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雪上での気付き ー周りの人と自分の関係ー

作者: こうゆ

拙い作文だとは思いますが、閲覧いただきありがとうございます。

初めて書いたものであるので、何卒暖かい目でお守りください。

あれの正体はなんなんだろう。視界の左から右に、右から左に消えていくたくさんのものを見ながら、白石想一はそんなことを考えている。あれらは今見ているフィルムを彩るためにただ動いているだけ。これが白石が思うあれらの正体。でもあれらは自分と同じ作りをしているからよく分からない。


正解にたどり着かない疑問について考えていたら、改札の中から手を振りながら近づいてくるものがある。

「ごめん、電車が遅れててさ。よしまだ最後じゃないね。」

「いつも通りだよ。」

「じゃあ、ちょっと一服してこようかな。」

そう言って氷川蓮はロータリーにある喫煙所に向かっていった。


1人になった白石はさっきの疑問についてまた考えることにした。目の前を横切るものとは違ってタバコを吸うというを動きをあれはするらしい。目の前にあるもの達を見ていると確かに色んな動きをしている。電話をしながら改札に入るもの。駅員として改札に通るものを観察するもの。改札に止められるもの。身につけているものも色々だ。スーツ、ポロシャツ、ダッフルコート、手袋。


その中から目立つ大きなドットの服を着た春日詩織が現れた。白石と目が合うと顔を緩めて笑顔で駆け寄ってくる。ちょうど蓮もロータリーの方から帰ってきたようだ。

「相変わらず遅いな詩織は。」

蓮は笑いながら言う。

「一服できたから結果オーライってことで!」

「詩織様には毎度感謝しております。」

「そうそう。感謝したまえ。」


ーーーいつも始まりはこんな感じだ。社会人がスタートした5年前の4月1日から全く変わらない。

3人が初めて出会ったのは、5年前の3月。東京駅の見えるビルの中にある大きな会議室で初めて顔を合わせた。4月から働き始める映画館を経営している会社のオリエンテーションで3人は、並んで座っていた。4月から一緒の職場で働くということで、蓮の提案で連絡先を交換し、入社式に一緒に行こうとい約束をした。同い年ということもあり、仕事終わりに飲みに行ったり、みんなで有給を取って旅行に行ったりした。


今日は、詩織が去年からハマっているスノボにしに新潟へ行こうと朝6時に新宿駅に集合した。

社会人になっても高速バスで行こうと提案した蓮は、高速バスに乗り込むと慣れた手つきで準備を進めている。その姿を横目に、白石は詩織と一緒に通路を挟んで反対側の席に座り、荷物の整理を始めた。

「今日がすごく楽しみでさ。昨日全然寝れなかったんだよね。」

「分かる。今日朝起きるの大変だったよな。」

「スノボ全力で楽しむためにバスは寝てようかな。」

「俺もそのつもり。怪我とか絶対したくないしな。」

「2人とも寝てたら蓮に起こしてもらお。」

横を見ると蓮はすでにイヤホンをつけてアイマスクをしていた。詩織も驚いた様子で蓮の方を見ている。

2時間は乗るものの、終点の1つ前で降りなきゃいけない。白石は寝るのを諦めた。


高速バスは白石たちと同じようにスキー場に向かうもの達で席が全て埋まり、まだ薄暗い朝の新宿の冷たい空気を纏いながら、発進した。

新宿を出発してしばらくすると、詩織もいつのまにか瞼を閉じて寝息を立てていた。白石はイヤホンを付け、自分の好きなアーティストを聴きながら過ごすことにした。

音楽に耳を傾けつつまたあの疑問が頭に浮かぶ。バスの中も、隣を走る車の中も皆同じ方向を向いて座っている。蓮と詩織もバスの一部かのように溶け込んでいる。その光景の中に自分がいることに、白石は気持ち悪さを覚えた。


