そのⅣ 【江ノ本 香】
長らく更新してなかってごめんね!
ってことで人物紹介
【立花 睦月】この物語の主人公。え?彼のこと忘れちゃった?まぁ、仕方ないよね。次行こう。
【湯口 夏美】この物語のヒロイン的な存在。え?この子も忘れたの?筋肉女だよ筋肉女。思い出した?
【緑沢 健二】バカップル男だったが、黒木により仲違いにさせられる。
【江ノ本 香】バカップル女だったが、黒木により仲違いにさせられる。二人の喧嘩の行方は如何に……
【松下 冷弥】人物紹介に復帰した恋愛監視委員の一人。合法ショタである。
【松下 綾子】同じく人物紹介に復帰した恋愛監視委員の一人。超絶美女だが口調がウザい。語尾を伸ばすな。
【水無月 龍太郎】生徒会長であり、立花と夏美の幼馴染。
【生徒会書記】高慢で高飛車な物言いの女生徒。夏美に副会長の座を奪われてしまったために仲が悪い。
【石田 真弓】生徒会の会計委員であり書記の数少ない友人の一人。友人が事件の被害者に会い精神が崩壊寸前。
【生徒会庶務】影が薄い人物。バスケとかに出たら使えそう。
【校長】ホモ疑惑のあった人。受け説が有力だった。
【吉田】ホモ疑惑のあった鬼の生徒指導野郎。どうでもいいが未婚である。
【黒木 えり】指示を受け緑沢と香を仲違いさせた悪女。香との喧嘩の行方は如何に……。
【赤石 優一】立花の友人で夏美のクラスメイト。香の部活後輩である人物。情報通らしいが真偽の程は如何に。
閑静な住宅街から少し離れた山の入り口に建設が中断され骨組みを剥き出しにしたままのビルがある。
普段なら人はおらず、ひっそりと静まり返っているはずのこのビルにコツコツと響くいつもとは違う何者かの足音。
音の主は無言で、薄暗く埃のかぶったコンクリートの階段を一歩、また一歩と登っていく。
その瞳に光は一切無く、まるで魂が抜けてしまったかのようなフラフラとした足取りで吸い込まれるかの様にビルの屋上へと進んで行く。
彼の名前は松井政義。私立車谷高校に通う二学年の生徒である。
松井は小さな頃から正義感が強く、曲がったことは許せない性格を持っていた。
困っている人がいれば手を差し伸べ、間違えた事をした人がいればしっかりと注意をする。見て見ぬ振りは決してせず、みんなの為になることはたとえどんなに面倒な事であっても率先してやる。そういう強い信念を持った行動は周りの人間を虜にし、彼の周りにはいつも人集りが出来ていた。
しかし、裏を返せば融通の利かないというその性格は、年齢を重ねるごとに徐々に周りから煙たがられるようになる。
それでも彼は自分の信念に従い続けた。この世には白と黒しかなく、いつも白である正義が絶対正しいと言うことを信じて…………。
…………気付けば周りには誰もいなかった…………
もう誰も自分にはついてこない。
だけどいつかは報われる日がきっと訪れる……だって自分は何一つ間違ってはいないのだから……。
ある日、クラスメイトがイジメにあっている現場を目撃『してしまった』
彼はいつも通りその信念に従い、止めに入る。
そこで初めて、彼は【暴力】を知った。
ボコボコにはされたがイジメを止める事が出来た……一人の救いを求めていた人を助けることが出来た……それだけで……それだけでいいんだ………。
次の日、教室から自分の机が消えていた。クラスメイト達はまるで自分をいない物、存在していない物として誰も相手にしなかった。
誰にも自分の声は届かなかった。
「あ、あの……これは一体どういう……」
「ご、ごめんなさい話かけないでくださいごめんなさい嫌なんです今より酷くなるのごめんなさいごめんなさい」
昨日助けた子にさえ…………。
彼は初めて【裏切り】を知り、そしていかに自分が【無力】なのかを知った。
『力なき正義は無力である』とはよく言った物で彼がそれに気付くのは全てを失った後だった。
「こんな……こんな世の中間違っている…………。なんで正しい事を言うのに力を持たなければならないんだ……。なんで白と黒以外で表現出来る色があるっていうんだ……」
