そのⅡ【非日常】
前回までのあらすじ
少しやんちゃな高校生【立花 睦月】は少し暴力的な幼馴染【湯口 夏美】と共に『私立車谷高等学校』で何気ない学園生活を送っていた。
そんなある日、彼らは食堂で一組のラブラブバカップル【緑沢 健二】と【江ノ本 香】と、『恋愛監視委員』を名乗る謎の双子姉弟【松下 冷弥】と【松下 綾子】と出会う。(第一章)
【緑沢】は昨晩発生した、暴力騒ぎの加害者の疑いがあるとして、『恋愛監視委員』に補導される。その土壇場の最中に、一人の女性が【緑沢】に近づき「江ノ本があなたを利用している」と忠告をする。彼女の名は【黒木 えり】。校内でも有名な問題児であり、車谷市の暴走族集団『リトルデビル』総長の愛人と噂される人物だ。そんな彼女の言葉に【緑沢】も最初は耳を貸さず、門前払いをするのであったが、とある一件により彼は【黒木】の発言を信じることとなる。一方【江ノ本】は同じ部活の後輩【赤石 優一】によって【緑沢】と【黒木】が【江ノ本】との約束を無視し、共に帰宅していたということを聞かされていた。憤る【江ノ本】と【緑沢】。両者はぶつかり合い、そして別れた……。
全ての元凶【黒木】を潰す為、【江ノ本】は人通りの多い駅前へと歩みだす。その様子の一部始終を偶然目撃した【立花】も「面白そうだから」と言う理由で彼女に着いていくが道中、そのデリカシーの無い行為が【夏美】に見つかり自宅へと強制連行されていくのであった。(第二章)
その日、駅前の交差点で大規模な交通事故が発生した。翌日から、『私立車谷高校』の生徒のみを狙った連続傷害事件が始まる。全ては【赤石】が裏で糸を引いていた。わざと【緑沢】に暴力沙汰を起こさせるよう仕向け校内で【江ノ本】との距離をあけさせる。その隙に【黒木】を【緑沢】に接触させ撹乱、破局へと追い込み、それを恨んだ【江ノ本】に【黒木】を襲撃させたのだ。彼は【江ノ本】が生まれつき持つ『死』を呼び込む能力を利用しようと目論んでいる。その能力の覚醒の為【黒木】を使い捨て、そして何食わぬ顔で彼女に接触、能力を利用し世界の理不尽をなくし『平等』にしようじゃないかと彼女に詰め寄り、賛同させると団体『COP』を設立。校内で弱い立場にある人間を集め強者を次々に葬っていくのだった。【江ノ本】の元恋人【緑沢】も……(第三章)
『連続高校生傷害事件』から二週間近くが経過した。【緑沢】襲撃のとばっちりを受けた【立花】は【夏美】と帰路に着いていた。同じく幼馴染で『車谷高校生徒会長』の【水無月 龍太郎】の忠告「危険だからおとなしく帰宅しろ」を復唱する彼女であったが【立花】はどこ吹く風。【夏美】を巻き込み『車谷ショッピングパーク』へと出かける。そこで彼は【赤石】を発見。そのまま団体『COP』の勧誘をうけ、入団しようとするも【夏美】の横入りにより失敗。【赤石】に反感を買い【立花】は『COP』全体を敵に回す結果となってしまったのだった。(最終章・一話)
「え~、ですから、ニュートンはリンゴが木から落ちる様子を見て、万有引力を発見する事が出来たんですね。その公式が先ほど黒板に書きました――」
私立車谷高校校舎4階に位置する『1年1組』の教室。一見したところ、普通の物理授業を行っているかのように見えるが、他の教室と違って明らかに異質な空気感を漂わせていた。
教師を含めた全員の目が据わっているのだ。ある者はすべてをあきらめてしまったかの様に虚ろな目で……またある者は強い信念を瞳に宿し……。おおよそ事情を何も知らない人からすれば、これからここで起こり得ることなど皆目見当もつかないのであろう。リズミカルにカチカチとビートを刻む壁掛け時計の針はもうすぐ昼休みだということを見る者に伝える。
