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懐かしい気分
――だから、今日のように、マユちゃんと一緒に並んで歩くのも新鮮で、どこか懐かしい気分を味わう。
もう冬に差し掛かろうとする季節なので、空は既に明るみを失っている。私は、一回自宅に戻り、鞄と体操服を置くと、母に友達の家に遊びに行くから、帰宅時間が遅れることを電話して伝えた。マユちゃんの家に遊びに行くということは、伝えなかった。
伝えられなかった。
マユちゃんは早足で歩く。私から逃げるような速度で、私がストーカーをしているのでないかと、錯覚するほどに早い。
ふと、マユちゃんが急に立ち止まる。私は急に止まれなくて、そのまま背中に鼻から突っ込んだ。「痛い」
「ごめん。それよりも、どうしたの? 止まって?」
「ん、着いたよ」
マユちゃんはさっと横に体を動かすと、ぱっと視界が開いて、大きな家が聳えているのが目に映る。白くて、もう空は薄暗いのに、光を灯っているように輝いている。……と思ったら、横にある外灯の光を反射しているだけだった。
「どうぞどうぞ~」
腕を掴まれ、ぐいっと引っ張られ、傍目からは確実に強制的に、私はマユちゃんの家に連れ込まれた。