白石たちは大手映画館チェーンで主にもぎりや売店で仕事をしている。色々なお客が訪れるが、どんなお客であっても同じ動きをする。チケットを見せ、エスカレーターを上っていきスクリーンの座席に座る。そして、みんなで同じ方を向いて同じ映像を見ている。スクリーンによって映像は違うものの、皆同じように動く。白石はその異様な光景がどうも受け入れられない。


白石がバスの中で感じた感覚は、映画館で毎日感じるものに似ていた。今の自分は、機械的に動いている周りのものと同じ動きをしている。白石想一という男は考えた結果動いているというのにーーー。

白石は気持ち悪さを感じながら、だんだん瞼が重くなっていくのに耐えられなくなってきた。限界を感じた白石は、スマホのアラームを到着の10分前にセットし、自分の身体が訴える欲に従うことにした。




何かに右肩を叩かれて白石は目を覚ました。イヤホンを外し、叩かれた方を見ると、キラキラした目で詩織がこちらを見ている。

「外見て!すごいよ!」

言われるがまま窓に目を向けると、そこには真っ白な世界が広がっていた。

年に数回しか見ない雪景色は、何度観ても白石の気持ちを高揚させる。白石の反応を見た詩織は、少し安心したような表情を浮かべた。

「やっといつもの想一の顔になった。なんか今日朝から怖い顔してたよ。なんか悩んでるならいつでも相談乗るからね。」

「そんな怖い顔してた?悩んでる訳じゃないから大丈夫だよ。」

詩織は何か言いたげな顔をしているが、白石が軽く笑って視線を前に向けると、また外に視線を移した。


腕時計の時間を確認すると到着まであと30分ほど。左手の方を見ると蓮は変わらず寝息を立てていた。

「ねえ、想一。」

窓の方を見ながら詩織が話し始めた。

「想一って今の仕事楽しい?」

詩織は普段あまり仕事の話をしない。そんな詩織から仕事について聞かれ、驚きながらも白石は仕事について考える。

「つまらなくはないかな。」

白石は仕事をしている自分を思い浮かべながら答えた。どっちつかずの答えが返ってきたからか、詩織は眉間に皺を寄せながらこちらを見てくる。そんな見られても困る。だってマニュアルに従って動くだけの仕事だ。面白みはないが余計なことを考えずに働くことができる。仕事に対して不満は無いため、白石はこの5年間同じところで働いている。

「聞く人を間違えたかもしれない。」

そう言って詩織はまた外に視線を移す。窓に写る詩織は、雪がきらめく山を見ていた。


ポケットの中でスマホのアラームが鳴った。到着まであと10分。蓮の肩を叩き、外との繋がりをもたせる。蓮は大きく伸びをしたあとのそのそと降りる支度を始める。白石も荷物の整理をして降りる準備をする。


「高根山駅。高根山駅。お降りのお客様はお忘れ物の内容にご注意ください。」

運転手のアナウンスと共に、バスは停留所に停る。ぞろぞろとバスから降りていく。白石たちも後ろに続いて出口に向かい、白い世界へ降り立つ。

「今日は楽しむぞー!」

詩織が両手を広げながら叫ぶ。先程までとは違い明るい表情を浮かべている。

「早くスキー場行こうぜ!」

寒さによって目が覚めたのか、蓮もキラキラした笑顔を見せている。


駅からスキー場までは歩いて10分程である。白石も2人の後を追い、歩み始める。

周りを見渡すと先程まで一緒にバスにいたものたちは、いつのまにかいなくなっている。まるで舞台袖にはけていったかのようだ。白石も身体が軽くなったように感じ、足取りが速くなる。




シーズン真っ只中ということもあり、スキー場はとても混んでいた。色々な色のスキーウェアを着た人が斜面を降りてくる。中にはコブを利用してジャンプする者もいる。自由に動き回っている様子を見て、白石たち3人は心を躍らせていた。