これから起こるのは、この呪われた1組の宿命。誰一人、抗うことは出来ない。あの長い針が6を指すとき、この教室を混沌が包み深淵からカオスが生まれる。
物理担当教師が公式の説明を止め、分厚い教科書を≪バン!!≫と音を立てて閉じる。直後に、まるでそれが合図だったかのようにこのクラスにとって呪いの鐘である『四時限目終了のチャイム』が校内中に響き渡るのであった……。刹那、静寂だったこのクラスの均衡は破られ、現れた時空の歪からガラスを破壊することに憑りつかれた魔物が解き放たれる。
窓ガラスに席が近い生徒は、鳴り始めと同時に安全ゴーグルに『安全第一』とプリントされた黄色いヘルメットを装着。先生は先生で、魔物討伐の為、職員室より持ち出したエクスカリバー(ただの防犯用の刺又)を携え、実に5094通りの策を弄し、この教室にトラップを張り巡らせていた。
もはや、袋のネズミ……とほくそ笑む教師を哀れみの目で見つめる生徒たち。彼がいくら策を練ろうが、『奴』はいつもそれを掻い潜ってきたのである。今更、何をしようと成功などありえない。暴走機関車の暴走はだれにも止められないのだ。
さぁ、クラスの準備は整った。『いつもの光景』が、今、1年1組を………………。
「…………ん?」
チャイムは当の昔に鳴りやんだ。なのに、いつまでたってもあの耳を劈く大きな音と、物理教師の断末魔に近い悲鳴が聞こえてこないのだ。生徒はその『いつもとは違う光景』におかしいと困惑する。
彼は未だかつて、ガラス割りに失敗することはあっても、割ろうとする行為そのものを行わなかったことは無かった。もしかして、先生の仕掛けた無意味なトラップが発動して……そう思った一部の生徒があたりを見回すが、そんな兆候も一切見られない。それどころかチャイムが鳴り終わったというのに、彼は自らの席にとどまっているではないか! それだけではない、彼は黒板に板書しているものを書き写していた!!
「な、なんだって…………た……立花が……真面目に授業を受けているっっっっっ!!!! だとっ!!」
防犯用ネットランチャーに持ち替え、窓際に布陣を展開していた物理教師は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
「先生、物理の公式について分からないところがあるんですが教えてもらえませんか?」
そんな教師の叫びもどこ吹く風で、普段勉強を行うものが吐くはずのセリフを吐く。
「たっ……立花が先生に敬語だって?!」
「あ、ありえないわ。あの立花君がノートを取っているなんて」
「どうしたってんだよ立花! いつものお前を俺たちに見せてくれよ!! お前はそんな所で諦める男じゃなかっただろう?!」
「割ってよ! いつもみたいにガラスを割りなさいよ! 立花君!!!!!!」
「あぁ、神よ。あなたは遂にこの醜い世界を見限り、終焉へと導くというのですね……。アーメン。私は祈ることしかできない無力な男だ……。ううっ……」
「イヤァァァァァァ! もう終わりよぉぉぉぉ。地球は滅亡するのよぉぉぉ」
その、いつもなら絶対ありえない、考えられない、想像すらも出来なかった『真面目な立花』の姿に、次第にざわついていく生徒たち。先生までもが、
「立花、何か辛いことがあったんだろう? なら先生に話してくれないか?」
と、彼の常軌を逸した行動に心配の声を上げる始末。彼ほど『真面目』と言う言葉が似合わない男は世界広しといえどそうはいないだろう。
しかし、渦中の張本人立花はそんな彼らの阿鼻叫喚っぷりには目も暮れず、淡々とノートを取っていく。その姿は普段からまともに勉強をしている人間のそれと実に一致していた。その風貌からは、ガラスを割りそうな気配など微塵も感じられないほどだ。
