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生きる

作者: P2

 産まれて来なければよかった。

 産まれても、どうせ、死ぬ。早く死のうが、老いて死のうが、死ぬ以外ない。

 なら、今、死んだとして、さして変わらない。


 『産まれてよかった』なんて、どうしたら、そう考えられるのか。世の中にはそう考える人がいるのだけど、本心で言っているのだろうか。強がりじゃなくて、本当にそう考えている人にあったことがないから、分からない。


 公園の木陰のベンチで一人。考えていた。

 目の前の鳩が、なんの警戒もなく、近づいてきて、ガサガサと葉っぱを突きながら、一心不乱に地面から獲物を採っていた。生きるために食べている以外ない。感情がない、まるで機械のように繰り返し、繰り返し、地面を突いていた。

 動物は自分の生をどう考えているのだろう。たぶん、死ぬなんて考えている動物はいない(もしかしたらいるかもしれない)

 僕もそういう風に考えることができたらいいのに、と思ってしまう。ただ生きることのみに没頭する動物のように、生きられたら、こんな暗い気持ちにはならないだろう。

 

 おばあさんが、腰が曲がって、歩きづらそうに、前を横切った。バンダナと頭に巻いていた、その姿は、つい先ほどコンビニエンスストア内で見かけた人だった。

 数分前の出来事だ。僕が公園に向かう前に立ち寄ったコンビニで、そのおばあさんがチルド弁当と飴を購入しようレジに向かう姿を見ていた。一人でレジに立つ姿は、孤独そうに見えた。夫に先立たれ、子に見捨てられた、ことを容易に想像できてしまい、僕は、言葉にできない悲しみを抱いた。

 

 僕の両親や妻が、もしこのおばあさんのように、一人で生きるようになったとして、『幸せ』と思えるだろうか。

 僕の母は、いつも、必死に働いているように見えた。僕の父がリストラされてため、看護師であった母は、一家の大黒柱となった。もし、苦労した先が、この孤独だとしたら、絶望だ。もし、僕が母の立場だったとしたら、精神を耐えられる自信がない。

 僕の妻は、幸せになるために、僕を選んで結婚してくれた。もし、その選択の先が、この孤独だったとした、本当に、悲しくなる。

 

 首の太い体の大きい鳩が、そうでない鳩の後ろを追いかけていた。縄張りを争っているようにも見えたが、前者がひたすら、後者をひたすら追いかけている姿は、野生的な要素を感じさせた。これは求愛行動だと、ネットで調べて僕は初めて知った。

 動物が子を残す理由。それは種を残すことだ。もっと強調するなら、自分の遺伝子を残すことだ。

 人もそれだけなのだろうか。

 

 今まで受け継がれてきた無数の命の襷。辿り着いて先は、僕のこの思考回路だ。僕の考えはどこに消えるのか。否、消えない。僕の考えは、子が学び、さらに孫に伝えられる。

 ならば、幸福も繋がるのでないか。

 

 『産まれて来てよかった』と言えるような子を育てる。それが僕が「産まれてきてよかった」と思える方法の一つだと気づいた。

情報化が進んだ現代では、そういうふうに育てるのは難しいとの意見もあります(そもそも僕らがそう育ってしまったように)

なら、種子島とか、情報が飛び交わない南の島に行きましょうと提案します。

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