気付けば彼の目の前には夕日で真っ赤に染まった車谷市が広がっていた。
肉体的に精神的に疲弊しきった彼は、力のない目を静かに閉じると
「もう……疲れちゃったなぁ……」
今にも消えてしまいそうな弱々しい声で呟き…………そのまま屋上から………………。
「ちょっと待ちなさい。答えを出すのが早すぎるんじゃないかしら?」
彼の背後から女性の声が聞こえて来たのはちょうどそんな時だった。
寸前で踏み留まった松井は突然の事に驚き、声の主がいる方へと振り返る。
「だ、誰ですか? あなた……いえ、あなた達は?」
そこには、自分と同じ学校の制服を着た一人の女と、その傍らに、まるで女の従者の様に頭を垂れて控えている男の姿があった。
普段、人が寄り付かないこの場所に現れた二名の人物。深く考えるまでもなく自分の後をつけて来たのだと分かる。
「ここまで僕を追いかけて来たんだ…………。これもあの子達の命令なんだろ? なら伝えといてよ、僕は今から消えるってさ。ハハハ。君達からすればこんなに嬉しいことはないだろう? 普段からルールにうるさいクラスの邪魔者が一人消えるんだから。でも安心して、特に誰が悪いとか共犯者は誰とかそう言うのは考えていないから。全部……全部僕の力が足りなかった…………ただ…………ただそれだからさ……」
弱り切った顔で二人から視線をそらすともうすぐ沈もうとしている夕日を見つめながら、まくし立てるかのようにそういい終えた。
その様子をただ静かに聞いていた彼女は表情を少し和らげて口を開ける。
「何を勘違いしてるの」
「え?」
「だから私は言ったでしょう? 答えを出すのが早すぎるんじゃないかってね」
そのあまりにも予想外の答えに視線を二人へと戻す松井。
そんな松井の様子をみた傍らの男はおもむろに立ち上がり松井の方へ歩き出すと、ここでようやく口を開く。
「君は理不尽な理由で虐められていたクラスメイトを助けてしまったが為に不良に、それを黙認していた『集団』に目を付けられ、クラスで孤立。遂には助けた子にまで裏切れてしまった無力で哀れな松井 政義君…………でよかったかな?」
薄笑いを浮かべながら男がそう言った。
まるで自分の全てを見透かしたかのような冷たい目で…………。
時は今から二週間前の『あの事故』が起きた後まで遡る。
たった一瞬。その一瞬で全てを地獄へと変えた駅前。
その一瞬が起こる前まで江ノ本 香と大喧嘩していた黒木 えりは、突然の出来事に戸惑いを通り越しパニックを起こしていた。
気が付けば、うつ伏せの状態で地面に倒れている自分の上に黒澄んだ『何か』の塊がのしかかっていた。この状況は彼女をパニックするには充分すぎるだろう。
先程までその喧嘩の様子をカメラに収めたり白い目で見ていたギャラリーのいたであろう場所には燃え盛るバスの残骸が…………
とても良い香りをさせていたカフェ『スターバケイション』通称『スタバ』が店を構えていたビルは無残にも崩壊し瓦礫しか残っていない。
右をみても左をみても炎、炎、炎。
とりあえず自分の身の危険を誰かに知らせようと『何か』の塊から抜け出そうとする黒木だったが、いくら踏ん張っても抜け出せる気配がみえない。それどころか、下半身に一切の感覚が無いことがわかった。
近くに転がっている、生前眩い輝きを放っていた飲食店の看板だったであろう黒い物体に右手をかけ、もう一度同じ試みをするも結果は変わらない。
そんな阿鼻叫喚の地獄の真っ只中で悪戦苦闘する彼女の邪魔をするかのように熱で支柱が溶けたのか、伸ばした右手首の上へと、機能を失った信号機が勢い良く倒れ込んで爆音を放つ。
「…………!!」
その衝撃とあまりの痛みに声を上げたはずの黒木であったが、熱で喉がやられてしまったのか、声すらも出ない。
彼女の頭に浮かぶ『絶望』の二文字。
ほんの数分前まで賑やかだった駅前の交差点。
そこの人々の日常を奪っていった一台のタンクローリー車。