更衣室のコインロッカーに荷物を預け、スノーボードなどをレンタルへ向かう。レンタルカウンターで記入事項を書きながら、3人で今日の予定について話し合う。

「やっぱり頂上は行きたいよな!」

「お昼はカレーが食べたい!」

「どこのリフト使っていこうか。」

白石自身は特に希望がないため、2人の行きたいところをもとに、イメージをふくらませていく。


ボードをレンタルし、ゲレンデに出る。自動ドアを抜けると、とても眩しい景色が広がっている。目を慣らしながらストレッチをして、いざボードに足を左足を固定する。目の前のリフトの列を目指しながら右足で雪を蹴っていく。


リフトから下りたら、いざ楽しい時間の始まりである。自分が滑りたいところを好きなように滑る。周りの様子を伺いながらどこを滑るか考える。周りの状況から最適解を見つけ出す思考。他人に邪魔されずにこの思考をめぐらせる時間に白石は喜びを覚える。


何度か周回したあと、山頂を目指すことになった。いくつかのリフトを乗り継ぎながら上を目指していく。最後のリフトは2人乗りだったため、詩織と蓮が一緒に乗り、白石は1人で乗ることになった。

ゲレンデに目を向けるとたくさんの人が滑っている。たまにものすごいスピードで降りる人がいたりするので、ゲレンデをみているだけでも面白い。

それぞれが好きなことをしているゲレンデを見ながら1人で乗るリフトを楽しんでいると、前から2人がなにか叫んでいる。

「写真撮ってー!」

「いぇーい!」

2人にカメラを向けてあげ、目に映る光景をカメラに収める。そこには満面の笑顔を見せる2人が映っていた。


リフトが終点に近づくとゲレンデを滑る人が少なくなっていく。山頂が近い合図である。山頂に着くと、そこには隣の山のゲレンデが見えるほどの景色が拡がっていた。さすがに人の影は見えないが、高根山駅やキングスホテルなども見える。絵のような絶景を背に3人の思い出を残す。


リフトのある方角から風が吹いてきた。まるで早く飛び立とうとでも言いたげな心地のいい風だった。スマホをポケットにしまった後、白石は滑り始めようとした。

「ちょっと待って!」

後ろから詩織の声がした。振り返るともじもじした様子で詩織が続ける。

「上級者コース怖いから、初心者コースで下ってもいい?」

「俺も上級者コースは無理かも。」

蓮も苦笑いを浮かべながら言う。

このスキー場には山頂から下りるルートが2つ存在する。1つは乗ってきたリフトの横を通る上級コース。そして、もう1つは距離は伸びるが傾斜が少ない初心者コースである。

「あ、そうだ。気づかなくてごめん、、」

白石は慌てて2人の所へ戻る。そして、新雪の柔らかさに後ろ髪をなびかせながら、反対側にある初心者コースの入口へと右足で雪を蹴った。


初心者コースはなだらかで狭いコースである。人も多いため、あまりスピードも出せず自由に動き回ることができない。蓮はわざと斜面の方に行ってみたり、回転してみたりしながら進んでいる。小さい部屋でも自分で楽しみを見つけながら遊んでいる子供のようだった。一方詩織は、崖の方に落ちないように気をつけながら滑っている。白石は、この空間に物足りなさを感じながら2人の後ろを静かに滑っていった。


初心者コースを抜けると、さっきの2人乗りのリフト乗り場に出る。もう一度山頂に行くことになったため、今回は別の組み合わせで乗ることにした。今回は白石と詩織が一緒に乗り、蓮が1人になった。


リフトに乗って少し経ったとき、神妙な表情で詩織が口を開いた。

「私、転職するんだよね。」

そんな話は初耳である。白石は思わず息を飲んでしまった。白石の動揺を気にせずに詩織は続ける。

「自分で何か作るっていうことしたいなと思って。」

「ちなみになにするの?」

「デザイナー。」

たしかに詩織は映画館のチラシや売店のポップを作る担当も兼任している。デザイナーとして活動する詩織はとても似合っている。しかし、詩織がいない映画館は、全く想像できない。詩織が白石の見ているフィルムからいなくなろうとしている。これまでフィルムを彩っていたものが自分からなくなろうとしていることが信じられず、思ってもいないことを口走ってしまった。

