしく」
「おうよ」
今回は俊敏なギャルでなく足が遅いダンゴムシが巨大化したような魔獣、ゴロムシと言うやつの討伐だ。
こいつは甲羅があるためなかなか攻撃が入りづらくひっくり返して刺すか、甲羅を割らないと倒せないと言うのは厄介だが危険度は一番低い。
リハビリにちょうどいい相手だ。
そして討伐場所はあの中央カマクラ山だ。
アレンが言うには山を越えなければ大丈夫ということなので問題ない。
それにしても先ほどから山を登っていると言うのに体が軽い。
魔素の濃度が高いからだろうな。
魔人っていいね。
「ここら辺だ」
先頭を歩いているアレンが立ち止まる。
身をかがめ当たりの様子を確認する。
十体ぐらいだろうか?
何となくだが大量の気配を感じる。
「俺が半数を殺るからお前たちは残りの半数を殺れ」
「了解」
アレンは片手直剣ではなく斧の心映武器を持っている。
まさかアレン、無形武器なのか?
後で聞いてみよう。
僕はハンマーを出現させる。
あれ?
手が震える。
何だろうこれ?
ハンマー重くし過ぎたか?
そう思い軽くしてみる。
それでも手の揺れが収まらない。
今度はハンマーを刀に変えてみる。
駄目だ。
何で?
どうして?
どうして止まらない?
「リユイさん、大丈夫ですか?」
後ろにいたサラが僕の様子を気にして声を掛けてくれる。
「おい、来るぞ!」
大量の巨大ダンゴムシがこちらに向かってくる。
どうやら気づかれてしまったらしい。
アレンがその大軍の最後尾へジャンプし、挟み撃ちにする。
手が震えながらも刀をハンマーに変え、叩きつぶそうとするが安定せず全く当たらない。
何で?
どうして?
クソ、止まれよ。
だが手の震えは止まることなく攻撃が安定しない。
そこに一匹のゴロムシが転がってきた。
完全にてんばってしまっていた僕はそれに気づいていなかった。
アレンが背中を突き飛ばされなかったら死んでいただろう。
「なにボーっとしている!危ないだろ!ちゃんとしろ!できないならあっち行っていろ!」
「ご、ごめん」
アレンの怒鳴り声で少し冷静になれた。
物理が駄目なら魔法でやろう。
そう思い聖なる矢を放とうとするが出てこない。
一本も、だ。
どうなっているんだ?
《体には問題がありません。よって精神的な問題かと》
精神的な問題?
《魔王との戦いで死んだことにより戦闘に極度の恐怖を感じその結果体が勝手に戦闘を拒否してしまいこうなっているのかもしれません》
なんだよそれ。
目の前ではアレンとサラがゴロムシを討伐している。
僕は何もできない。
どうして・・・・・?
「大丈夫か?」
アレンが戦闘を終えこちらへ来る。
サラも心映武器を消しこちらへ来る。
二人の表情は心配そうだ。
「ごめん」
「「・・・・・」」
二人は何も言わずただこちらを見ている。
「なんか僕さ、魔王と戦って死にかけたせいで体が戦闘を拒否するようになっちゃったみたいなんだ」
「やはりか」
「え?」
アレンは腕を組み話し出した。
「昔、魔王と戦かった勇者がいた。その勇者は魔王を倒したが死にかけたことによりそれから死ぬまで二度と剣を握れなくなってしまったそうだ」
「そんな・・・・・」
死ぬまで戦えない。
その言葉は僕を混乱させるのに十分なインパクトだった。