「やめて! 立花君! それ以上……それ以上黒板を書き写したらあなたじゃなくなっちゃう!」
「落ち着け立花ぁ。早まるんじゃないぃ」
「そうよ! 立花君! うっ……いつも通りガラスを割ってよぉ」
「みんな、いつも僕のわがままに付き合わせちゃってゴメンね。許してもらおうなんて虫のいい話だけど、少しでも誠意を見せて許してもらおうって思ってね。みんなとはもう少しでお別れだから……最期くらい…………迷惑かけないように……そう思ったんだ。みんな今までありがとうね」
立花はそう言ってやつれた笑顔でクラスメイト達に微笑んだ。
「オイ……一人称が僕って…………本当にどうしたんだよ!」
「割ってくれよ! いつもみたいに……お前の元気な姿俺たちに見せてくれよ……」
「あなたがガラスを割ってくれるおかげで、このクラスは一丸になれていたのよ……。引っ込み思案で、中学の頃、誰にも相手にされていなかった私が、高校になって初めてクラスに溶け込めたのは……あなたのおかげなのよ! お礼を言うのはあなたじゃない! 私の方なのよ」
クラス一のギャル女がそう言った。
「最近頻発している『高校生連続傷害事件』の被害者も0欠席者も0のこのクラスの雰囲気を作ってくれたのは委員長の俺じゃない。お前なんだよ、立花! だから謝らないでくれよ。これが最期だなんて寂しい事……言わないでくれよ……」
「そうだぞ立花! いつオレ達がお前にメーワクしてるって言ったよ? 何を勘違いしているんだ。いつだってオレは、いや、『オレ達』は元気な姿を見せてくれるお前の味方だぜ!」
「みんなの言う通りだ。先生もなお前のおかげで退屈だった教師生活もそうじゃなくなったんだ。お前なしではこのクラスも、俺も、誰一人成り立たないんだぞ。だ、だから……いつまでも元気な立花でいてくれよぉぉぉ」
「立花!」
「立花君!」
「立花!!」
「立花殿!」
「立花ぁぁぁ」
「斎藤!!」
「立花!!!!」
「立花……」
「うっ……みんなありが……ありがとうぅぅぅ。僕はこんなにも沢山のいい人に囲まれて日々を暮らしてたなんて……幸せ者だよぉぉぉ。で、でも……でも本当にごめんね。うわぁぁぁぁん」
「やめろよ……泣くなよ……グスッ」
「うわぁぁぁぁ! 立花ぁぁぁ」
「うっ……ひぐっ……」
教室内には嗚咽と立花の名を呼ぶものの声で満たされていた。
如何に彼がクラスメイトに愛され、如何に必要とされていたのか。クラスメイト達の言葉に嘘偽りはない…………ハズだ………………多分…………。
そんなクラスの異様な光景を夏美は、校長が対立花用に特注した防弾ガラス越しに白い目で見つめる他なかった……。
「なに……これ……」
彼女の発言は至極当たり前の感想であると言える。
「よし! 心理カウンセラーの資格を持つ校長に、このクラスで言えないことを聞いてもらえ。一人で抱え込んでいても何も解決しないからな。校長からは俺が連絡するから。おい、竹田、斎藤、立花を校長室まで送ってやってくれ」
「「御意」」
「お前は一人じゃないんだからな」
「うっ……はい、先生ぇ、ありがとうございまずぅぅぅぅ……」
鼻水を垂らし、涙でぐちゃぐちゃになった顔で立花は二人のクラスメイトに介抱されながら教室を後にする。
「絶対元気になれよ! 立花!」
「お前が元気になるまで、俺らがガラス割っていてやるからな!」
「私も! だから絶対帰ってきてよね!」
「たとえ、神があなたを赦さないとしても、私はあなたの罪を赦します。元気になって帰ってきなさい。アーメン」
「先生! 僕たちの立花をよろしくお願いします」
「任せろ! 俺とこいつら二人で、命に代えても校長室に送り届けてやるからな!」
