表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

1

初投稿です。

まだ勝手がわからないので、不都合な点があればご指摘いただければ嬉しいです。

感想、評価していただけたら飛び上がって喜びます。

特にすることもなく、暇な雨の休日に、ぱらぱらと雑誌をめくっていると、無性に食べたくなるものがある。

 けれども、その作り方も、売っている店も知らないので、ただただ思い出すことしか出来ないのが歯がゆい。

あの時、口の中に広がった、あの味、あの香り、あの食感。


――そして、あの人の、無言の背中。


 *


 夏休みも終わりに近づき、小学生の私は焦っていた。宿題が全然終わっていなかったのだ。連日近所の図書館に駆け込んで、あらかたやり終えたのが、夏休み終了間近の、午後二時。残りは絵画の課題だけだったので、私は家に帰ることにした。


 図書館から家までの道のりは、私の目にまるで異世界の様に映った。薄暗い雑木林を抜けて、立派な洋館を通り過ぎると、ようやく私の家がある住宅街につく。三十分程度の道のりだったけれど、通学路しか知らない幼い私には、永遠の冒険のように思えた。


 その日は、朝から透き通った青空が広がり、雲は太陽に遠慮していたのか、姿が見えなかった。それだから私は、傘を持っていなかった。


 空模様が変わり始めたのは、雑木林の中、せみの音にうんざりしていた時だった。白く巨大な雲が木々の間を覆い尽くしたかと思うと、すぐに雨粒がぽつりぽつりと落ち始めた。そうして気がつくと本降りになり、土砂降りと言えるほど激しくなっていった。


 私は夢中で駆けだした。折角やった宿題が濡れてしまう。それに、わざわざ買ってもらった画用紙を、濡らして駄目にしてしまう訳にはいかない。


 けれど、三十分の道を、走って帰るのは無理があった。とりあえず、雨宿りできる場所を探そうとして、辺りを見回すと、建物らしい建物は、あの立派な洋館だけだった。何となく近寄りがたい雰囲気だったので、普段は早足で通り過ぎていたが、背に腹は代えられない。私は思いきって、洋館へ向かうことにした。


 洋館の玄関についたとき、私はもうすでに濡れ鼠の状態だった。鞄もびちょびちょで、中身がどうなっているかは考えたくなかった。途方に暮れて、扉にもたれかかったとき。


 ぎいっと気味の悪い音を立て、扉が後ろへ下がった。


 そして、覆い被さるように響いた、低く、黒い声。


「貴様……」


 そこで、私の意識は途切れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