「上手くいかないかもよ。」

「なんでそんな事言うのよ。想一なら支えてくれると思ったのに。」

詩織は、震える声で呟いた。ゴーグルの中で何か光っているように見えたが、ミラー加工が邪魔をしてよく見えない。白石はどうしていいか分からず、もぎりをするように動いてしまう手元を見つめていた。


遠くで蓮の楽しげな声がした。後ろを振り向くと一緒に乗り合わせた男性と一緒に盛り上がってゲレンデの人に手を振っている。まるで映画館で仕事をしている蓮のようだった。


山頂に着くと、詩織と蓮と別行動をすることを選んだ。さっき滑れなかった上級コースを滑るためである。リフト横のコースに入ると、思っていたより雪が硬かった。すでにいくつものコブが刻まれていた。滑っていてもまるでモーグルをしているような気分であった。


滑りながら白石の頭の中は、リフトで聞いた詩織の話でいっぱいであった。白石の見るフィルムの中でヒロイン的な存在である詩織が、自らこの作品を降りようとしている。脚本を作ったのは誰だ。詩織にクランクアップを言い渡したのは誰だ。スピードを上げてゲレンデを滑りながら白石は見えもしないその誰かに怒りを向けた。


待ち合わせ場所である初心者コースとの合流地点まで滑り、白石は初めて顔を上げた。目の前にはゲレンデを滑るたくさんの人がいる。リフトに乗って上を目指す人。白石の横を滑って降りていく人。決まった方向に流れているが、それぞれが違うことをしている。リフトに乗っていても写真を撮る人、話す人、水を飲む人。滑っている人も来ている物が違う。その光景に白石は既視感を覚えた。


そう。映画館である。白石は仕事をしている視界に映るものを思い出してみた。キラキラした目でチケットを渡す人。スクリーンから泣きながら出てくる人。感想を共有しながらエスカレーターを下りる人。そこには同じ方向を向いているが、別のことをしている人がいた。


白石は、やっと気づいた。詩織が降板すると決めつけたのは自分である。詩織は仕事仲間と括っていたのは自分である。白石の目の奥が熱くなり、リフトで詩織が放った言葉が頭の中で木霊する。


「想一なら支えてくれると思ったのに。」


そのとき、初心者コースから詩織と蓮が滑ってくるのが見えた。日もくれてきたためゴーグルを上げている詩織がいた。白石の目は、夕日に照らされる詩織の顔から離せなかった。こんなにうつくしい表情を独り占めしたいと、心の奥が静かに熱くなる。



2度目の山頂に到着した時、想一と詩織の様子が変なことに気がついた。いつもは想一を心が重なるような目線で見つめているのに、なぜか今は目に光がない。

「さっき初級に付き合ってもらったから、上級行ってきてもいいよ?下で合流すればいいし。」

一旦2人の距離を離すために、取ってつけたような理由を添えて想一に提案をしてみた。

「わかった。」

その一言だけを残して、想一は足早に上級者コースに消えていった。

「とりあえず、滑ろうか。」

詩織にそう声をかけると、小さく頷いて雪を蹴り始めた。小さく肩が上下に揺れているようにも見える。


しばらく進んだら、詩織のペースが落ちて蓮の隣にやってきた。

「想一にね。転職の話をしたんだ。」

詩織の転職。想一と離れるのが嫌で先延ばしにしていたことだ。蓮は1年ほど前から相談を受けていた。やっとの覚悟で転職を決め、今回の旅行で想一に言うと決めていたことも知っていた。

「想一が余計なこと言ったのか。」

蓮が大きなため息をつく。すると詩織は前を向きながら力強く言った。

「いつも感情が表に出ない想一がすごく動揺してたの。だから多分本心とは違うとは思うんだ。」

想一はほんとに感情が読めない。マイナスの感情だけでなくプラスの感情も分かりにくい。それをいつも的確に読み取る詩織がそう言うんだから間違いないのだろう。

「想一は変なやつだけど、悪いやつじゃないってのは俺もよく知ってる。落ち着いたらまた2人では話せばいいよ。」

「そうね。まだ伝えたいことも伝えてないし!」

そう言うと詩織はゴーグルを上げて、速度を上げて風を全面に浴びながら初心者コースを降りていった。羽を取り戻した詩織の背中を見ながら、蓮はもうちょっとだけ2人に手を差し伸べていこうとに決めた。



