5
*
あのときの絵で、私はちょっとした賞をもらった。お礼に何か持っていこうかと思ったけれど、結局やらずじまいになってしまい、あの青年にもう一度会うことはなかった。
そして、バタースコッチ。母に聞いても、作り方や、売っている店が分からず、あれから、一度も口にしていない。あの美味しさが懐かしく、自分でも何度も探してみたけれど、やはり見つからなかった。
「おっ」
この雑誌の今回は、イギリスだそうだ。なにか目ぼしいものがあるかと読んでいると、
「あっ」
ページの隅っこに“バタースコッチ ”の記述があった。歴史やお店の説明を読み終わると、あとに、小さく紹介者の名前と連絡先があるのを見つけた。
「画家……」
そして、写真の欄を見て、思わず笑ってしまった。
「どうしてイタリアの絵をここに載せるんだろう……」
なんだか、あの人らしいなと思った。
*
今日は用事ができた。大事な大事な用事だ。
まずは、この店に行って、念願のバタースコッチを買う。
そして、あの人に、電話を掛けるのだ。
――もしもし、こんにちは。
――今日は、イギリスの匂いがしますね。
Fin
*あとがき*
バタースコッチが食べたい! 食べたいんだ! という思いから生まれたお話です。それ以外には何もない。ただただバタースコッチ‼
事の発端は祖母のイギリス土産でした。正直に言うと、私はフランスのマカロンのほうが楽しみでした(祖母は一週間でフランスとイギリスの観光地をめぐるハードな旅行をしていました)。ですが、マカロンはなぜか飛行機では「液体」扱いになるらしく、ややこしいので買ってきてもらえなかったのです。そんな中、失意にくれる私の前に、現れた天使! それが「バタースコッチのビスケット」なのです!
イギリスと言えば、ご飯があまりよろしくない(小声)イメージがあるかと思いますが、その常識を覆す美味しさ! 正直、フランス土産のチョコチップクッキーよりも美味しかったです。
だが、しかし。一度幸福を味わったはいいものの、これは「お土産」……。日本では、食べられないのです……。そして、そんなにしょっちゅうイギリスに行く知り合いは、いない……。でも、食べたい! やっぱり食べたい!
そんな思いが勢いあまってお話になった感じの今作でしたが、いかがだったでしょうか。正直、二日で書いたのでクオリティはまったく保障しませんが、バタースコッチへの愛だけは詰まっています。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。