第二十七話 東聖国陥落(中編)
大量に魔力を使ったことで少し目眩がするがそんな場合ではない。
僕とサラは目を開けた。
すると空からは雨のように光の矢が降ってきていたることが分かり驚いた。
「スゲー」
アレンが呆然としながら空を見上げている。
「恐らくこれで大丈夫だろ」
アレンがそう言いながら近づいてくる。
だがその歩みが突然走りに変わった。
「後ろ!」
反射的に後ろを見ると顔をフードで、身体をマントで隠した者が先ほどの子供をさらっていくのが見えた。
〈神速〉で急いで追いかける。
顔をフードで、身体をマントで隠した者はうまく体や顔を見せずに屋根へジャンプし屋根から屋根へ飛んで逃げて行く。
僕とソレイも急いで後を追う。
追いかけながら周りを見るとそこらじゅうに灰がまっていることが分かる。
影人の消えカスだ。
ひたすらに走り追うが、距離が全く縮まらない。
離れるわけでもないのだが。
僕は子供を救うためひたすらに追いかけるのだった。
「恐らくこれで大丈夫だろ」
大規模な魔法を使ったというのに疲れた顔一つせず涼し気に目を開けるリユイに歩み寄る。
全く、なんて奴らだ。
そう思いながらリユイを見ていたら突然リユイの背後に顔をフードで、身体をマントで隠した者が現れた。
「後ろ!」
すぐさまそう叫ぶとリユイは振り返り走り出した。
初速からしてとんでもないスピードだった。
それにもかかわらず顔をフードで、身体をマントで隠した者は子供を掴みながら追いつかれることなく屋根に飛び、走っていく。
恐ろしいほど俺とは次元が違うことが目の前で起こっている。
横にいるサラも唖然としてこの光景を見ているにとどまっていた。
だがすぐに動き出し俺を見てくる。
「男の子はリユイさんに任せましょう。私達は一般人の非難を手伝いましょう」
そう手短に命令され、この緊急事態に対し冷静な判断を下すサラに思わず感心してしまった。
「あ、ああ」
俺はそう言うのがやっとだった。
一時間後
リユイはまだ戻って来ない。
一般人は首都の外へ避難させながら心配してしまう。
今は目の前のことに集中しなければいけないと言うのに。
サラは怪我人をヒールで治していっている。
先ほどの影人は魔王軍の者達ではないだろう。
数が少なすぎるし、魔王の配下は悪魔のみのはずだからだ。
けれど先ほどの顔をフードで、身体をマントで隠した者は魔王の一の配下。
それがどうにも引っかかる。
そう考えていた時突然地面が揺れ始めた。
この揺れは大勢の者が走ってきたときの揺れだ。
でも今周りで走っている人間はいない。
ふと魔王側の門の方を見ると大量の悪魔が地上と空から攻めてきているのが分かった。
顔をフードで、身体をマントで隠した者を追っていると首都の外の森に来てしまった。
国を囲む壁はソレイからコピーした〈超脚力〉で飛び越えた。
森の中に入り少しして突然ターゲットを見失ってしまったのは参った。
けど少し先を見ると先ほどの男の子が寝転がっていたるのに気づき急いで近づこうとするができない。
僕はご存知の通り体力が無いので息をきらしていたせいだ。
ソレイは全く疲れたそぶりを見せず周りを警戒している。
「お前が危険因子の異世界転生者か」
「・・・・・!」
突然木の陰から恐ろしい量の魔気を放つ背の高い忍者のような装備を着た魔人が現れた。
何故異世界転生者と知っているんだ?
それに前から気になっているが危険因子ってなんだ?
「お前は?」
「我が名は魔王カゲイン。お前に決闘を挑む」
魔王と名乗る男は手の甲から心映武器を出現させた。
文字通り手の甲の皮を突き破って刃が出てきたのだ。
魔王の心映武器は短剣だった。
なぜ僕に決闘を申し込む?
けど断るわけにはいかない。
ソレイに小声で話しかける。
『ソレイ。僕が魔王と戦って時間稼ぎするからその間にあの子を』
『了解。リユイ様、くれぐれもお気お付けて』
『わかってる』
僕は魔王に向き直り刀を出現させて構える。
「ほう、魔王相手に冷静とは肝が据わっているじゃないか。それでこそおびき寄せた甲斐があると言うものだ。そのガキは返してやるよ」
そう言うと魔王はソレイに向かって子供を投げる。
何とかソレイは背中で子供を受け止め来た道を引き返していく。
「では始めようじゃないか」
その魔王の冷徹な声により僕の初めての死闘が始まった。
「う、嘘」
サラが目の前の悪魔の集団の圧倒的な強さに絶望している。
「サラ、落ち着け。君は一般人の安全を確保してならべく遠くに速く逃がせ」
「アレンさんは?」
「俺は戦う」
サラは何とも言えない表情で俺を見てくる。
「大丈夫なんですか?」
「フッ、この国をなめちゃ駄目だぜ」
その声と共に一般人と悪魔軍団の間に白い格好のロッドを持った魔法使い達が現れた。
そして悪魔達に聖なる矢を発射し進行を妨げ始める。
そしてその魔法使い達の前に魔法剣の心映武器を持つ聖騎士達がいつの間にかおり、悪魔達に一斉に走り出した。
それらの更に後方では魔法砲と言われる大量の魔力を使った魔動機械である魔動大砲を空飛ぶ悪魔へと放つ。
それに負けじと避難誘導していた冒険者達も各々の武器を構え悪魔へと走り出していった。
「な、大丈夫そうだろ」
「死なないで下さいよ」
棒読みだ。まあいい。
「おうよ」
俺はそう返し剣を構えた。




