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廻る乖離転生  作者: 朔
第三章 東聖国陥落編
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第二十五話 前を向いて生きて行こう

「そう、そんな事が」


僕達はギルドに戻ると今まであった出来事を話した。

メアリーさんはキャシャさんと一言二言話すともう出ていってしまった。

呼び止めようと思ったがキャシャさんに止められ何があったのか聞き出されて今に至ったのだ。


「とりあえず今は放っておくことね。冒険者にはこう言うことはつきものだから覚悟はできていたとは思うけれどいざ目の当たりにするとああなっちゃう人が多いのよ」


そう言うキャシャさん自身もそのようなことを体感したことがあるかのような表情を浮かべている。


「まあ、君たち二人もあまり気を落とさないようにね。仕方なかったんだから」

「はい」


はい、とは言ったものの本当はそうではなかったのではないかと心の中で誰かが言っている気がする。

お前がもっと速く動いていればシュルさんとニックさんは助かったんじゃないか?

その考えが頭の中をぐるぐる回る。

結局なんだかんだ言ってAランクになってしまった。

それに報酬もしっかりもらい。

魔石も売ってお金が余分に出来た。

なんだか昨夜アレンに飲まされたお酒がとっても飲みたい気分になってしまった。


「ねえ、サラ」

「私もお酒飲みたいです」


僕が酒のお誘いを言う前にサラは頷いたのだった。



僕とサラはソレイを宿屋に置いたあと、酒場へと足を運んだ。

酒場には活気があった。

酒を飲んでいる者は誰でも皆愉快に笑い合っている。

そんな中僕達二人は暗く静かに酒を飲んでいた。


「リユイさん」

「なに」


サラはビールに映る自分の顔を眺めながら喋り始めた。


「私達、どうすればシュルさん達を助けられたのでしょうかね」

「・・・・・」


サラの手に力が入ったのだろう、ビールに映ったサラの顔が細かく揺れている。

僕はサラの言葉に返す言葉が無く黙ってしまう。

僕もそれは何度も考えた。

シュルさん達にも魔石の回収を協力してもらい近くにいてもらっていれば助けることができたのでないか?

もっとしっかり僕が動いていればあんなことにはならなかったのではないか?

あの時世界説明に話かければもっとうまくシュルさん達を助けられていたのでは?

だがどれも過ぎたこと。

今更考えても過去は変えることは出来ないのである。


「リユイさん。シュルさん達の最後を聞かせてもらってもいいですか?」

「たぶん聞いていてつらいだけだと思うよ?」

「リユイさんだけにつらい思いをさせたくないです」


サラはビールの中に映る自分から目を放し僕に真剣なまなざしを向けてくる。

サラさんはまだ酒を一滴も飲んでいない。

そう言う僕もまだ口をつけていないのだが。

僕は覚悟を決めると静かに口を動かし始めた。


「僕はメアリーさんの指差す方に行くとニックさんとシュルさんが何かを守りながら泣きわめき戦っていた。その何かを見てみると首がおかしな方向に曲がって死んでいるエマさんがいたんです。恐らくあの首の曲がり方や体の破損状態から言うとエマさんはモンスターに首を殴られ・・・・・」

「そんなことを聞きたいんじゃないです!」

「・・・・・ごめん」


サラは目を潤ませ怒鳴り、ビールの入ったカップをギュッと握りしる。

今にも泣き出しそうな顔をみると僕には謝罪の言葉しか出てこなかった。

しばらく無言が続くも何とか話を再開させる。


「・・・・・そのあとシュルさんが頭を殴り飛ばされニックさんがその頭と胴体をくっつけようと頑張っている最中後ろからモンスターに喰われた。僕は目の前の出来事に理解が追いつかなくてただ見ているだけで精一杯だった」


とうとうそこまで聞くとサラの目からは涙が流れた。

サラはその涙を拭いビールを一気に口にする。

本当は涙を隠したかっただけなのかもしれない。


「サラ、そんな一気に飲んで大丈夫?」


するとサラはコップから口を放しプハーと息を噴き出した。


「ソレイさん!」

「うん?」


サラはコップを机に音をたて置くと目から流れる涙を袖で拭い僕を真っすぐに見つめた。

サラは泣き笑いしていた。


「飲みましょう!そして前を向きましょう!あの時こうしていればとか、私のせいだとかグダグダ済んだことを言っていても気がめいるだけです。前を見ましょう。シュルさん達もきっとそれを願ってくれていますよ。シュルさん達は私達のことを空からきっと見てくれています。だからシュルさん達に冒険者として恥ずかしくないような姿を見せ、胸を張って生きていきましょう!」