「アハハハハハハハハハハハ。そうだったじゃない……これが本来の私のあるべき姿。最高じゃない」
閻魔大王も目を背ける程の悲惨な状況の中、一人だけ何故か無傷で高らかに笑う女。江ノ本 香の姿がそこにはあった。
「やっぱりそうだわ。裏切られるのが嫌なら最初から関係を持たなければ良かったのよ。そうすれば……こんな気持ちにならずに済んだのに……」
そういう彼女の足元には、こちらもなぜか爆発の影響を一切受けていないちぎれたネックレスの残骸が転がっていた。
「これはこれは…………とても見事ですよ……江ノ本先輩……」
「…!」
「あら? なぜ赤石君、あなたが『無傷』でここにいられるのかしら?」
突如、香の背後からやってきたのは彼女の部活の後輩、赤石 優一。
この人物を見た黒木は驚愕する。
江ノ本 香を妬んでいた黒木 えりをそそのかし、緑沢 健二との仲を引き裂く計画を立案、実行へと移すよう指示した張本人であり、諸悪の根源。それがあろうことか彼女同様にこの状況を『無傷』で切り抜け、敵であるはずの香の隣にいる。
「な………で、………なた………が……」
お願い、今だけ……今だけでいいから出て……私の声……
何故だかは知らないが、奴はこうなると分かった上で私を利用した。
何を考えているのか検討も付かないけど、あいつのしたことを江ノ本に言って計画を台無しにしないことには悔しくて死んでも死に切れない…………
そう直感した彼女は薄れゆく意識の中まだ残っている左手で辺りを探る。
すると想いが通じたのか、運良く携帯電話を見つける。電波も無く液晶画面にヒビが入っているが使える。これを使って…………。
彼女はカチカチと左手のみでメール画面に赤石 優一が自身と共に働いた悪事の全てを記す。そしてそれを全身全霊、全ての力を込めて香の方へと投げつけた。が、弱り切った彼女の力では飛距離が足りず、それは二人の少し手前で落下。そのことで赤石に自分の存在がばれてしまったが、そんなことは黒木にとってどうでも良かった。
その携帯を江ノ本が見てくれれば………きっ……………と…………。
「黒木さんこんにちは! お世辞にも良いとは言えない君の小さな頭でよく頑張ったね! これが香君へと渡っていたら計画が全て潰れるところだったじゃ無いか! ハハハ。でも少し足りなかったかな?」
赤石は落下した携帯を香が気付く前に回収し、相変わらず何を考えているか分からないニコニコした笑顔で黒木へと近づくと
「じゃぁね! 運が良ければ、また来世で会おうじゃ無いか!」
そう言い、既に力尽き動かなくなった彼女の隣に携帯電話を置いた。
黒木 えり……彼女の人生はここで呆気なく幕を閉じた。とても不幸な『事故』にあい……。
「ま、彼女、自分の彼氏を浮気したとかで既に殺しちゃってそれをバレないよう隠してるし、その時点で同情の余地全く無いんだけどね。ハハハハハハ。死は死でしか償えないって事をよく弁えろって事だねぇ」
「そこで何してるの?」
「いえいえ! それでは話を戻しましょう」
先程とは打って変わった口調で話し始める赤石。
「僕は、あなたのその『死』を呼び込んでしまう『能力』を人助けに活かせると考えています。どうです? 一緒に来ませんか?」
ニコニコ笑顔でそう言った。
「松井さん。あなたに一つの予言をしましょう。なんの落ち度もない、正しい事をしたあなたを迫害したクラスメイト達。奴らは今から一分後、とてもとても不幸な『事故』に巻き込まれ二度と目を覚まさなくなるわ…………」
迷いの一切ない彼女の口から放たれる非現実的なセリフに戸惑う松井。
「あの……一体、何を言ってるんですか?」
「目には目を、歯には歯を、悪にはあ…………いえ、なんでもありません。今、あなたはここで死にました。つまり死には死を持って償わせなければなりません」
「あなたがここで諦める必要なんてないのよ。だっておかしいと思わない? 正しい事をしているのに迫害を受けるなんて。松井 政義君、あなたが行った行為は決して間違ってなんかいないのよ。だからもっと………」
