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If`s online  作者: いろり
VRMMOナニそれ?
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いふ1

筆者はネットゲームをした経験がありません。ので、これまで読んだらノベやゲーム、漫画、妄想等々から色々と引っ張ってきています。お許しを。

 夏休みを約一月前に控えた、高校二年の六月の初夏。

 太陽は今日もさんさんと照りつけ例年よりも早い夏の到来に、私はノックダウン寸前だった。


「太陽のバカやろー!」なんて叫んでみたり。…いや、実際にはしないけれども。


 ホントいうと、太陽だけのせいじゃ無いんだけれど…、そんな落ち込みモードの私の体がぐわんぐわんと揺れた。


「秋っ!ピアノのコンテスト、ダメだったからってそんな落ち込まないで。ほら次がまだ有るんだから。」

「でもね、聡美。私今回のに、懸けてたんだよ。」


 聡美ちゃんは中学の頃からの仲で、このクラスでは一番仲が良い友達だ。


「秋、人間終わった事を悔やんでも意味はないの。だから次に懸けなさい!」


 聡美ちゃんは良いことを言う。


「だからね、秋には、とりあえず次に向けて気晴らしをする必要が有ると思うわ。」


 そんな付き合いの長い友達だからこそ、聡美ちゃんの本当の目的を私は知ってしまっている。


「…やらないよ。ゲームなんて。」


 先読みした私の一言に、聡美ちゃんの笑顔が凍った。


「な、何でソレを!」


 聡美ちゃんはゲーマーだ。それも廃人クラスのネットゲーマーだ。


「なんでって…、今何処行っても[あのゲーム]の噂で持ち切りじゃん。」


 テスト前にも関わらず、クラスのテンションは上がりっ放しだ。こんな状況下で、聡美ちゃんがゲーム以外の話をするはずが無い。


「だからこそ、だからこそだよ!秋ってば[if`s]もやってなかったんでしょ?新しく出るonlineは絶対やるべきだって!」


 聡美ちゃんの熱弁を聞き流し、日差し避けのカーテンの外側へと潜り込む。


「はあ、暑っつ…。」


 眩しいほどの光量が、肌を刺激する。


 窓から見渡せば、十六年変わること無いセカイが広がっている。

 第三次世界大戦から丁度六十年が経過し、私達のセカイには戦争の名残など無いに等しい。敗戦国として国名を剥奪され倭国と呼ばれようとも、現在を生きる私達にとっては、何の思いも無いただの歴史の一コマに過ぎない。


 京都の街は今日も平和だ。……


「ちょっとーー、秋ってば!」


 聡美ちゃんがカーテンの向こう側から、私の体を揺する。


「一緒に買いに行こう。一人で並ぶのは暇が過ぎるんだよーー。」


 数年前に起こった科学技術の革新により、空間設置型ディスプレイや三次元での空間解析、把握が進み、ゲームといえば三次元での仮想世界に入り込み、アバターといわれる身体を動かして行うモノが、主流となった。そして現在最も流行しているのが、[if`s]というタイトルの格闘ゲームだ。

 このゲームでは、RPG的な要素が盛り込まれており、自身のアバターを育てて対人戦やら集団戦を戦う…らしい。聡美ちゃんからの又聞きだから、よく知らないケド。


「世界初のVRMMOに参加しないで、何にをするっていうのよー。」


 聡美ちゃんの熱が、暑苦しくてしょうがない。


「いや、だって…。そのなんだっけ…[if`s]ってゲームの続版みたいなもんなんでしょ。新しいのって。私、その[if`s]もやってないんだから、無理だって。」

「大丈夫だよ、データの引継ぎとかはできないし、今回の[if`s online]では戦闘だけじゃなくて生活系の遊びもできるって女の子にも注目されてるんだから。」


 言って、聡美ちゃんはカーテンの境界を越えてくる。


「それに、[If`s online]のセカイは異世界なんじゃなくて、私達の知ってるこのセカイが舞台なんだよ!」


 ?が頭に浮ぶ。ついにおかしくなったか聡美ちゃん。前々からそろそろか、とは思っていはいたけど…、この暑さにヤラレタかな。


「んっ?なにその目。ホントだよ。なんでも三次元ナビゲーションシステムのデータを元に造った仮想空間らしくって、この学校とか、自分の家とかが仮想空間内にも在るんだって。」

「へー……。」


 私は、驚きを隠して外を見つめる。


 現実世界と仮想世界がリンクする、その奇妙な感覚に惹かれそうになる。

 建物破壊とか出来たりするのかな、嫌いな人の家とか…破壊、面白そう。


 私は、にやける口角を解して戻す。


「だから、さ。一緒に買いに並ぼうよ。販売台数もかなり多めに出るって話しだしさぁ。」

「ちなみに、どれくらい並ぶつもり?」


 試しに訊いてみる。ほんの試しに、だ。


「丸一日くらい!」

「却下だね。」


 長すぎる。そこまでする程の熱意は流石に無い。


 私の体を喚きながら揺さぶり続ける聡美ちゃんを無視して、校門に目をやると、長髪の男子生徒が一人、門をくぐる姿が見えた。時刻は八時五十分。完全に遅刻だ。


「先生、遅いな。」


 私の興味は既に、今日の一限目の歴史の授業に移っていた。




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