第十話 襲撃に備えて
「成る程、そんなことが」
オイトさんに事の一部始終を聞いてもらった。
「満月の夜となると明後日ですね・・・・・分かりました、戦闘の許可をしましょう。ですが私も参戦します」
「え、オイトさんも?」
「はい、獣人は私の敵でもありますから」
オイトさんはそう言うと椅子から立ち上がった。
獣人は私の敵って?
一体過去に獣人に何をやられたのだろうか。
「ですがその前に」
そして書斎の中で一番大きい本棚に入っている一冊の本を少し引き出す。
すると地面が揺れだした。
ビックリし辺りをキョロキョロする僕とキョトンとするサラさん。
と言うことはサラさんもこのことを知らなかったように思える。
「オイトさん、これは?」
「外を見てごらん」
そう言われ外を見る。
先程まで原っぱでしかなかったところが所々様々な罠へと姿を変えていた。
「凄い」
思わず口からその言葉が漏れる。
もはやこれがあるのならば僕は必要なくないか?
まあ僕は優しさで雇ってくれているのだろう。
それにしても何故今出したのだろうか?
「君達は森で訓練をしてきなさい。私はこの罠を点検するから」
「分かりました。でもなんで今出したんですか?」
「森の中で訓練をしているときにこの音が聞こえてきたら敵襲かと思って戻ってきてしまうでしょう。それに今出した方が君達にもこういう物があると知ってもらえるからね」
「はあ、分かりました。では行ってきます」
こうしてオイトさんに報告をすると僕達は訓練をしに森へと入っていくのであった。
いつも僕が世界説明に訓練をしてもらっている所へ着いた。
「サラさんはどれぐらい戦闘が出来ますか?」
「そうですね・・・・・」
恐らく魔法は使わないと思う。
あんな荒々しい魔力は思うように使えないだろうから。
そうなると武器を使うだろうが・・・
そう考えている時に僕の足らへんに向かってサラさんが突然何かを投げた。
瞬時に避ける。
だがどうやら僕を狙っていた訳ではなかったようだ。
先程まで僕がいた所の横を見る。
するととても短いナイフが小さいヤモリらしき生き物を地面に串刺しにしていた。
あ、このナイフさっき研いでたやつだ。
それにしてもあの一瞬で・・・・・凄い。
「・・・す、凄いですね」
「メイド術です」
「め、メイド術?」
「はい。ご主人様の敵を即殺する事によりすぐにご主人様をお守りするための術、です」
「そんなものが・・・」
「まあ私が勝手に考えたものですけどね」
今はその笑みがとても怖く感じます。
「よかったらリユイさんも殺りますか?」
何か漢字間違ってる気がする。
気のせいだろうか?
でもまあ新しい攻撃手段を得るのはいいことに違いない。
そのメイド術とよやら、修得しようじゃないか!
「お願いします!」
「よろしい。ではこれに着替えてください!」
「え」
そう言い目の前に差し出されたものを思わず凝視してしまう。
メイド服だ。
「これはメイド術を習うのに必要なものです!ぜひ、ぜひ着ている姿を見た・・・ではなく着てください!」
さりげなく今自分の欲望をいいかけましたよね?
でもなぜ僕にそんなのを着せたがるんだ?
・・・あ、よくよく考えてみればサラさんは僕のことをモデルさんのように思っていている的なことを前に言われた。
つまりサラさんは僕をそう言った存在として見ていると言うことになる。
そうすればおかしくないか?
「わ、分かりました」
僕はしぶしぶメイド服を着る事にした。
着た。
案外この顔だと似合ってしまっている。
それにサイズもバッチリ・・・サラさんちょっと怖いです。
「す、凄い!すっごく似合ってます!」
「はあ」
「では早速始めましょう!」
そして3時間後
目の前にヤモリのようなものがいる。
そこめがけて袖に忍ばせた小型投げナイフを投げる。
すると目の前のヤモリは地面へと串刺しになった。
やっとできた!
この術は驚くべき事にスキルではなかった。
そのため修得するのに時間がかかってしまったが粗方覚えることができた。
メイド術というよりは瞬殺術と言った方がいいと思う。
「よし!これで私の教えることは全て教えました。この術はどのような場面でもご主人様を守るためのものです。それを忘れないように!」
「はい!」
メイド術はこの瞬射投げナイフ以外にも様々な術があるが今回はそれは省かせていただこう。
いや~それにしてもなかなかいいものを教わった。
これでサラさんの戦闘能力も測れたし一石二鳥。
では帰りますか。
《推奨:心映武器を使用できるか質問》
え、普通使用できるんじゃないの?
《心映武器は必ず出せると言うわけではありません》
へーそうなんだ。
知らなかった。
「サラさんって心映武器出せる?」
「心映武器?なんですかそれは?」
「え!知らないの?」
知らないなんてことがあるのか。
これは想定外。
一から説明するか。
「心映武器っていうのは自分の心を映し出す武器みたいなもので、人それぞれによって武器の種類が違うんだ」
「へ~。私のはどんな武器ですかね?」
「出してみれば分かるよ。出してみて」
「どうやってやるんですか?」
首をかしげるサラさん。
どうやってか。
説明するのは難しいな。
「なんかこう自分の目の前に筋力とか魔力とは違う不思議な力を集めて圧縮させる感じ?」
「良く分からないです。でもやってみます」
サラさんはそう言うと両手を前にだし踏ん張り始めた。
だが一向に心映武器が出てくる気配はなく時間だけが過ぎてゆく。
彼女には素質が無いのだろうか?
《いえ、どうやら何かが心映武器出現を阻止しているのかと》
何かってなんだ?
彼女の魔力とか?
《いえ、心の方かと》
心、か。
厄介だな。
「サラさん、なんか刃物に対する恐怖とかある?」
「いえ、そういったものはないと思いますが」
じゃあなんだ?
《本人が意識していないだけで心の奥底で心映武器への恐怖心が植え付けられているのかもしれません。今現在心映武器を出現させることは不可能かと》
分かった。
今回は一旦あきらめるか。
「サラさん、今は一旦止めておきましょう」
「・・・分かりました」
サラさんは悔しそうに両手を下ろす。
「今日はうまくいかなかっただけかもしれないから落ち込むことは無いよ」
その一言で心なしかサラさんの表情が少し元気が戻ったように見えた。
こうして僕達は今日の訓練を終えたのであった。
あ・・・・・このメイド服、どうしよう。




