第三十話 東聖国陥落その後
目を覚ますと天井が見えた。
上半身を起こし周りを見渡す。
僕が寝ているベッドの横にはサラが椅子に座りながら寝ていた。
この部屋には多くのベッドがありそこに怪我をしている人たちが寝ていることから恐らく病室だということがうかがえる。
なぜこんな所に?
確か魔王と戦っていて体勢が崩れた所を背中から刺されて・・・・・その後の記憶はない。
どうやって助かったんだ?
「う、うん?は、リユイさん!」
サラがお目覚めだ。
サラは涙を目に浮かべながら抱き着いてきた。
「良かった。本当に良かった」
「ありがと。看病してくれていたんだね」
「はい!」
「ニャ~オ」
少し身体を乗り出し、床を見てみるとソレイがいた。
「大丈夫ですか、リユイ様?」
「ああ。心配かけたな」
「いえ。リユイ様なら大丈夫だと確信しておりました」
「はは。そうか」
サラは抱き着くのを止め代わりにソレイがベッドの上に乗ってくる。
頭をなでてやると嬉しそうにゴロゴロ喉を鳴らした。
「目が覚めたか」
声の主を見るとオイトさんを少し若くし髭を剃りイケメン寄りにさせたような人がいた。
「私の叔父のライトおじさんです」
なるほど、これがオイトさんの弟か。
「大丈夫か?あれほど魔王から攻撃を受けていたのに」
「もしかしてあなたが僕を助けてくださったのですか?」
「そうだ」
「ありがとうございます」
ライトさんはベッドの横の椅子に座る。
「君が気を失っていた間のことや東アカレフ聖国がどうなったか教えよう」
「お願いします」
「まず、私はカマクラ国に魔王との戦争を起こすための兵を渡してもらい東聖国に帰還しているところだった。
だが帰還して見るとすでに魔王軍は東聖国を制圧していた。
唯一生き残ったのはわずか十名ほどだったよ」
アレンは大丈夫だろうか?
まあ彼なら大丈夫だろう。
何せ光の魔法を上級まで使えるからな。
そう言えばあの男の子は大丈夫だろうか。
ソレイがこうして生きているということはあの子も大丈夫だろうが少し気になる。
「私達は何とか魔王軍の半数を殺し退けることができた。
でも私はその時不思議に思ったよ。
なぜか悪魔達の力がどんどん弱まっていくのだ。
だがその疑問はすぐに解決したよ。
一体の獣人が背後に突然現れ私にこう言ったのだ、『私の主を助けてください』とね」
ソレイか。
やはり君はとても頼りになるな。
ありがとうよ。
「私は一瞬この獣人を殺そうと思ったが殺気を感じなかったので話を聞いてみると何と亜人が人間のために魔王と戦っていると言うではないか。
急いで獣人に居場所を教えてもらい言ってみると何と亜人が魔王の右目を切り裂いているではないか。
けど力尽きたのか倒れこんでしまっていた。
君が魔王に重症を与えてくれたお蔭で何とか君を救出することができたよ。
その後私は君と避難キャンプにいる一般人を連れてカマクラ国に来たと言う訳だ。
つまり今君がいるところはカマクラ国軍病院だ」
なるほど、どうも外の景色が見慣れていない訳だ。
「結局東アカレフ聖国はどうなったのですか?」
「崩壊したよ。とてもじゃないがあそこはもう人間が住めるような場所じゃない」
しばらく沈黙が続く。
だがその沈黙は突然に破られた。
「リユイ!」
アレンが病室の扉を物凄い勢いで開け放ち部屋の中を見渡す。
僕を見付けるとダッシュでここまで駆けつけてきた。
良かった心配したのがバカみたいに元気じゃないか。
「大丈夫だったか?」
「うん。この通り」
アレンは安堵のため息を吐き僕の頭をガシガシなでた。
なでるなよ。
「良かったよ。あ、そうそう、あの男の子は無事だよ。今はあの子のお父さんが見つかったので一緒に飯を食べている」
良かった。
父親は生きていたのか。
それにしてもかわいそうだなあの男の子。
母親が目の前で食い殺されたんだ。
すぐには立ち直れないだろうな。
「それとな」
アレンが真剣な表情で、小声でだが僕等にはしっかりと聞こえる声で話し始めた。
「聖国が消えたことで魔素の濃度が上昇し、魔物達が強くなったことは分かるよな」
皆が頷く。
え、わかんないんですけど。
《解説:魔素とは空気のようなに漂っている物です。魔法が使えるのは漂っている魔素に魔力を込めるからです。又魔人や魔獣は魔素の濃度により強さが変化します》
なるほど。
魔素は常に空気と同じように漂っている。
そしてその空気みたいに漂っている魔素に魔力をこめることで魔法を発せられる。
更に魔素の濃度が高ければ高いほど魔人や魔獣が強くなるってことか。
《そうです。そして聖国には魔素の量を抑制するクリスタルというものがあります。ですが今回それが破壊されたため魔素の濃度が高くなり》
魔人や魔獣が強くなっているってことか。
《そうです》
確かに少し強くなったような気がする。
気のせいかもしれないけど。
「そのせいでここら辺の魔人達が己の力を見せつけ他の種族の者を従わせようと戦争を起こし始めた」
「「な!」」
「戦争を開始し始めたのはオーク族とオーガ族、そしてウィズ族だ。基本的に中央カマクラ山に近づかなければ人間には関係ないが警戒してくれ」
「「了解」」
ウィズ族ってなんだ?
《ウィズ族とは魔法に優れた種族です。通常個体は日光に弱いため基本的には全身をローブで隠しており顔もフードで隠しています。ですが上位個体では見た目が人間とほとんど変わらなくなり日光を浴びても平気になります》
上位個体は人と見分けが付かないのではないか?
《その個体の持つ属性のイメージカラーの色の髪の毛や瞳を持つため魔法を使えば分かります》
なるほど。
まあ山に近づかなければ大丈夫ってことか。
「うん・・・・・?お前亜人か!」
突然アレンが今更なことを言い出した。
てか今まで気づいていなかったのかよ。
てっきり気づいていてわざと言わないでくれていたのかと思っていた。
「知らなかったの?」
「嘘、だろ」
アレンはそう言いながら後ずさりしだす。
「魔物じゃないから」
「本当か?」
「じゃなかったら宿で酒を飲んでいた時に殺しているよ」
「そ、そうか。ごめんな」
「別にいいよ」
慣れたよ。
それにしてもこの世界ではこんなにも魔人は嫌われているのか。
それほどに魔人は悪いことをしているのだろう。
けど多分お互い話し合えば理解しあえる気がする。
現にソレイ達獣人はこうして僕達とやっていけている。
いつかは人間と魔人との共存ができたらいいな。
第三章 終




