第三話 出会いイベント? 2
「これはーーー」
風紀委員長様は、3人の男達が倒れているのを見渡す。
「どういうことだ?」
こっちを見て、目を細める。
…こ、こ、怖い。
できるならこの場から逃げ出したいけど、そんなこと許さないような雰囲気がそこにあった。
「…おまえが?」
風紀委員長様はさらに眉間に皺を寄せる。
凄んだ顔もさすが男前です!
けど、怖過ぎます!
自分に向けられたものじゃなかったら、攻略対象者に早々に会えてラッキー!…って思えるのに、何このピンチ!
ああ、即学園を追い出され、これで私のスクールライフ、ジ・エンド。
イベントが見れないで終わるなんて…。
早かったなあ。
風紀委員長様に目を付けられるとこの学園にはいられない…これは学園のルール。
このルールが適応されないのは生徒会のみ。
そして、風紀メンバーは武道や運動能力の優れた者達で構成される。
ただし、さっきみたいな不良のように、その権力を乱用する恐れのある人もいるから、風紀に入るには人望もなければいけない。
そして、風紀委員長は代々、喧嘩が強いものがなるという。
良くも悪くもお金持ち学校、我の強い集団を束ねるには強さを示す必要もあるということだそう。
それゆえ彼は全校生徒から恐れられているが、同時に圧倒的な存在感、その男らしさから男女ともに隠れファンが多い。
つまりは、超強いということ。
そんな風紀委員長様に睨まれれば、怖すぎて返事ができない。
固まったまま、沈黙が続く。
「………へえ…………」
風紀委員長様は、私が否定しないのを見て、肯定と受けとったらしい。
ニヤリと口角が上がる。
なんだろう、素敵なアルカイックスマイルを頂いたはずなのに、悪寒が止まらない。
私は固唾を飲み、次の「退学」という言葉が出るのを待つ。
「おもしれえ。風紀に欲しいな」
「え?」
突然の言葉に虚を付かれる。
今なんと?
「おまえ、風紀に入れよ」
「え?」
えぇえーー!!
何この展開!
なぜ勧誘された!?
さっきまでの追放の雰囲気はいずこ!?
風紀委員長は、顎でクイッと転がっている不良達を指して、
「彼奴ら、なかなか尻尾を出さねえから、おまえのおかげでいい薬になっただろ。女子がいると、何かとやり易いこともあるしな。…どうだ?」
「お断りします!!」
「あ"ぁ?」
ドスの効いた低い声とその剣幕に青ざめる。
でもでも、風紀なんかに入ればモブになれない。
否が応でも目立つし、それ以上に面倒なことになるのは目に見えている。
攻略対象の側なんて、兄がいた頃と変わらない。
まだ追い出されたほうがマシである。
私はジリジリと後ろに後退った。
「と、とにかく!お断りしますぅーーー!」
ここは逃げるが勝ちだ。
私は叫びながら、その場から脱兎のごとく走り去った。
「チッ、逃げられたか…」
走り去った方向を見て、風紀委員長はその逃げ足の速さにも感心していた。
その時、横目に走ってくる男が見えた。
「竜也、いた!もうすぐ入学式始まるってよ」
「ああ、わかった」
男は、竜也の口元の微かな笑みに気づく。
「どうしたの?なんか楽しそうだね〜」
「ああ、久しぶりにエモノを見つけたからな」
「ふーん、名前は?」
「知らねえ」
「ダメじゃん」
「いや、ぜってー見つける」
ーー逃がさねえよ?
思わぬところでヒロインより先に攻略対象に遭遇し、好感度を上げてしまっていた結衣なのでした。
次回、生徒会長現る。