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そんなある日だ。
ラウルが、二人の子供を連れて俺の部屋へとやってきた。
エギステリア家に仕える騎士の家に生まれた双子なのだと、紹介された。
双子が男女だったのは、肉体は女で、魂は男である俺を気遣っての選択だったのだろうと思う。
双子の姉がアンナ。
弟が、カインと言った。
二人はルーナンスという家の子供たちで、エギステリア王家の覚えもめでたい、信用できる貴族の子供たちだとラウルは説明した。
そして、俺さえ良ければ、俺の秘密を共有する友達になってみないか、と言われた。俺は、頷いた。友達が欲しかった。特殊な環境に置かれているがために、蘇って以来ラウルとエリシャさん、そして司祭の御爺さんとしか親しく会話をしていない。アイシャを装ってなら話したことのある人間の数は増えるが、同じ年頃の友達になれそうな子供はいなかった。
といっても、俺自体は17なので、今さらアイシャと同年代の7歳児を連れて来られてもきっと困ってしまったのだろうが。
アンナとカインは、アイシャより3つ年上の10歳だった。
両親に良く躾けられているのか、アンナはドレスの裾をつまんで優雅に令嬢の礼をしてみせ、カインは騎士の礼をした。
双子だけあって、二人ともよく似た凛とした雰囲気を持つ子供だった。
クラスの中央で盛りあがるタイプというよりも、普段はそういった連中を横から眺めているものの、何かあった時には参謀として皆に担ぎあげられる、そういったタイプだ。艶のある黒髪と、アイスブルーの瞳が余計にその雰囲気を増している。
「私はアンナ・レト・ルーナンスと申します。アイシャ様付きの侍女としてお仕えするべく参りました」
「私はカイン・レト・ルーナンス。アイシャ様を御護りする騎士見習いとして参城しました」
二人は丁寧な名乗りをあげると、俺の返事を待つようにして顔をあげた。
この場で、俺がエギステリアの姫として挨拶を返すのはそう難しくない。最近はエリシャさんの教育の甲斐あって、人前でも堂々とアイシャとして挨拶が出来るようになってきている。が、俺が欲しいのは取り巻きの子女ではなく、くだらない話しが出来る友達だ。だから俺は、緊張した面持ちで俺を見つめる二人へと、全く気負うことなく口を開いた。
「なあ、一緒にバスケやろうぜ」
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