第二話 出会い
「う~ん」
身体がだるい。
何とか目を開けると先ほど大樹がいた森の中でないことがわかる。
身体を起こして辺りを見渡すとそこが原っぱだと分かった。
それにしても何で体がだるいんだ?
《解説:ラーチ(大樹)により強制転移された模様。
なおその時にかかる魔法やスキルの干渉に対し慣れていないため体にだるさを感じた模様》
なる程。
それにしても世界説明さん便利ですね。
「大丈夫ですか?」
そう突然後ろから声をかけられびっくりして飛び上がってしまった。
心臓止まるかと思ったぞ。
「あっ!ごめんなさい、驚かせてしまいましたね」
目の前には申し訳なさそうにしている少女がいた。
目の前の子はメイド服を着ておりそれがポニーテールにしている金髪の長い髪とよくあっている。
目は黄色く、背は僕より少し小さい。
優しそうで可愛い、またとても育ちがよさそうな人間だった。
だがその少女がしばらく僕の顔を見るととても驚いた。
「すごく綺麗ですね!」
え、そこ?
魔人だからビックリ!とかじゃないのか?
「そうかな」
「はい!とっても綺麗です」
いや、そんなにうっとりされて見られても。
「はっ!すみません。
ごめんなさい失礼しました」
なんか心でも読んだかのような反応だな。
「いや、別に大丈夫ですよ」
少女は顔を赤らめうつむいてしまった。
と思ったのもつかの間、彼女が突然また僕の顔を凝視して驚いた。
「あなたは亜人ですか?」
「は、はい」
おっ、やっと思ったとおりの反応が返ってきたな。
《推奨:少女との友好的な関係》
そんなこと言われなくてもわかってる。
「大丈夫ですよ、僕は何もしません。
安心してください」
「本当に?」
「はい」
少女は不安げにこちらを見てくる。
さて、どうしたら信用してくれるか。
《推奨:少女にどのようにしたら信用してくれるか質問》
そうだな、聞いてみるのが一番早い。
「どうしたら信用してくれるかな?」
「じゃあ三つ私のお願いに応えてください」
やけにすぐに具体的に答えたな。
「分かった」
なんだろうか?
「一つ目。
あなたはここで何をしていたのか答えて下さい」
なるほど、確かにそれは気になる所だろう。
こんな何もないところで一人だけでいたのだから。
ここは正直に転生してきたと、言うべきだろうか?
《推奨:転生者であることは黙秘。
転生者は様々な力を持っているため利用される可能性が高いです》
目の前の子はそんな事はしなさそうだけどな。
じゃあどうしようか。
思わず顎に手を当て考え込む。
そんな僕の様子を見た少女は何かひらめいたような顔をし、その瞬間母親のようにとても優しそうに微笑みながら何度も頷き僕を抱きしめた。
「ごめんなさい、こんなこと聞いて。
つらかったでしょうね、もう私が付いているから大丈夫ですよ」
うん?なんだかよく分からないが勝手に理解してくれたようなのでいいか。
それになかなか抱きしめてもらうのも気持ちいいな。
うん、わるくない心地だぞ。
「あなた、転生してきたのでしょう?」
はっ?言ってないのにバレタのですけど世界説明さん。
《推奨:これまでの事情を説明》
了解。
僕は転生してきたわけを簡単に説明した。
「それにしても何で分かったんですか?」
「なんとなく、ですね。
私を助けてくれた転生者の人と雰囲気が似ていましたから」
僕以外の転生者か。
少し気になるな。
「転生者に会ったことがあるのですか?」
「はい。
半年ほど前にご主人様の家から少し離れていたころ
獣人の魔物に襲われかけた時何処からともなく現れて助けてくださったのです。
私はその時初めて転生者というものを知りました」
なるほど、ご主人様と言っていたからやっぱり本物のメイドなのだな。
いやいや、そんなことじゃなくてその転生者気になるな。
結美ということはないと思う。
半年前っていていたし。
それに大樹が来てないとも言っていたし。
《そうは言いきれないかもしれません》
なんでだ?
《こちらの世界とあちらの世界での時間軸は少し違いがあります。
それ故に一日転生してきた日にちが違うだけでこの世界では一年たっている可能性があります。
それにもしこの世界に結美さんが来ていないとすればマスターがこの世界に来てしまった理由が分かりません》
すごく喋るね、世界説明さん。
説明ありがとう。
「ねえ、もしかしてその人って僕と同じぐらいの年の女の子?」
「え、同じ歳かは分からないですが声は女の人でしたよ」
もしかしたらあり得るな。
「そう言えばあの日を境にだんだん魔物が増えていきましたね」
《補足:魔物とは人に害を与える魔人などの動物のこと》
てことは僕も人に害を与えれば魔物ってことか。
それにしてもその転生者と魔物はなんらかの関係があるのか?
「大丈夫ですか?」
「えっ?ああ、ごめん。ちょっと考え事してた。もう大丈夫」
「そうですか。じゃあ二つ目のお願いは一緒に買い物に行ってください」
まだ信じてもらえてないのね。
「別に信じてないとかじゃないんですよ。
でもどうせなら最後までお願いきいてくれないかな~って」
やっぱり心読んでいるよね?
「別にいいですよ。と言うかこれからどうしようか困っていたんですよ」
「良かった!じゃあお願いします。
あっ!そう言えばまだ名前言っていませんでしたね。
私の名前はサラと言います」
「僕はえ~っと、リユイです」
危ない危ない、大樹から貰った名前を忘れるところだった。
「やっぱりネームドですね!」
ネームド?何それ。
《この世界では普通魔人には名前がありません。
ですが魔王などの高位の者から名前をもらうことがあります。
又、名前を持ったものは普通の個体よりも基本能力値が高くなり、特殊なスキルや魔法も得ます》
なんかゲームみたいだな。
でも、そうなると僕は名前を付けてもらったことでスキルを習得したんじゃないか。
《魔力や、筋力などと言った基本能力値が上がりました。
スキルは一応習得しているようですが使用できません》
なぜ使えない?
《体がスキルを使用するのに耐えられない可能性が高いためです》
ふむふむ、なるほど。
説明ありがと。
「それじゃあ行きましょう」
「はい」
サラさんに声を掛けてられて助かったな。
いや、待てよ。
やはり世界説明さんの言っていることは正しかったようだ。
僕、利用されちゃっているじゃん。