第十話 出会いイベント? 9
お待たせしました!
ちょこちょこ編集するかもしれません。
キラキラ族第二弾、もとい、風紀幹部のみなさんの登場です!
生徒会みたいな花背負ってる貴族然な華やかさじゃなく、覇気のような強者を感じさせるキラキラな美形軍団です。
しかし、ナンバー4までそろい踏みとはこれいかに。
やだ、逃げたい…。
と、思ってたら、勘付いた風紀委員長様に首根っこをつかまれた。
なんだか風紀委員長様に行動を読まれ始めている気がします。
気付いた会長様がすかさず風紀委員長様の手を叩き、解放されたその隙に、私はサササッと会長様の背中に隠れさせてもらった。
これからあのキラキラ軍団に立ち向かう勇気は私にはないので、モブっぽさを醸し出したいと思います!
端役にもならない私が後ろで気配を消して大人しくしてればきっと気づかれまい、うん。
会長様は、イライラしてた雰囲気がどこか和らいで、よし、と言うように口角を上げて頷かれた。
……よくわからない。
首を傾げているところに、背中越しから視線を感じたので見上げると、風紀委員長様と目が合った。
また逃げないかと思われてるのかなぁと思って、「逃げないです、大丈夫です」という念をじーっと見つめて送ってみたら、チッと舌打ちを返され、ふいっと顔を逸らされてしまった。
機嫌が悪そうである。
なぜだ。
「ボス、やっと見つけた。中庭にいると思ったのに、探したぜ」
はあはあと息を切らして最初にやってきたのは、結城翔。
一つ上の二年生。風紀ナンバー4である。
ちなみに陸上部所属。
茶髪でいかにも運動神経が良さそうに見える刈り上げのスポーツ少年。
この人は風紀委員長様の強さを見て惚れ込み、風紀委員長様をものすごく敬愛している。
風紀に入るために足の速さだけでなくケンカで腕っぷしも上げたという妄信ぶりは誰もが知るところ。
風紀委員長様以外には無愛想で冷たい。
しかし、顔は可愛い部類に入る。
ツンデレ要員。私としては冷たいくらいがちょうどいいのでキラキラ族では傍観するのに安心できる人である。
「竜也、もう始まんぞ。あれ、なんで生徒会長と一緒…?それに、その子は…新入生?」
この人は、御影豊。
風紀の副委員長様。
委員長の親友で風紀ナンバー2の実力者で、剣道部所属。
1番の常識人で風紀委員長様を唯一止められる人だ。
しかし、さすが風紀委員長様の親友、怒らすと最も恐しい人なのだ。
しかも会長の次に頭がいいという文武両道ぶりは、男気と誠実さを求める守ってもらいたい女子達に大人気。
「へー、会長と一緒なんて珍しい〜!ボスが女の子を近づけてるし。なにかあった〜?」
ナンバー3の剣崎薫。
おちゃらけフラフラどこかへ行くが、面白いことは大好きな人。
弓道部所属。
薫様に想われると少々ヤンデレ気質だが、あることをしなければ目をつけられることもない。
この人ルートに入ると傍観は難しいかもしれない。
一番厄介なので要注意人物である。
そして、ボス、こと、東郷竜也は、言わずもがな全校生徒(生徒会 風紀幹部を除く)が畏怖するナンバー1の風紀委員長様。
御影様と同じ剣道部所属だか、たまに助っ人要員としていろんな部活に顔を出している。
子分(風紀委員)増やしも兼ねてる気はするけれど。
運動神経、腕っぷしともに抜群に良い。
ちなみに、風紀と生徒会の仲は昔っから悪い。
反りが合わないのか、お互い何かない限りは関わろうとしないのが常なのだ。
会長が風紀委員長様の横にいることに、翔様は明らかに嫌そうな声を上げた。
「げ、なんでいんだよ」
「あからさまですね。見たらわかるでしょう?案内するとこなんですよ」
それを聞いた風紀メンバーは、風紀委員長様がただ居合わせただけだと思ったのか、あー、そういうこと、まあそうだよねー、という感じに私の存在を受け流してくれた。
よしよし、その調子で気にしてくれなくて結構ですよー。
「あ、新入生といえば、さっき中庭でおもしろい女に会ったんだぜ、今度ボスにも会わせてやりてー」
翔様がやや興奮気味にまくし立てる。
な ん で す と?!
それはヒロインちゃんだよ!絶対そうだよ!そうに決まってる!
もしや中庭イベントが発生していた?!
風紀委員長様がいないことでこの気に入られようはいったい何が!
私は会長の背中から勢いよく翔様に迫った。
「その子、女の子ですか?どんな子でしたか?名前はなんていうんですか?」
眼をキラキラさせて問い詰めると、視界にやっと私がいるのを捉えたかのように翔様は不愉快そうに眉を顰める。
「あ?なんだこいつ、気安く話しかけんじゃねえ。」
おー、さすがツンツンしてるツンデレ翔様!
風紀委員長の前だと犬っころなのに。
翔様はそうでないと。
うんうんと頷く私をわけがわかんねーと訝しげに見つめ、
「で?なんだこの女? ボスに近づくなんて、追っかけか?オレが追い払ってやろうか?」
ってことはなにか風紀委員好感度アップしてるということか!
「おい、こんなおとなしい子をいじめるなよ」
「そうだよー。さっきから黙っちゃってんじゃん」
イベント見逃したよー!悔しいー!
まさかまさかの風紀委員長様なしでイベント発生とは!なぜ迷子になったんだ、私。
傍観ライフが初っ端から挫かれるとは。
これじゃあ入学した意味がない!
