表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
If`s online  作者: いろり
VRMMOナニそれ?
2/21

いふ2

「雪野五日です。よろしくお願いします。」


 六月という訳の分からない時期に、東京から我がクラスに転入してきた男子生徒は、大して面白味もないテンプレな挨拶を繰り出した。


 ぼさぼさの長い髪に、黒縁のフレームの大きな眼鏡、第一印象は根暗。目元の目深まで前髪が掛かっているため、表情が読み難い。


「じゃあ…見崎の隣り空いてるな。あそこ座って。」


 転校生に付いて一限目にやって来た担任は、歴史教師に授業遅延の謝辞を述べて教室を出て行く。

 転校生が歩き出し、私の隣へとやって来る。近くで見ると、私が彼を見上げるカタチになる。


「あれ?」


 つい言葉が漏れる。


「よろしく…。」


 小声で、彼は私に挨拶して笑顔を作る。

 前髪が風に流れ、柔かな瞳が私に向いていた。目元の泣きほくろが印象的だった。


 この人、良く見たら綺麗な顔してる…。

なんで、地味だなんて思っちゃったんだろ。


私の疑問が、解けないままに歴史の事業は再開された。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 歴史の授業は進み、中盤戦を迎えたところで、隣りに座った転入生は机に突っ伏し、動かなくなった。


 ええっ、初日から!?


 驚く私に何故か、歴史教員・高松孝史(34)独身 の視線が突き刺さる。


 私、関係ないじゃん…!


 私の叫びを知ってか知らずか、高松孝史(34)魔法使い(笑) が私に声を掛けてくる。


「…見崎。この関ヶ原の合戦はいつ起こったか、言ってみろ。」


 私は、必死で教科書を捲る。


 いや、まだやってないところなんですけど!


「ああ、もういい。じゃあ、隣りの…雪野、言ってみろ。」


 あの野郎、私をかませに使ったな。


 私は、早くも(笑)後ろに下がり始めている高松孝史(34)教諭の前髪に呪いを込める。


「はあ、1600年です。」


 隣りで寝ていた男から、なんと無しに答えが発せられた。

 一番驚いたのは、質問した本人だろう。ちなみに二番目は私だ。


 あんた寝てたでしょ。


 転入生は質問に答えて、再び眠りに就く。

 高松…もう良いか は悔しそうに板書へと返っていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「今日はここまで。」


 就業のベルで四限目の授業が終わり、昼食タイムがやって来た。…そして、聡美ちゃんがやって来る。勿論、ゲームの勧誘だ。


「だから、やんないって。並ぶの面倒過ぎるし。」


 朝と同じ、会話をしている気がする。違ったのは、今日の四限分の私の授業ノートを写している隣りの転入生くらいだろう。…ちゃっかりしてやがる。


 あろうことか、彼は今日の寝飛ばした授業の写しを、私に頼んできたのだ。貸してやる私も私だが、その図太さに感心してしまう。


「あれ、見崎さんはゲームやるでしょ?」


 突然顔を上げた転入生くんは、良く分からないことを言い出す。


「えっ?やらないよ。面倒だし。」

「へー…そう、やるって訊いてたけど…。」


 誰にだ。と問い詰めようとすると…、視界が聡美ちゃんでいっぱいになった。

 うん。…近い。


 疑問の答えを聞くことはできないまま昼休みは終わり、残りの授業を消化していく。次第に私の疑問は薄れ、終いには消えていった。

 繰り返される日常に、少しの満足と退屈を抱きながら今日も一日が過ぎていく。今日もそしてこれからも、変わることの無い日常が続いていくと、私はその時…そう思っていた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