偶然の出会い
私の名前は木葉春。
昔からよく名前でいじられたりはしたけど
いじめられたり、遊ぶことがなかったりという事は
少なかった。私は今18歳で高校生最後の冬休みを送っている真っ最中。
僕は高校に入ってからずっとコンビニでアルバイトをしていた。
今までは何ともなかったアルバイトが高校生活最後の冬休みで一転してしまった。
それは・・・中学1年の頃、好きになってしまった同性の先輩が居た。
その先輩は2つも上だから私とは全く接点がない…とは言えない。
それは元々近所で仲が良かった先輩と同級生で
お兄ちゃん的存在の先輩というか友人というか…
そんな人が、私が惚れてしまった先輩と仲良しで、近所の先輩と
仲が良かった。部活もしないで普通に過ごすだろうと思っていた
中学生活は、近所の先輩の家に遊びに来いと言われて遊びに行った時
その時に惚れてしまった先輩と顔を合わせることになった。
私が惚れてしまった先輩は柴犬獣人よりも少し大きい
秋田犬獣人の『秋田健太』先輩。
幼い頃も今も、仲良く遊んでもらっている先輩は
柴犬獣人の『柴田健也』先輩。私は幼い頃から知っているため
健也だけはタメで喋ってしまう。今ここでは健也の事を先輩と言ってるけど
本人を前にすると先輩が抜けてしまう。
いつしかどこでも先輩というものが抜けてしまうだろうけど…。
健也と健太先輩が楽しそうに喋ってる姿を見て僕はボーっと見ていた。
「春ちゃん…だっけ?」
「えっ…あ、はい!」
「どうしたん? そんなボーっとして」
「いえ、なんでもないです」
「春らしくないな どうした?」
「どうもしてないよ」
「そうか?」
「うん」
どうしてだろうか、先輩が居ると少し緊張してしまって
普段入らない力が変に入ってボーっとしてしまったり
喋る時にかたことになってしまったりする。
でも健也が近くに居てくれてよかったと思う。
居なかったらもう喋れなかったと思えてしょうがなかったから。
しばらくすると先輩は僕に興味があるのかよく話掛けてくれる。
「そういや春ちゃんって1年生?」
「そうですよ」
「いいなー、健也にはこーいう可愛い年下がいてさ」
「んなことねぇよ こいつ俺と二人だとタメ口しかないからな」
「そうなのか? あんまり思えないけどな」
「見た目に騙されんなよ?こいつ、半端まいくらいに誘惑してくるからな」
そこで僕が仲裁に入って喋りだす。
「待って、私がいつ健也に誘惑したっていうの?
そもそも私が健也の事口説いてどうするの?
したとしてもそういうのって普通逆じゃないの?」
「あ、あれぇ…」
「な?」
「あっ…」
「…ッフ…フフ…ハハハハハ!」
「あ、あれぇ~…」
あろう事か先輩はお腹を抱えて笑い始めた。
そういえば私が先輩に惚れた理由は
身長が高くて笑顔が素敵だから・・・。
理由はたったそれだけだけど、私にとってはほんとに
掛け替えのない宝物のような笑顔。
ずっとそんな笑顔を見続けられたら良いのになって
そう思ってた。でもやっぱり私には…無理だから
私は先輩に片想いをしたままずっと今まで
告白せずに先輩の笑顔を見続けてきた。
しかし、たった今…僕の心拍数は上がっている。
私がアルバイトをしているコンビニに、偶然やってきた先輩。
中学を卒業して私はもう会うことはないだろうと
片想いを胸にしまっておいたあの先輩が…。
あの時よりも身長が高くなっただけで
何も変わることなく、私を見つけると
喋りかけてくれた。
「あれ? もしかして、中学の頃仲良くしてた春ちゃんじゃない?」
「えっ…健太先輩…覚えてくれてたんですか…?」
「あぁ、やっぱりそうか! そっかそっか!