よし、早々にヒロインちゃんを見つけるぞ。
「こいつが、おとなしい?」
副委員長様と剣崎様の言葉に風紀委員長様はブハッと肩を震わせながら、
「ああ、こいつはいいんだ。こいつ俺の『エモノ』だから」
さらっと発した言葉に一拍の沈黙が落ちた。
「「「はあーー?!」」」
「「「この女が?!」」」
副委員長様のだけが心得たとばかりに頷いていた。
他の風紀メンバーは心底驚いた顔をしている。
「え、なに?なに?」
私はというと思考がヒロインちゃんに流されていたので、会話が全く頭に入ってきておりませんでした。
急に大きな声が響いてびっくりです。
「……っ」
横を向くとワナワナと震えて拳を握りしめていらっしゃる会長様がいた。
なんか明らかに怒っていらっしゃる?
いったい何が?と思ってると風紀委員長様がふいっとこちらを向いた。
「俺はおまえに責任とるっつたよな?」
「い、言ってましたね」
いったい、それがなにか?
「だから、今からお前は俺の『エモノ』だ」
え?え?
「エーーーー!!」
エモノってエモノ?もしかしてあのエモノ?
如月学園の風紀委員長には「エモノ」という制度がある。
「 得物」つまり風紀委員長の「武器」を指し、風紀委員候補と定めた人という意味である。
ちなみにこれを拒否できるが、風紀委員長が諦めるまで勧誘攻撃が続くのが常である。
しかし、このエモノが女性である場合、意味合いが変わってくることがある。
風紀委員長の「獲物」。
たぶんこっちの方が有名になっていて、風紀委員長が自分の女にするために定めた獲物だから手を出すなよ!ということなのだ。
なぜ獲物っていうかって?それは、初代風紀委員長が獲物と定めて、学生時代追いかけまわした女性がいたかららしいよ!
そして、この如月学園の風紀委員長様ルートではヒロインちゃんが獲物になるはずなんですよ。
「まさかまさか、ご冗談ですよね?丁重にお断りさせて頂きたいのですが!」
「ほおー、いいのか?」
へ?
「オレがおまえの責任を取らないと、風紀が黙ってねえぞ。オレは『風紀委員長』、だからな。……特にあのことだ。」
最後は私にだけ聞こえるように耳元で囁かれた。
は!
乱闘騒ぎをしたことを言っている?それとも、あのキス事故のこと?
風紀委員長様は目撃者と当事者なんだから、不良を取り締まった功労者にもできるけど、風紀でもないのに騒ぎを起こした問題者にもできるはずだ。
私は特待生だから入学早々問題を起こしたとなれば最悪退学かもしれない。
そして、キス事故。
これが一番厄介だ。
乱闘騒ぎなら停学の可能性はあるが、風紀委員長様がキス事故をなかったことにしてくれない場合、このメンバーに知られた日にはほぼ追放が待っている。
孤高で畏怖される存在、その絶対性から委員長がたとえ事故だとしても「獲物」でもない女とキスなんか言語道断。
風紀委員にスキャンダルはご法度なのだ。
もしスキャンダルだったとして「獲物」でなく追っかけだと風紀委員長に言われたら、他の風紀メンバーが揉み消しにかかる。
なんだかんだボス第一主義の脳筋風紀メンバーは放っておかない。
風紀委員長様のイメージがマイナスにでもなる可能性は直ちに排除する。
つまり、手っ取り早い方法は、私がこの学園を去ることだと考えるはずだ。
どちらにしろ傍観ライフが終わるのは間違いない!
何も具体的なことは言ってないのに、最悪の事態を想像させるあたり風紀委員長様はやはり頭は切れる。
さすがだ。
たらーっと冷や汗が流れる。
「おもしれぇ女に会ったのは初めてだしな。あとは、風紀に入ってもいーぜ、まあ俺はどっちでもかまわないがな」
やられた。
ニヤリと笑った、してやったり顔が「『得物』として風紀に入るなら黙っててやるよ」と暗に言っている。
エモノになるのを断って、さっきの出来事が知れても即追放エンド。
「エモノ」とされてしまったら、学園のみんなは私が女であることから「得物の風紀委員候補」としては見てくれないだろう。この言い方からすると風紀委員長様はわざわざ私を「得物」として公言せず、風紀に入らないと「獲物」認定されてしまう可能性が高い。
っていうか、あの顔は絶対そうだ。
『責任取る』って絶対違う!
キスの件バラして「獲物」にするか、自ら風紀に入らせて「得物」にするかのどっちかじゃん!
絶対どっちにしろ面白そうだからだー。
ああぁ〜、私の平穏で静かな学園ライフがぁああ〜。
目立ちたくないー。目立ちたくないけど〜、あぁ〜あ。
「結衣は生徒会補佐になるんですよ。横取りしないでもらえますか?」
会長様が風紀委員長様から私を離して、手を引いた。
「ふっ、何の実績や功績のない入学したばかりのやつを気に入ったからというだけで生徒会補佐にでもしてみろ、おまえの実権が下がるだけだ。まあ、オレはそれでもいいけどな」
「ーーっ。それはあんたにも言えるでしょう」
「あ? あ〜、その点、風紀は運動能力のあるやつを選ぶからな。まあ確認済だ」
「え?」
「え?」
「え?」
次々と風紀メンバーから信じられないという驚きの顔を向けられる。「え?」の伝言ゲームみたい。
「「「どうみても普通の女なのに」」」
「普通です、普通です」
「というわけだ、テメェら手だすんじゃねえぞ」
スルーされた!
「ボスが決めたなら、文句言えねえけど、お手並みは拝見させてもらうっす」
「そうだな」
「だね〜」
えぇぇー、もう風紀入りは決定事項ですか?
お読み頂き、ありがとうございました!




