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素敵なプレゼントの季節

作者: P4rn0s
掲載日:2025/12/24

私は包装紙の手触りだけで、それが何か分かってしまった。

厚すぎず、安っぽくもなく、季節限定の色。

レジ横に積まれていた光景まで、簡単に想像がつく。


「流行ってるらしいよ」


その一言で、確信は決定に変わった。

中身を見る前から、もう分かっていた。


箱を開ける。

やっぱり、雑誌やSNSで何度も見た“定番”。

誰にでも無難で、外さないと言われているもの。

それはプレゼントの形をしているけれど、

私という人間には、ほとんど触れていなかった。


私は笑う。

反射みたいに、練習し尽くした表情で。

ありがとう、と口にする。

それが正解だと知っているから。


でも、胸の奥が静かに冷えていく。


流行っているものを選ぶこと自体が悪いわけじゃない。

嫌になるのは、そこで思考が止まっていることだ。

私がそれを持っているかもしれないこと。

好みじゃない可能性。

似たものを、もう大事に使っているかもしれないという想像。


そういう「私に向かうはずだった視線」が、どこにもない。


私が嫌なのは、物じゃない。

浅い知識で選んだそれを、

「ちゃんと喜ばせた」と誇るような態度だ。


調べた。

ランキングを見た。

みんなが喜ぶって書いてあった。


その程度の工程が、

考えた証明みたいに扱われるのが、どうしても引っかかる。


本当に相手のことを考えるって、

面倒で、効率が悪くて、正解が分からない。

だから人はテンプレートに逃げる。

失敗しない道を選ぶ。

でもそれは同時に、

「私じゃなくてもよかった」という宣言でもある。


引き出しの奥に、同じような箱がいくつもあることを思い出す。

似た色、似た重さ、似た気遣い。

どれも私の生活を、少しも変えなかった。


本当に欲しかったのは、

高価なものでも、流行りのものでもない。

何気なく言った一言を覚えていてくれた証拠。

ほんの一瞬、目を留めたものを覚えていた痕跡。


プレゼントは、物じゃない。

向けられた視線だ。

私を見ようとした時間だ。


それを省略しておきながら、

「喜ばせたつもり」になれることが、

どうしても理解できなかった。


私は箱をそっと閉じる。

また引き出しの奥にしまうために。


失礼って、

乱暴な言葉や態度だけじゃない。

考えなかったことそのものが、

一番静かで、一番深い無礼になることもある。

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