俺もう会う事ないかなーなんて思ってたんだけど…
会えちゃったかぁ~!良かった~!」
何がそんなにも嬉しいのか、先輩の気持ちは私には分からない。
でも私はもう6年近く片想いをしてる先輩に会えて嬉しくて嬉しくてたまらない。
私はもうそれだけで十二分に程幸せだった。
「春ちゃんってさ、線してないの?」
「線してますよ?」
「じゃあ身元教えてよ!」
「紙に書いて渡しますね。今バイト中なんで…」
「だったら俺の書いて渡しとくね」
私はバイト中だから、先輩とずっと話してたい気持ちはあっても
それは先輩を惜しんででも避けた。IDを書いた紙を先輩から渡もらって
紙に書いた後に持ってきたビール缶をいくつか買い
バイト終わったら連絡してとだけ言ってコンビニを後にした。
はぁ…、私はなんてもったいないことをしたのだろう。一瞬そう思ったけど
先輩の連絡先を知った私は、それは間違ってると頭をブンブンと横に振り
バイトに集中した。先輩に早く連絡したいという気持ちもあって
バイトに集中していたせいか、あっという間にバイトが終わった気がした。
先輩にバイトが終わったことを伝えると先輩はそこで待っててと言って
私を走って迎えに来てくれた。
「お待たせ~、ごめん待ったでしょ?」
「なんか…すいません。」
「え~、何で謝るの?
まぁ…いいや、バイト終わったってことは暇でしょ?
俺ん家こない?」
先輩は私を家に招いてくれた。
それは悪いと私は断ろうとしたが
いいからいいからと言って私が断ったことを先輩が
断って半ば半強制的に招かれた。
先輩の家は一軒家かと思えばマンションだった。
先輩はもう一人暮らしをしていたらしい。
部屋をお邪魔させてもらうと
一軒家と違ってやはり少し狭い。でも一人でいるというのなら
十分の広さだなと思った。
「ごめんねー何もないとこだけど」
「いえ…。それで何か私に用事か何か…?」
「あぁ、何もないんだけどさ
何か久々に春ちゃんみて呼びたくなっただけじゃ…ダメかな?」
「…いえ。光栄です…」
健也の前だと何ともないのに健太先輩の前だと
今でもこのようになってしまう。
でも今の先輩は何だか元気がなさそうに見えた。
「健太先輩、何かあったんですか…?」
「えっ!? な、なにもないよ!?」
明らかに図星である。私にでもわかる。
「そうですか…」
でも、やっぱり先輩らしいなと私は苦笑する。
そんな私を見て先輩も苦笑する。
すると話をきってきたのは先輩。
「春ちゃんってさ、18歳でしょ?」
「えぇ、まぁ」
「やっぱ好きな子とか居るの?」
「…居ないです」
「今の間は何かな!?」
「いきなり何を聞いてくるのかと思って
反応に困っただけです。特別意味はないですよ」
私はどうしても正直になれなかった。
正直に好きな人居ます6年くらい片想いしてます。
なんて言ったら先輩は協力しようか?なんて
手をさし伸ばそうとするだろうし。
でも私はそのさし伸ばしてくれる手を引っ張って
先輩が好きですなんて言ってしまいそうだから。
今、私の心拍数はそれ程に苦しませてくるように
心臓をバクバクとならせてくる。
「そっかぁ~」
「先輩はいないんですか? 好きな人」
私は先輩の好きな人が気になった。
居ると答えるなら僕はそれを応援したい。
私なんかが告白なんかしても
絶対に断られるだろうし、可愛くも綺麗でもなんでもないから。
そうじゃなかったとしても私は先輩が好きだと言う人と
先輩を応援したいと思うから。
「居ないよ~? 中学の頃は居たけど、その子さ
なんだか大人び居ちゃっててね、でもその子の事まだ諦めきれないんだよね~」
「それって、居るって言ってるようなもんじゃないですか?」
「あ゛っ!!」
後から気づく先輩が面白い。
そしてその変わらない天然っぷり。
いつになっても私が好きでいられる先輩だ。
そんな先輩に私は惚れ直してしまう。
「なぁ、春ちゃん」
「なんですか?」
「もう少しでクリスマスだろ?」
「そう…ですね。」
「良かったら一緒に過ごそうよ」
一瞬先輩が何を言っているのか分からなかった。
先輩と居るっていうことでさえ胸がいっぱいになるのに
