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恋愛ブレイカー  作者: 銀杏 夜空
一章 私立車谷高等学校
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そのⅢ 【恋愛監視委員1】

なんだかんだで当初の目的であった食堂へと辿り着いた。

長い間、校長室で足止めを食らっていた為に焼きそばパンは見事に完売していた。その事実を知って、まるでこの世に終焉(しゅうえん)が訪れたかのように絶望の表情を浮かべる立花(たちばな)。それを、たかがパンごときで……と夏美(なつみ)は呆れながら見ていた。

「あーあ、どこぞの筋肉女(メスゴリラ)のせいで焼きそばパンなくなってるよー。あー、食べたかったなー」

「もー。大きな声でうるさいなぁ……。何々? 私が悪いとでも言いたいの?」

「さぁ? どうですかねー?」

立花は口をとがらせながらそう言った。

「それにしても、よくあんな(あぶら)っこいものを毎日毎日飽きる事なく食べれるよねぇ。体に悪そうな成分しか入ってなさそうなのに」

夏美は立花の嫌味をスルーして話を変えたのだが、

「あ、俺太らない体質だから。誰かさんと違って……」と更に皮肉を追加した。その言葉をボディーブローで黙らせた夏美はそれ(・・)を無視して一人、カウンターへと向かった。

昼休み半ば過ぎということもあって、食堂のメニューは残り少なかった。

「ねぇ、何食べる?」

と夏美は立花に問いかけた。が、一向に返事が来ない。また怒ってるのかと後ろを振り向くと、先ほど食らわせたボディーブローが効きすぎたのか、泡を吹いて痙攣(けいれん)している見るも無残な彼の姿がそこにはあった。

「…………………」

彼女はその物体を見なかった事にしてカウンターに向き直すと、メニューの一番上にあるカレーライスを二人前注文した。




「あのさぁ、いちいち手を出すのやめてくれる? 俺、見かけによらず結構デリケートだから! ってか、これって一種のパワハラだよ?」

「あー、もうさっきから悪かったって言ってるじゃんかー。ゴメンゴメン。カレーライスも奢ってあげたんだしさぁ、そろそろ怒りを沈めてよー」

「ゴメンですんだら警察いりませーん」

先ほどのボディーブローの一件でぷりぷりと怒っている立花。『自業自得(じごうじとく)』とは、まさに彼のためにあるような言葉である。

これ以上何をしても彼の怒りは静まらないと思った夏美は小さく「いただきます」と呟いてから、カレーを口へ運んだ。それをみた立花も文句を言うのを一旦やめて彼女にならってカレーを食べ始める。

「辛っ…………」

「辛いね…………」

明らかにスパイスの分量を間違えたであろうカレーが二人の舌と喉を襲った。

ゴホゴホと咳き込みながら水を飲む両者。なぜ車谷(くるまだに)高校(こうこう)の食堂二番人気であるカレーが昼休み半ば過ぎまで売れ残っていたのか理解した夏美だった。

「そういえば……」

と、ここで夏美がおもむろに口を開く。

「あんたのクラスに虐待とかイジメとかないの?」

「なんだよ……突然……」

その問いに戸惑う立花。

「いや、私、生徒会役員でしょ? 今度、イジメや虐待問題について会議みたいなの開くから、そのためのアンケートみたいなものよ」と質問の意図を述べる夏美。

彼女が生徒会役員だということを今始めて聞いた立花は戸惑いを通り越しいよいよ混乱し始める。その様子を見た夏美が苦笑いしながら説明する。

「いや、私のお父さんって警視庁のお偉いさんでしょ? だから、そのことで無駄に先生に信頼されちゃっててさ、ほとんど強制的に入れられたんだよね……ってこの前言わなかった?」

「聞いてないよ。初耳だわ」

「じゃぁ、今言ったからそれでいいでしょ。で、イジメあるの? ないの?」

とりあえず、適当に答えでもしたらまたボディーブローが炸裂させらるかもと危惧(きぐ)した立花は周りにそういった人がいなかったか思い出す。

「うーん。いじめとかじゃないんだけど、少し気になる事があるな」

「本当?詳しく聞かせてくれる?」

真面目な顔になる夏美。

「いやぁ、最近なんだけど、クラスのみんなの俺に対する視線が冷たく感じるんだよねー。なんでだろ?」

「ヘェ〜他には?」

「え⁈ 真顔でスルーですか⁈ 夏美さん、そりゃないっすよー。こうみえて実は結構なやんでるのよ?」

「あんたが、ガラス割らなくなったら冷たい視線も戻るよ」

心底どーでもいいという感じでこれを吐き捨てる。

「んで? 他にはないの?」

「あ、えーとですね。あとは、俺の親も最近冷たくてさ。この前なんてお小遣い100円だけしか貰えなかったんだよ? なんでなんだろう」

「知らねぇよ‼︎ あんたの家庭事情なんかどーでもいいんだよ‼︎ つか、それ自体もガラス割らなければ解決する話でしょうが! 私が聞いてるのはイジメとか虐待の話なの!誰があんたの私事情を話せって言ったんだよ!」

と、怒号を立花に浴びせる夏美。こいつに質問した私が馬鹿だった……とすごく後悔した。

「あんたのクラスにはそんな問題ないって事でいいのね?」

と聞いた夏美。立花が「うん」と言おうとしたそんな時だった。『グギュルギュル』と謎の音が立花の耳に入ってきた。その途端、顔を青ざめさせてお腹を抑え込む夏美。なおも続く謎の不快音。突然の出来事に目を丸くして彼女を見る立花。

「お花とか色々摘みに行ってきま※4×☆@」と奇声を発したかと思うと彼女はそのまま食堂の入り口へと姿を消して行った。

女の子って怒ったり殴ったり蹴ったり叫んだり大変だなぁと彼は彼女が消えた方を見ながら思った。

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