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第一話 傍観することに決めました

春、いつもと違う道。

寮から学校へ行く通学路。


ーー本当に私はあの『如月(きさらぎ)学園』に入学したんだ。


寮のみんなより早く登校したため人通りが少ない中、目的の場所を目指し歩きながら、私は念願の高校へ入学できた嬉しさを噛み締めていた。


やっと落ちついた学生生活が送れる!


両親や兄からは、家からこんなに遠い学校で、しかも寮暮らしなんて、と反対されたが、なんとか説得できて本当に良かった。

特に兄からは家を出るまでくどくど「やっぱり考え直さないか。お兄ちゃんと同じ高校へ行こう、ね?」と顔を合わせるたび何度も聞き返され、まとわりつかれた。


兄よ、ほんと勘弁してほしい。


兄と同じ高校なんて小中学校だけで十分だ。

品行方正、スポーツ万能、頭脳明晰、容姿端麗と無駄にキラキラした兄を持つと、同じ兄妹とは思えない平凡な自分は常に学校で比べられてきたのだ。

同じ俳優並みに容姿の整った両親を持ったにも関わらず、兄だけが2人のDNAを受け継いだようで、ものすごいイケメンに生まれたのだが、私はなぜか平凡な容姿になってしまった。

目が悪く、学校ではメガネとおさげにしているので余計に地味に見えるらしい。

だけど、私としては目立ちたくないので結構気に入っている。


兄は兄でこんな妹なのにかわいいと連呼してくるほどのシスコンっぷりで(一度眼科に行くことを勧めたのだが、心配されたことをすごく喜んで面倒くさくなったので、もう言うのは諦めた)私に構ってくるものだから周囲の女子からは嫉妬されまくり、私をダシに兄に近づこうとしたりして、今まで友達と呼べる人もいなかった。

静かに学生生活を過ごさせてくれと何度思ったことか。


でも、もうそんな生活とはおさらばだ。


家から遠く離れたこの学園、お金持ちやエリートそして美形達が集まる『如月学園』に入学することができたのだから。

庶民の自分には競争率がバカ高く、入れただけでも奇跡に近い。

この学園に入れば将来を約束されたも同然なのだ。入りたい学生は山ほどいる。

しかし、私はミーハーではないので、如月学園に入ってくる子女のように結婚相手を求めに来たわけではない。(ほとんどの女子がそれを目的として入学する)

正直、高校なんてどこでも良かったんだけど、必死に勉強して特待生枠を獲得してまでこの学園に入学したのには訳がある。



なぜならーーー



ここは生前大好きだった乙女ゲーム『如月学園』の世界なのだから…。


そう、


私は転生者というものらしい。


それに気づいたのは、この高校の学校案内を見たときだった。


『如月学園』という名前に見覚えがあり、それを手に取った。

最初は誰でも知っている学園だからだろうと思ったのだが、どうにも何か引っかかり、案内を開くと、学園内の様子、制服、すべて見たことがあった。

そこに写っている人物までも鮮明な記憶として。


ーーここは、ずっと昔、生前にプレイした乙女ゲームの舞台だ。


信じられない、その場で呆然とする。


でも、だとしたら展開的に私はヒロイン?それとも悪役令嬢?


いったん現実を受けとめると、ゲームのシナリオが頭に流れ来んできた。

だけど、私の名前、伊月結衣の名前なんて浮かんでこない。



と、いうことはーー



やったー!モブだー!


私は歓喜した。


この学園に入れば大好きだったゲームを直接見れるんだよ。

ヒロインとか悪役令嬢とかメインキャラだったら面倒くさくてどうしようかと思ったけど、さっきも言った通り、私は静かな学園生活を過ごしたいんだ。

そして、私のキャラはモブ!

傍観者に徹することができる!

これは、狙わないワケにはいかない。

そうして、猛勉強に取り組んだ末、授業料免除の特待生を勝ち取り、今、私はここにいる。

リアル『如月学園』をひそかに楽しむためにーー。



というわけで、


私は早めに登校していた。


だって、入学という名のおいしいイベントを見逃せるワケないじゃない!


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