「何を……何を知ったような口を……」
今まで物静かだった松井が声を荒げる。
「理想論はもう聞き飽きたんだ! 間違っていないって言うなら何故僕は周りから嫌われた? 何故仲間外れにされた? 何故……なんで……どうして……裏切られなきゃ……どうして友達がいなくなっちゃうんだよぉぉぉ!」
耐えられなくなった彼の目から大粒の涙が零れ落ちた。
「知ってたよ……この世が正しいことばかりで動いてるわけじゃないってこと。白と黒だけじゃない……グレーって色が存在しているってこと…………でも、そんなのっておかしいじゃないか。頑張った人が虐げられ、楽して不正をしてきた屑がのさばる。こんなことあっていいわけないじゃないか!」
溢れでる感情に歯止めが効かない彼は無様に泣きながら大声を張り上げる。そうやって全てを吐き出した彼の耳に、遠くの方から『ボンッ』という爆発音のような物が入ってきた。
「? ……今の音は?」
「あなたのその想いが神様に通じたのかもね……」
静かに答える彼女。
「私たちにはあなたの何の穢れもない『正義の心』が必要なの……。確かにあなたの言う通り、この世にはグレーが蔓延っているのかもしれないわ。でも、それはあなた一人の力ではどうしようもできないことなのよ……」
「そ、それじゃぁ、僕はどうすれば良かったって言うんですか……」
彼女の言葉に今にも消え入りそうな弱々しい声で聞き返す松井。
「あなたの敗因、それを分かっているかしら? それは『統率の取れた集団』に一人で立ち向かったことよ」
「我々は学校内で迫害され、居場所が無くなった生徒達を救い、悪に正義の鉄槌を下す為の団体『COP』」
「シーオーピー?」
「一人一人、力の弱い者同士が協力して強者を駆逐する。復讐の集団ってところかしら?」
二人は交互に説明していく。
「あなたのその信念。貫き通す為に私たちと一緒に来てくれないかしら? 私たちを助けてくれないかしら? あなたの力はここで殺すにはおしすぎる」
「一人で悩む時間はもう終わりです。我々はあなたの味方なのですから」
自分に味方してくれる仲間がまだいたんだ…………
まだこの信念を持ち続けてもいいんだ………
松井は大粒の涙を流し続けながら
「こんな僕でもいいなら、是非、連れていってください!!!」力強くそういった。
「ようこそ我々『COP』へ。私の名前は『赤石 優一』」
「あなたなんで私より先に自己紹介をしてるのよ……。私は団長の『江ノ本 香』ね!」
「これからよろしくお願いします!」
夕日が沈みきった事により辺りはより一層静けさを増す。
遠くからはけたたましいサイレン音がいくつもいくつも鳴り響いていた。
立花「…………」
冷弥「…………」
綾子「…………」
立花「何なんだこのスペースは!」
冷弥「僕たち全く本編登場しないから、少しでも出番増やす為の救済処置ですよ! 全く、主人公だからっていい気なもんですね。役立たずの癖に」
立花「ところでお前誰だよ?」
冷弥「」
綾子「え〜、このスペースでは恋愛ブレイカー(笑)の素朴な疑問とかキャラクターをゲストとして呼んで、まぁ早い話茶番劇を繰り広げる完全に作者の自己満足スペースで〜す!」
冷弥「興味の無い方は飛ばしても物語上特に問題ありません」
立花「でも、ここスクロールしないと次の話へ進むボタン押せないじゃん」
綾子「はい、そういった仕様上の問題は、なろう運営に問い合わせてくださいねぇ〜」
冷弥「ここの司会を担当するのが」
綾子「私、恋愛監視委員所属恋の監視委員こと松下綾子と〜」
冷弥「この僕、恋愛監視委員所属愛の監視委員、松下冷弥です」
立花「お、おぉ、勝手にやっててください。オウエンシテマス」
綾子「なに他人事みたいに〜。次話ゲスト君だよ〜」
立花「え、なにそれ、辛っ……」
冷弥「まぁ、人生そんな物ですよ」
立花「ところでお前はなんなの?」
冷弥「」
〜Fin.〜