「うっ……うっ……」
「泣くなよ立花。おれ達がついてる」
「そうだよ。任せろ!」
「うん!……うん!」
その後しばらくは1年1組の周辺からガラスの割れる音が絶え間なくなり続けた。
「だから……なんなの…………これ……」
彼女の問いかけは、誰の耳にも届かなかった。
校長室に着いた立花一行は、立花が一大事だという知らせを受け、今までしていた仕事を中断させやってきた校長と生徒指導部長吉田に事の一部始終を伝えると、後を彼らに託し、1人1枚、校長室の窓ガラスをぶち破って部屋を後にした。
「なんであいつらは窓ガラスを割っていったんだ……?」
彼らのその理解不能な行動に戦慄する吉田。大穴が開いた窓ガラスからはひんやりとした冷気が入ってくる。
「どうした立花ぁぁぁぁ。ガラス代なんて今更きにしなくてもいいんだぞぉぉぉぉぉ」
隣では校長が涙を流しながら立花をしっかりと抱きしめていた。
「…………」
その光景はとても醜く汚く、吉田はただただ白い目で彼らを見守る他なかった。どうやら彼は夏美側の人間の様だ。
「何だぁぁぁぁ。何があったんだぁぁぁぁ。行ってみろぉぉ立花ぁぁぁ」
「あの校長、俺、仕事に戻ってもいいですか?」
「馬鹿野郎! 立花担当が生徒の心のケアより仕事優先とは何事か!」
「あの……担当になった覚えが……」
声を荒げて起こる校長に開いた口が塞がらない吉田。このおっさんのテンションについていけないな……。吉田はこのときそれをしっかりと実感した。
そんな折、立花がポツリポツリと事の一部始終を話し始める。
「僕もうすぐ、高校生連続傷害事件の被害者になるんです」
「「?」」
この言葉を聞いた二人は頭に疑問符を浮かべながらも、立花の声色からして冗談を言ってるわけでは無さそうだと判断し話しの続きを待つ。
「一昨日、夏美と白鳥ショッピングパークに行ったとき、偶然4組で無断欠席を続けている赤石君に出会ったんです。そこで、赤石君に『COP』に入らないかと誘われまして……」
「シーオーピー?」
聞いたことのない単語に思わず復唱する吉田。
「はい。COPです」
「なんだね、それは?」
「赤石君が言うには、社会的弱者を集めて強者をやっつけ、弱者同士仲良く助け合って生きていける、そんな理想郷を作る団体だ……とかなんとか。正直意味が分かりませんでしたが、夏美がぶっ飛ばせると聞いて加入を決意したんです。それなのに、夏美が横入りしてきて、赤石君と喧嘩して、晴れて僕は強者の団体『生徒会』を手引きした裏切者として狙われることになったんです」
「ちょっと待て待て。話が読めん。それと高校生連続殺傷事件と、何がどう関係するって言うんだ?」
「その事件と駅前の爆発事故、ヘリコプター墜落にホームセンター火災事故、全部COPがかかわっているそうなんです」
「あのなぁ、立花。俺は真面目に聞いているんだ。そんなわけのわからんことを」
「吉田先生、静かに。立花君、続きをお願いできるかな」
そこには、先ほどまでの校長の姿はなかった。その気迫に吉田も押し黙ってしまう。
「僕も吉田先生と同じ考えでした。COPの団長が『死』を呼び込むことが出来るなんて聞かされた時には、彼は薬でもやってるのかなぁって。でもその日、今と同じことを交番のお巡りさんに話したら、もちろん相手にはされなかったんですが、翌日その交番に乗用車が突っ込んで…………。それで彼が話していることが本当のことだったんだって分かったんです」
「その話は本当か?」
そう問いかける吉田の表情は動揺しており、明らかに先ほどの物とは異なっていた。まるで彼は何かを知っているような……立花はこのときそう思った。
