第四話 出会いイベント? 3
風紀委員長から逃げ切った私は、どういう訳か目的の温室まで辿り着いていた。
わけも分からず走っていたら見覚えのある建物が見えたのだ。
ラッキー!
早くしないとイベントが始まっちゃう。
逸る気持ちを抑え、荒げた呼吸を整えつつ私は入り口のドアをそっと開ける。
中を覗くと、まだ誰も来ていない。
よし、イベント前に着けたみたいだ。
内心でガッツポーズをきめる。
周りを見渡して、2階に行ける階段を見つけると、上ったところに、ちょうど階下を覗けて入口からは草花で覆われて見えない場所があった。
私はそこにしゃがんで隠れることにする。
準備は万端。
あーもう、ワクワクが止まらないよー。
さあ、いつでも来てくださいな!
私は朝から待ちきれなかったイベントにドキドキしている鼓動を抑えきれず、まだかなー、まだかなーとソワソワしながら待つ。
少しすると、いくつかの足音が聞こえ、徐々にその足音は大きくなり、話し声も聞こえ始めた。
きたっ!
そう思った瞬間、温室のドアが開いた。
「煌希そろそろ時間です。君がいないと始められない」
「ったく、面倒だ。帰るか」
「い〜ねい〜ね!どこ行く!?」
「……周」
「ごめんって。健吾、そんな睨まないでよ、冗談だろ〜」
「騒がしいのが嫌なのはわかりますが、ここは我慢しないと」
「あ〜、入学式とか本当ウザい」
不機嫌な男に、後ろから式へ行くよう促すのは、生徒会副会長の楠悠人。
藍色の髪で、柔らかい物腰の貴公子のように爽やかな好青年である。
会長の幼馴染で、他のメンバーよりはどこか大人びた印象を受ける。
その隣で、帰るという不機嫌な男に便乗してサボろうとしたノリのよい男は、会計の日下周。
クォーターらしく、金髪で翠の瞳のヨーロッパの王子様のような容姿をしている。明るく、フェミニストで話し上手。
そして、その周の名前を呼ぶだけで諌めていたのが、口数の少ない書記の真野健吾。
黒髪で背が高く寡黙。
容姿は他の3人に比べるとどちらかといえばワイルド形の部類に入る。
そして3人の先頭にいる紅い髪の、気怠げで不機嫌そうな態度を取っているのが九条煌希。
帝王と異名をとる、学園のトップ、生徒会長である。
おぉ!ホントにあの『如月学園』生徒会メンバーだ!
うっわぁ〜、テンション上がってきたーー!
生徒会は風紀とは違い学園の中でも家柄や財力のある者、さらに、上に立つものとしての知力が備わった、まさにこの国を背負っていくに相応しい者達が選ばれる。
上流階級の中のさらに上流の人達で、私みたいな庶民には想像もつかないほどの別世界の住人だ。
そして、この生徒会、美形集団で学園のアイドル的存在でもある。
家柄もよくて財力もあって美形。
そりゃ結婚相手を求めにこの学園に入学した女子達は放っておかないよね。
そんな学園のアイドル達の中でも財力・容姿・実力を一際兼ね備えているのが、先頭にいる九条生徒会長だ。
その圧倒的な存在感は、風紀委員長の威圧的なオーラとは違って、見るからに高貴さが感じられ、華々しいオーラを放っている。
けど、この生徒会長、普段、全校生徒がいる公の場だと今と全然違くて、笑みを絶やさず、皆から尊敬を一心に集める凛々しい生徒会長を完璧に演じているんだよねー。
まさに腹黒会長!
本性を知ってるのは生徒会メンバーだけで、今は人目がないから不機嫌さを隠そうともせずにオレ様会長っぷりを発揮している。
そんな腹黒オレ様会長も、これからはヒロインちゃんにだけ徐々に心を開いていき、弱味を見せるまでになって、ツンからデレに……、というおいしい展開が待っているのだ。
なんて素晴らしい展開!
あーもう、想像するだけでゴチです!
見る限り性格もゲームとそう変わりなさそうだし、これは本当にリアルゲーム展開が期待できそう。ワクワク。
早くヒロインちゃん来ないかな〜。
…うーん、それにしても、
私はそっと4人を上から除き見る。
こうして生徒会メンバーがそろうと圧巻だなー。
なに、あのキラキラ華やかメンバーは。
どこのご貴族様達ですかって感じ。
みんな後ろに花背負ってるのが見えるよ。
さすが攻略対象者。
着飾ったり異性の目を惹くのに夢中なこの学園の女の子には魅力的なんだろうけど、正直、規格外すぎて地味子の自分には遠目からで十分満足です。
むしろ、お近づきになりたくない。
だって兄のキラキラさだけでもウンザリなのに、その上を行く彼らはもう私にとって害だ害。
もうあの人達のことを『キラキラ族』って呼んじゃっていいかなー。
だって無駄にキラキラ、キラキラしてるんだもん。
『攻略対象者』より言うの全然楽だし。
お!そんなことを考えている間になにやら周りの3人が会長の説得を諦め始めたみたい。
確かこのあたりからイベント発生だよなー。
さあ、ヒロインちゃんのご登場です!
更新遅くなってすいません。
サクサク進められるよう頑張りたいです。