「・・・・・サラ。そうだな。前を向いて生きて行こう!」


サラの涙はとても綺麗で、そしてとても暖かかった。

僕もビールを飲み干しお代わりをサラの分含め注文する。


「・・・・・!誰かと思ったらあんた達か」


突然声を掛けられ誰かと思うとその声の主はグラッドおっちゃんだった。


「グラッドさん!」

「おうおう、二人とも泣いてどうした? 美人が台無しだぞ」

「ハッ」


酒に酔ったグラッドおっちゃんの戯言を鼻で笑うと、僕は今日あったことを話した。



「そうかそんなことが」

「はい」


またなんとなくしんみりした感じになってしまった。


「俺は昔、と言っても数か月前だがキャシャとあともう一人クッキーって奴とパーティーを組んでいてな。とあるモンスターの討伐へ行ったんだ。だが運悪くギャルの群れに遭遇してしまってなその時この怪我をした」


そういいグラッドおっちゃんが杖で自分の足を軽く叩いて見せた。


「キャシャも怪我をしていた。だがそんなピンチの時ドンギャルが来た。俺とキャシャは絶望して諦めた。だがクッキーは違った。諦めるな、生きろって。あいつは既に目も失明し、片腕も無かったのに必死に時間稼ぎしてくれて俺たちを生かしてくれた。あいつがいてくれなかったら俺は今ここに居なかっただろう。俺たちはあいつが死んだが泣かなかった。・・・・・だって、な。あいつ別れる最後の最後で『笑って楽しんで俺の分まで生きてくれ。そしたら俺はあの世で笑ってられるよ』って言ったんだ」


グラッドおっちゃん・・・・・。


「だからな。今はつらくても笑え。そして楽しめ。この理不尽な世の中をよ。そしたら死んだ者達も浮かばれる」

「はい」


グラッドおっちゃんの励ましに応え僕は何度も頷き、泣き、そして笑った。

こうして僕の心に残っていた苦しみは確かに奥底にはあるけれど、それを覆い隠すようにシュルさんたちの笑顔がそこにあった。


「うん?おっリユイじゃねえか」

「おお、アレンら~」


アレンが笑いながら近寄ってくる。

それを見つけたサラは気さくに笑いかけながらアレンを指差し愉快に話だす。

今こうして考えるとこれが正しい酒場でのあるべき姿なのかもなと思う。


「おら、何泣いてんだ」


アレンが優しく僕の頬に流れる涙を拭ってくれた。


「ほらもっと飲め!」


こうして僕達四人は夜中まで酒を飲み明かしたのだった。



宿に帰るとなぜかアレンがついてきた。


「スマンが今日も寝させてくれ」

「やですよ」

「酒を奢ってやったんだからいいだろ、つれねえなあ」


アレンはなんだかんだで勢いに任せて無理やり部屋へ入っていく。


「そろそろここを出ないと」

「あん?なんでだ」


僕が小声で漏らした言葉をアレンは聞き逃さなかった。

アレンは全く分からないといったとぼけた表情でこちらを見てくる。

前にも言ったはずなのだが。


「そろそろこの国に魔王が攻めてくるそうだからです」

「ああそれか。まあそう言うことなら明日にでも逃げた方がいいぜ」


突然アレンが真剣な表情になる。


「どうしてですか?」

「この国首都の近くにもうすでに魔王軍が来ている。今日行った会議で教えてもらったんだよ。しかも魔王の一の配下の奴らしき者をここらで見かけかけた」


もしかして結美か?


「それってもしかして顔をフードで体をマントで隠している奴ですか!」

「ああ、そいつだ。完全に肌を見せてねえから体の大きさとか顔とかが全くわからねえ。強力な魔気を纏っていたらしい」


結美・・・・・ここに居るのか?

それとも違う転生者か?

どちらにしても接触する必要がありそうだ。


「で、どうするんだ? 逃げるか? それとも逃げずに俺たちと一緒に戦うか?」

「僕一人では決められません。明日仲間と考えます」

「まあ、どちらにしても魔法を教えている場合じゃないか。生きてまた会ったら教えてやるよ」


アレンはその場で寝転がりると数秒で寝てしまった。

ふと窓の外を見ると輝かしい星が空一面に広がって見えた。

あの星の三つはシュルさん達なんじゃないかと思う。

そんなはずはないのだけれど。

だが確かに言えることはある。

それはシュルさん達は僕達の心の中で見守ってくれているということだ。

このことを忘れないで生きていこう。

その思いを胸に、僕はベッドの中に潜り瞼を閉じたのだった。

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