第三十二話 カマクラ国王との面会
「魔人に転生することもあるのだな」
目の前の青年は王らしからぬ今どきの若者のような恰好をしている。
この世界ではこの国の独特な民族衣装となっているのだが、日本を知っている身としては何とも言えない。
見た目は普通の日本人。
特にイケメンでもなくブサイクでもない普通の日本人の青年だ。
だがさっきから僕の鑑定をさりげなく受け流している所からただ者じゃないことはわかる。
「どうやら僕、転生を失敗しちゃったらしくて。性別も無いんですよ」
「それは災難だったな」
目の前の王は哀れみのまなざしで僕を見てくる。
地味に見下している様にも見えるのは気のせいか?
「僕の名前は隆です。この世界ではリユイと言います。まだこの世界に来て二ヵ月です」
「私は滝沢博之だ。名前は変えていない。この世界に着て八十年だ」
「八十年!では異世界転生者は老けないということですか?」
「そのようだね」
老けないか。
イイね。
「ところで君はなぜわざわざ私に会いに来た?」
「同胞の者のよしみとして二つ許可してもらいたいのです。まず魔人である僕にこの国の滞在許可を直々に許していただきたいと言うのが一つ」
「いいだろう。もう一つは?」
「今後とも友好的な関係でいてほしい」
王は少し不思議そうに頭を傾ける。
「よっぽどのことが無い限り約束しよう。でもなぜそんなことを?」
「僕は魔人と人間とが共存して生きていく未来を造りたいんです。そこで僕とあなたの関係を手本とすれば少しでもやりやすくなるのではないかと」
「なるほど。だが、魔人と人間との共存など相当難しい・・・いや、無理だと思うぞ」
「それでも0%ではない。たとえ1%しかなくとも僕にとっては十分実現可能です」
数秒無言のにらみ合いが続く。
そして王が突然に笑い出した。
「そうかそうか。よし分かった。私は君に賭けてみようと思う。できる限りのバックアップをさせてくれ」
「いいんですか!」
王は頷き手を出してくる。
「共に魔人と人間が共存できる社会を造ろうじゃないか」
僕は差し出された手を強く握る。
「はい!」
こうして魔人と人間が共存する社会に大きな一歩が歩み出された。
「ところで、だ」
「はい?」
王の顔つきが鋭くなり僕の表情の変化を一瞬たりとも見逃さないと言っているかのような目線が僕が動くことを許さない。
がらりと変わった空気に僕は既に飲み込まれてしまう。
「君はどうやってこの世界に来た?」
「・・・・・コンビニ強盗に背中からサバイバルナイフで刺されて、です」
「そうか。で、その時何を思った?」
あの時確かユミに会いたいと思った気がする。
「幼馴染に会いたいと、思いました」
「その幼馴染はこの世界にいるのか?」
「分かりません」
王は軽く舌打ちをすると質問を変えた。
「じゃあ君が死んだのは何年の何月何日だ?」
「え~と、20××年の○月・・・・・何日かは覚えていません」
王は満足そうに頷くと紙に何かを書きそれを僕に渡した。
その紙を見てみると計算式のようなものが書き込まれていたがそれが何の計算式か僕には理解出来なかった。
「本来ならばこちらの世界で流れる時間と前世での時間の流れ方は異なり、前世で流れる時間の方が速い」
それは知っている。
世界説明に教えてもらったからな。
だからユミがこの世界にいる確率があるのだ。
「けれども君がこの世界に来てからは時間の流れ方が逆になっている」
「え?なんでそんなこと分かるんですか?」
「三日前転移者がこの国に来た。その転移者はここにくる前日に異世界転生していた、つまり既に君がこの世界に来てから2ヶ月しか経っていないのにも関わらず君とは違う月にこの世界に来たそうだ」
え?
それはおかしくないか?
あ、だからこそ時間の流れが逆になっている証明になるのか。
でもなぜ僕が来てからと思うのだろう。
「なぜ僕が来てからと?」
「計算するとそうなる」
成る程。
「それで僕との関連性を確認したいと」
「そうだ」
思い当たることはない、とは言い切れない。
もしかしたら僕が転生に失敗したのもそのせいかもしれない。
「僕が亜人になってしまった・・・つまり転生に失敗しらのと関係があるかも?」
「確かにそれはあり得るな。君の転生が失敗してしまった原因がそこにあるのかそれとも君が転生に失敗してしまったのが原因なのかはたまた全く別のことなのか」
うーん分からない。
いっそのことあの大樹にでも聞いてしまえば・・・・・そうだ!
あの大樹に聞いてしまえばいいのだ!
「転移した時に大樹に会いましたよね?その大樹に聞いてしまうのはどうでしょう?」
「それは無理だ。何せ大樹は東大陸に居るのだから」
「東大陸?この大陸とは違う大陸なのですか?」
「君、まさかこの世界の地形を全く把握していないのかい!?」
突然大声を出した王にビックリしながら頷くとまた王が「なんてことだ!」と声を張り上げた。
そして思いっきり立ち上がり壁を叩き出す。
ビクビクしながらその様子を見ていると壁が開き奥に部屋があることが分かった。
王に引っ張られその部屋へと連れていかれる。
部屋には大量の本が床に置いてあり壁には大きな地図が立て掛けられていた。
その地図には二つの大陸が書かれておりどうやら右側、つまり西側の大陸の方が僕たちが今いる大陸らしい。
「これは・・・・・?」
「私が書いた地図だ。今我々は西大陸の左側にいる。そして大樹がいるのは右側の東大陸だ。この東大陸には魔王が五人もいる危険な大陸でこの大陸に近づくだけでも危険なのだ!とてもじゃないがそんな危ないことはしてはいけない」
「はあ、分かりました」
「ついでだからこのままこの西大陸についても話そう。まず大前提としてこの西大陸の西側と東側は大きな森が橋のようになっていることでかろうじて繋がっている。そして今私達いるのは我が国カマクラ王国だ」
王は西大陸の東側の右端の真ん中を叩く。
「我が国の上には極寒の国があると聞く。そして我が国の下、そこには今はなき東聖国があった。更にその下には魔王国がある」
王は西大陸の東側を上、下、下の順で叩いていく。
「そして今度は西側の上、ここには機械に強い国がある。次その下はこの世界で一番進んでいる国がある。その下には様々なものを研究している国がある。その下に貿易国がある。そに左下には一番最初に出来た聖国がある。そしてその右下には西聖国がある。更にその下には魔王国がある」
今度は西側を順々に下へと叩いていく。
王の言葉だけで聞くと分かりづらいな。
王はハッとし、時計を見ると額から汗が流れる。
「もっと詳しく知りたいならばまた後日来てくれ。もう時間がない。それでは」
「あ、は、はい」
こうして僕はカマクラ国王との面会を終えたのであった。
外に出て待たせていたサラ達と合流した。
「どうでしたか?」
「やっぱり異世界転移者だった。なかなかいい人だったよ。はいこれ」
サラに滞在許可証と友好の証と言ってくれたこの国での買い物が全て半額になるカード(通称半額カード)を見せる。
「すごい!この半額カードは相当なことをしないともらえない幻のカードですよ」
へーそんなにすごいカードなんだ。
「少し目立ってしまうので高価な買い物をするとき以外は使うのは控えましょうね」
「はい、お母さん」
「お、お母さん?」
意外とサラはふざけたことを言っても真剣に考えちゃう人かも。
「狭い~暑い~きつい~」
サラが背負っているリュックから悲痛な声が聞こえてきて急いで僕らは宿を探した。