家にまで招いてもらって、クリスマスも一緒に過ごさないかだなんて。
もう私は幸せすぎて、いつ天国に行っても良いと思えた。
「あの…私でいいんですか?」
「春ちゃんでいいんだよ?」
「じゃあ、お願いしても…良いですか?」
すると先輩はうんうんそうじゃなくちゃと言わんばかりに頷き、尻尾を
はちきれそうなくらいにまでぶんぶんと振る。
私は動物型人間じゃないから尻尾がどうしてそんなに動くのか気になる…。
そこでふと私は気になる。
どうして私なのか。どうして私となのだろうか。
でも嬉しそうに尻尾をぶんぶん振り回す先輩を見ていたら
そんな事、聞こうなんて私にはできなかった。
私に言いたかった用件はそのクリスマスの件らしく
それを言ったあとからか先輩の頬が少し赤らめていたように感じる。
それは私の気のせいだとは思った。
そして時は過ぎ、数日後。
待ち合わせしていた先輩と私は
白い雪の降った寒い外の中、二人で買い物にでかけた。
「春ちゃんって何が好きだったっけ?」
「えっ、私は・・・なんでも好きです」
私は先輩が好きです。なんてストレートに言えれば苦労しないんだけど…。
少しばかりそんな事を考えてたら先輩は鍋にしようと言い切って
具材を買い漁り始めた。具材だけ買ったのかと思えばチョコレートとお酒…。
また先輩はお酒を買っていた。先輩はお酒が好きなのだろうか…。
私は黙ってカゴを見ていると先輩は察したのか
お酒美味しいよ?なんて口走ってきた。
私は未成年なのでと飲む前に口止めをしておいた。
先輩の家に帰ると丁度良い時間の頃合で
先輩はよし!とだけ言って買って来た鍋の材料を包丁で刻む。
僕は先輩も料理するんだなーと思っているとキッチンから
何かの声が聞こえた。
「イタッ!」
慌ててキッチンに向かうと野菜を切ってる最中に包丁で指を
切ってしまったらしい…。
私は持ってきていた鞄から絆創膏を取り出し先輩の指に貼り付けると
先輩は中学の頃によく見たあの笑顔を私にくれた。
私は嬉しくてつい目を逸らしてしまう。
すると先輩は立てていた耳を少し折り曲げて悲しそうにする。
「先輩は指切っちゃったんで、後は私がやります
もしかしたら冷蔵庫、覗いちゃうかもしれないですけどいいですか?」
「あれ、春ちゃん料理できるの?」
「鍋くらいは全然できますよ」
そう言うと先輩は私が頼もしいと言ってくれた。
それだけじゃない。春ちゃんみたいなお嫁さんが居たらなぁ
なんて口ずさんできた。私は口からでそうになった。
私じゃだめですかという言葉を慌てて飲み込み、鍋の調理に集中する。
できた鍋を机の上に置き、先輩と向き合うように座り
いただきますと両手を合わせて食べ始める。
食べえると先輩は美味しかった 俺がやるはずだったのにありがとうとだけ
言って礼を言ってくれた。私は当たり前の事をしただけなのに。
すると先輩は僕の隣に腰掛けて少しアルコールの匂いを漂わせて
喋りかけてくる。
「なぁ春ちゃん…」
「は、はい?」
「俺さ…。ずっと好きだった子がさ
最近こんなにも近くに居るんだってことに気づいたんだ…」
「それで…?」
「うん、それで…さ。春ちゃんだったら告白した方が良いと思う?」
「私には…ちょっとわからないです。」
「そっか~」
アルコールの入った先輩の口からは
相談を少しだけして気が迷ったように見えた。
先輩はもし私がするべきだと言ったら言っていたのだろうか。
少し私も戸惑う。
「その先輩の好きな子ってそんなに近いんですか?」
「うん。今、近い」
私にはその今の意味が分からなかった。
「じゃあ、告白しちゃってもいいんじゃないですか?」
「そう思う?」
「私はそう思います。」
私は先輩にその恋を実らせてほしかったから。
ただ…それだけのつもりだ。
「わかった 春ちゃんがそういうなら今度告白する」
「それがいいと思います…。」
「じゃあ私はそろそろ帰りますね時間もきているので」
「ううん、ありがとう。また誘っていい?」
「是非、お願いします」
それだけ言うと私は家に帰り
先輩がそのあとどうしたのか…それを気にしながら寝りに落ちた。