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 ふ、と意識が浮上した。

 思い出したように、ひ、と喉を喘がせて慌てて呼吸をする。

 その感覚は仰向けにプールに潜って、きらきら光る水面に見惚れてぼんやりしているうちに、息が苦しくなって慌てる感覚によく似ていた。

 気づいたら、呼吸が出来てなくて、「あ、今俺息するの忘れてた」と思い出して慌てて胸を喘がせる、そんな感覚。

 がばりと跳び起きて、は、は、と息を弾ませる。

 そして――…改めて周囲を見て、そんな俺をバケモノでも見るような顏でぎょっとしたように見つめる見知らぬ人々に気付いた。


「………?」


 誰だ。

 というか、何人(なにじん)だ。

 俺を取り囲んでいるのは、たくさんの外国人だった。

 髪の色は、黒っぽい茶色から金髪まで色とりどりだ。

 純日本人として生まれ、日本から一歩も出ることなく育った俺の目には十分異様な光景に映る。そもそも、ここはどこだ?俺はいつものように部活が終わった夕暮れ、制服に着替えて校門を出て……。

 

 

 あれ?

 

 

 その後どうしたんだった?

 今日の夕飯なんだろうな、だとか。

 母さんが支度に手間取ってるようなら、帰りにコンビニで夕飯までのつなぎになりそうな唐揚げでも買って帰ろうかな、とかそんなことを考えていたのは覚えている。明日の数学、俺当てられるんだっけ、とか。英語は昨日当たったばっかりだから、一巡するにはまだ時間がかかるからセーフだな、とか。

 そんなことをつらつらと考えていたことは覚えてる。

 だけど、大事なことが思い出せなかった。







 俺は誰だ?







 男子高校生だったのは覚えてる。なのに、名前が思い出せない。

 ぼんやりと断片的な光景は思い浮かぶのに、それを繋げて納得できるだけの記憶とすることが出来ない。家族構成は思いだせるのに、顏が思い出せない。どんな会話をしたのかは覚えているのに、声は思い出せない。


「なんだよ、これ……、ッ!?」


 呆然と呟いて、響いた声に驚いて息を飲んだ。

 今の声は、誰だ。

 すごく近くから聞こえた、俺が言ったはずの言葉。

 でも、それが俺の声であるはずがない。

 だってそれは――…、聞き覚えのない小さな女の子の声だったのだから。

ここまで御読みいただきありがとうございます。

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