第七話 出会いイベント? 6
……忘れてました。
なにをって?
がむしゃらに走って温室に辿り着いたんだってことです。
来た道がわからないんだから、校舎の方に行く道がわかるはずもない。
あと20分で入学式で、それまでに講堂に行かなきゃいけないのにぃ。
私は走りながら、腕についた時計を見て、その事実を認識すると絶望した。
辺りを見回しても別館だからか今は人っ子ひとりいない。
そりゃそうです。もうちょっとで入学式だもんねー。
引き返す?そんな考えが私の脳裏を通り過ぎたが、会長様と一緒に行くか、ひとり迷ったままいるかの二択の選択だと、やはり後者を選ばざるをえない。
なにせ目立つ。ここ重要。
近くでヒロインちゃんと攻略対象者、もといキラキラ族との展開を楽しみたいっていう気持ちがないわけじゃないんだけど、傍観ライフを目指す私には目立たないことを目標に学園生活を謳歌したいんです!
注目は断固拒否です!
それに、ヒロインちゃんも遅刻組だったはずなのだ。生徒会メンバーとの出会いは残念ながら発生しなかったから、シナリオ通りなのかわからないが、次に訪れる風紀委員メンバー達との出会いはまだあるかもしれない。
期待はできないけど、賭けてみる価値はある。
うぬぉー、私としたことが抜かったわ。
なんで早く気付かなかったんだろう。
どうかお願いだから、ヒロインちゃん、まだそこにいてー!
それ以前に、式まで間に合うのか私!
いや、弱気になっている場合ではない。
ヒロインちゃんを見つけるまでは私の学園生活は始まらないのだから。
いざ、行かん!
ーーーー結衣!
あれ?今、幻聴が……。
せっかく乗ってきたところなのに、なんだか嫌な予感……。え、まさか。
「結衣!!」
今度ははっきり響く私を呼ぶ声。
いやいや、幻聴、あれは幻聴、そうに決まってます。
誰かそうだと言って!
気のせいであれと後ろを振り返ってみれば、やっぱりさっきまで一緒にいたまさかの会長様が。
遠目に追いかけてきてるのが見え………………?えっ、見え、……たのに?
ぅえぇぇぇーーー、はやっ!
私は驚愕の速さを見た。
豆粒くらいに見えていた会長との距離がもうすでに20mくらいに差し掛かろうとしている。
ビュンッという効果音が付きそうな程の速さだ。
だというのに息切れもしていない。
必死の走りでもカッコイイとはこれいかに。
やはりキラキラ族はハイスペックである。
ってか、なんで追いかけてくんのーーー?!
補佐にならなくていいって了承してくれたから、もう用はないはずですよね?!
会長様と目が合ったら、「待て、結衣!」と叫ばれた。
なぜ追いかけられねばならないのか、さっぱわからんが、捕まったら最後、私の学園ライフはBADENDになる気がする。
それに、追いかけられたら逃げたくなるのが人の性!
頭の中でカーンと闘いのゴングが鳴り響いた。
会長との視線をすぐさま逸らし、臨戦態勢という名の本気モードの走りに切り替える。
私は持ち前の運動神経を発揮して、全力疾走した。
とりあえず、私は走る!
誰かに会えればなんとか(俺様腹黒会長モードじゃなく)なる、はず!
ーーーーとか考えてた私がバカでした。
ゼーハー…ゼーハー…ゼーハー………。
「おう、また会ったな」
な…、ななな…なぜここに!!
会長様との追いかけっこが予想以上に疲れて息が上がり声が出ない。口をパクパクさせて絶句中。
後ろからは会長様の走る足音が大きく響いてきていた。
やっと撒けたところなのにー!
前にいらっしゃるかの人に退いてくださいと言って、はいどうぞとやすやすと道を譲ってくれるわけがない。
なんてタイミングの遭遇!
またもや風紀委員長様と出くわしてしまうとは。
どうやら風紀委員長様は校内を見回っていたらしい。
「……結衣」
動くに動けず固まったままの私を、ジトッと風紀委員長様に見つめられる中、後ろから会長様からお呼びがかかる。
会長様はコツコツとした靴音を鳴らし、緩やかな足取りに変わっていた。
こっちも追いつかれた!
というわけで、ただいま私は、後ろは会長様、前は風紀委員長様という前後に挟まれてしまったわけです。
南無。
改めて状況を整理して言えば、校舎を目撃し、どうにか別館から校舎へ辿り着けそうだと喜んだはいいものの、渡り廊下を走ってる途中、校舎側にいた見回りにきた風紀委員長様と出会し、反対の別館側に追いつかれた会長様がいるという、前後にしか道がない逃げ場を失ったところであります。
「さっきぶりだな」
まるで、俺様から逃げたこと忘れてねーよな?という目で口角を上げた風紀委員長様に睨まれる。
無言の笑顔、怖い。綺麗!でも怖い!!
蛇に睨まれた蛙ってこのことを言うんですね。
続く言葉はなく、しばし沈黙が落ちる。
目を逸らしたら確実に殺られそうです。
さすがです。
見つめ合う中(目をそらせないだけです)、突然後ろから発せられた低い声にビクッと驚いた。
「結衣」
グイッと会長様に強引に腕をひかれ、振り向かされた。
やっぱり、こっちも逃げたこと怒ってるー。
会長様の顔を直視できず、かといって風紀委員長様に目を向けることもできず、どこを見ればいいんだーと視線が彷徨う。
しかし、できるだけ目を合わせないようにしていた私には、会長様が睨んでるのは私ではなく、風紀委員長様であることに気づくことはなかった。
切りがいいのでここまでの更新です。
なかなか式が始まらない。
次は再来週あたりに更新できそうな予感…。
ついにあの人が!