「は、はい。だから誰にも言えなかったんです。言えば誰かが犠牲になると思ったから。ねぇ、どうしたらいいんですか? 助けてください。怖いんです」
立花は目に見えてやつれていた。目の下にクマ、頬はこけ、目は赤く充血している。
「なんでそんな精神状態で学校に来たんだ……家で休めよ」
「親が甘えてんじゃねぇと、半殺しにしてきまして……」
「…………」
「僕が! 一体僕が何をしたっていうんだぁぁぁぁ!! ガラス割りまくったからか! そうか! アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
泣きながら笑い叫ぶ彼の精神状態はだれが見ても明らかに異常だ。
そんな彼を尻目に吉田と校長はアイコンタクトを取る。
「立花君、とりあえず君は私と吉田先生の食堂優待券を渡すから、それでゆっくりご飯でも食べて休みなさい。今日から短縮授業もなくなって普段通りの時間割りだし、早引けしてもいいからさ」
「ありがとうございます……」
食堂優待券とは教師に一ヶ月一枚配られるカードであり、食堂メニューの一品だけ無料になるという夢のような券である。いつもの立花ならはしゃぎまわって喜びそうな代物だというのに、その充血した目に光は無い。
「おい、湯口。そこにいるんだろう。責任もってお前が食堂に連れていけ」
「は、はい。……気付いてたんですね……先生」
「当たり前だ」
フラフラした足取りの立花を抱えて校長室を後にした2人。その姿を見送った2人は深刻な顔をして口を開く。
「これは私たちが出ていく必要があるかもしれんな……」
「…………」
「これは私たちの贖罪だ。江ノ本君と湯口君には本当に申し訳ないことをしてしまった…………」
「分かっていますよ……十分過ぎるほどにね」
食堂では校長室を後にした2人がメニューを眺めていた。
「メロンパン……あと一枚あげるよ」
黄金の焼きそばパンが珍しくまだ残っているというのに、それを頼まず、小さなメロンパンを一つ購入した立花は残り一枚の優待券を夏美に渡し、近くの席へと腰掛ける。
「あ、あんた……ちょっと大丈夫なの?」
「うん」
「もう、いつまで女の腐ったみたいな感じでうじうじしてんのよ。あんたには、この無敵の筋肉女、湯口夏美様がついてんのよ? 私が守ってあげるからさ、安心しなさいよこのヘタレ」
「前々から思ってたけど、なんで夏美は俺の後を付けてくんの?」
「人をストーカーみたいに! なんでって、それはあんたが昔………………」
「?」
続きが一向に聞こえてこないことを不思議に思った立花が顔を上げると、そこにはさっきとは打って変わったような様子であたりをしきりに見回す夏美の姿があった。明らかに緊迫した空気を醸しだしており、なにやらただ事じゃない何かが起きていることが伺える。
おまけに、
「夏美、片目が黄色い……?」
その時、後ろから声が聞こえてきた。
「そうそう、知ってるか? この前打ち上げられた日本の人工衛星あったじゃん? 『玄武岩』だっけ? あれが昨日からトラブって行方不明らしい。もしかしてここに落ちてきたりしてー」
「やめろよ浜見、縁起でもない。まるで俺たちが落ちてくるフラグ立ててるみたいじゃんかー。はははは」
瞬間、食堂内は突然謎の光で満たされ、激しい轟音と地響きが起こる。
「危ない! 避けて!!」
夏美は光で食堂が満たされるのとほぼ同時に、机の上にあったカレーライスとメロンパンを弾き飛ばすと、立花の顔面めがけて思いっきり蹴りを入れぶっ飛ばした。
大きな爆発音にガラガラと何かが崩れていく音。立花は夏美に突然蹴られ朦朧とする意識の中で蹴られた意味を考える。
「なにか気に障ることしたかなぁ……」
その日、食堂は文字通り潰れた。