白石の頭の中はクリアになったが、詩織にどう接していけばいいのかは分からないまま、下まで降りてきてしまった。

レンタル品を返し、更衣室に着替えをしていると、蓮が突然声をかけてきた。

「なんかいいことでもあったの?」

「え?」

白石は動揺が隠せなかった。そんなに顔に出ていただろうか。白石が目を泳がせていると、蓮が肩を組んできて笑った。

「ゲレンデに可愛い子でもいたか?後悔する前に好きって言わなきゃ、一生会えないかもしれないんだからな。」

「そんなんじゃないよ!」

蓮の腕を肩から下ろしながら、白石はつい大きな声で否定してしまった。

「ふーん」

蓮がニヤニヤしながらこっちを見てくる。でも、今の蓮の言葉でわかった気がする。俺ーー白石想一は春日詩織が好きなのである。やるべき事は明確になっていた。


帰りのバス、行きと同じように蓮は1人で座り、白石は詩織と隣同士になった。ギリギリまで滑っていたため、発車時間間際に乗車した。


席について一息つき辺りを見渡すと、既に蓮は外部との情報を遮断していた。驚くべき速さである。ただ白石としてはありがたい状況であった。バスの中ではあるものの、詩織と2人きりの空間ができたのだから。

窓の方を見ると詩織は夜空に浮かぶ月を見つめている。窓に映る詩織と目が合った。詩織もこちらに気が付きゆっくりと白石の方を向く。顔が見えた途端、白石の心臓が加速したのが分かった。高速道路の入口、運転手も徐々にアクセルを踏んでいる。

そのとき、白石の口から言葉が漏れた。

「きれい。」

「ん?」

あまりにも小さい声だったからか、詩織は首を傾げて目を丸くしている。白石もなぜその言葉がでてしまったのか分からなかった。頬は熱くなり、耳が赤くなっていくのが分かる。

詩織は少し笑みを浮かべて、白石の手を握る。白石は少し深呼吸をして、ゆっくりと口を開いた。

「リフトではごめん。詩織がいなくなるのが想像できなくて、傷つけるようなことを言ってしまった。」

「大丈夫よ。分かってるから。」

「それとね。白石想一という男が作る物語のヒロインになってくれませんか?」


バスは高速道路の料金所を抜けて、本戦へと合流する。他の車と一緒にバスは2人を乗せて東京へと進んでいく。まるで2人の人生が周りの人と一緒に進んでいくように。東京までの2時間、想一と詩織の間には静かな時間が流れた。


東京に着くと蓮は友達にご飯呼ばれたからとそそくさと帰っていった。蓮はバスに乗る時よりもニコニコした顔をしていたような気もする。詩織と取り残された白石は、詩織の手を引き新宿駅へと歩き出した。


新宿駅には色んな人がいる。笑顔で電話をしながら改札を通る人。お年寄りを助けている駅員。改札に止められて怒っている人。さっき伊勢丹で買ったであろうコートを着て笑みがこぼれている人。恋人と手を繋ぐために片手だけ手袋をつけている人。白石が見ているフィルムに映るのは、それぞれ意志をもち動いている人。そして、彼らのフィルムにも白石想一という登場人物がいる。


さあ、明日は誰のフィルムに映り込み、人生を豊かにしていこうか。

お読みいただきありがとうございます。


白石想一が最初に抱いている社会への違和感。書いている僕自身がたまに感じることであり、それを題材にして作品を作り、自分の考えも昇華していこうと思い、書き始めました。

最初の構想では、恋愛要素など入れる予定もなかったのですが、書いているうちに着地点が恋愛エンドになりました。自分なりに色々と伏線を張って作ってみたつもりですので、ぜひコメント等で楽しんでいただければと思います。


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