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連載版 回帰の剣 ~滅びの王国を救うために俺はもう一度やり直す~  作者: ひだまりのねこ


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第二十四話 地下遺跡での戦い


「まさか地下にこんな場所があったとは」


 地下通路は思ったよりも広く、見慣れない様式の柱が並んでいる。


「古代文明の遺跡っぽいね、興味深いけど……今は王女さまの救出が優先、もうすぐ追いつくよ」

「ああ、速度を上げるからしっかり掴まっていてくれヴァレリア」


 カインがさらに速度を上げる。ヴァレリアは小さく悲鳴を上げて、落ちないように固定の魔法を使う。


「俺たちは暗視の魔法があるけど、向こうは暗闇の中をどうやって進んでいるんだ……」

「エルフの王女を攫えるくらいの実力者なら、暗視の魔法くらい使えても不思議じゃないけど……アーティファクト持ってるくらいだし暗闇でも視える魔道具、もしくは――――」


 ヴァレリアが言いかけた瞬間、彼女を背負ったままカインは大きくその場を飛びのいた。同時に先ほどまでいた場所が爆発する。


『……カワシタカ』


 暗闇から聞こえてくる不気味で温度の感じられない声、カインたちは油断なく剣を構える。


「何者だ!!」


 カインが聖剣を抜くと、その聖なる光が異形の姿を映し出した。


 瞳は血のように赤く、肌は漆黒で光沢のある鱗のようなもので覆われている。外骨格のように見えるのは甲冑だろうか、頭部は人型に近いが、角が幾本もねじれながら天を突き刺すように伸びている。その姿はまるで闇が具現化したかのようで、見る者の本能に恐怖を刻み込む。


「っ!? あれは……まさか魔族!?」


 ヴァレリアの言葉に全員驚く。魔族は千年前の人魔大戦を最後に姿を消したと言われる幻の種族だ。すでに絶滅したと言われていて、神話や伝説の中にしか登場しないため、現在では実在を疑う学者もいるほどだ。


『……邪魔者ハコロセ……メイレイ』


 手をかざしただけで魔力が収束し暗紫色の塊が凄まじい波動を放つ。


「嘘でしょ……なんて集束率……カインさま、アレはヤバい……防ぐのは無理だよ」


 ヴァレリアが鋭く叫ぶ。


「聞いたなイヴァリス、アストラ、当たったらヤバい、気を付けろ」

「了解だ、カイン、私たちが攻撃を引き付けて隙を作る、お前は魔族を倒してくれ」

「わかった、無理はするなよ、ヴァレリアは二人のフォローを頼む」

「了解」


 ヴァレリアの魔法でイヴァリスとアストラの身体能力、対魔法防御力が上昇する。


「おお!! 身体が軽いぞ」


 イヴァリスとアストラは縦横無尽に駆け回って魔族に狙いを絞らせない、が――――魔族の攻撃は凄まじく、直撃していないにもかかわらず衝撃波だけでダメージが入る。逃げ場が限定されてしまう地下通路という地形も厄介だ。


『チッ、チョコマカト――――』


 焦れた魔族は連射を止めて大技を繰り出すために大きく手を掲げる。おそらくは一帯を破壊する範囲攻撃だろう。これまでのものとは比べ物にならないほどの暗紫色の塊が形成されてゆく。


 だが――――


「隙アリだ――――」


 魔族が攻撃するより間合いを詰めたカインの方がわずかに早い、彼の剣が疾風の如く奔り、鋭い一閃が闇を裂いた。


『ムダダ、魔族のカラダハキレナイ――――ガアアアアアっ!?』


 カインの斬撃を受けた魔族の腕がぼとりと地面に落ちて、集束していた暗紫色の塊が霧散する。


『オノレ――――マゾクノサイセイリョクヲナメルナ!!』


 伝承によれば、魔族は腕や足を斬られてもすぐに再生し、新しく生えてくると言われている。


 だが――――なぜか傷口は再生を始めるどころか、斬れた部分から燃え広がるようにジリジリと侵食してゆく。


『ナ、ナンダコレハ……アリエナイ……グワアアアア!!!』


 魔族の身体は火が点いた紙のように燃え上がり――――力尽きて倒れた。



「ヴァレリア、魔族は火に弱いのか?」


 予想外の事態にカインも戸惑いを隠せない。


「いや、そんなはずないと思うけど、そもそも魔族に魔法はほとんど効かないし。それに今のって火の魔法というよりは――――」

「ああ、おそらく聖剣ソルフェリスの力だろう。伝承では人魔大戦で魔を退けたのは二本の聖剣だったという。もしかするとその聖剣とは私たちの持つものと同じなのではないか?」


 イヴァリスの言葉になるほどと頷くカイン。それならば先ほどの現象にもある程度納得がゆく。


「そうすると王国の危機というのは帝国の事ではなく魔族の事だったのか?」

「それはわからない。両方というのが一番しっくりくるが……ところでカイン、魔族は死んだのか?」

「わからない」


 不思議なことにあれほど派手に燃えたのにその痕跡が残っていない。


「ヴァレリア、どうだ?」

「……生命活動は停止しているわね、でも死んでいるのとは少し違う……仮死状態? みたいな感じだと思うけど……」

「どうしたものかな……?」


 安全を考えるのであればトドメをさすべきなのだろうが、事件の背景を知るために情報も欲しい。


「あ……多分これだ……カインさま、この魔族、操られていたんだと思う、ほら、この腕輪……間違いなく隷属系のアーティファクト……いや、それに近い模造品……?」


 たしかに魔族の様子はおかしかった。まあ、正常な魔族というものを誰も知らないので、もしかしたらアレが普通なのかもしれないが。


「よし俺が破壊しよう」

「駄目、下手に壊すとこの魔族の脳が破壊されて廃人になるから。今はとりあえず機能を封じて……外すのは少し時間かかりそうだけど、私に任せてもらえる?」

「わかった、ヴァレリアに任せる。魔族の件はとりあえず後で考えるとして――――今は王女さまだ」

 

 

 エルフの王女は、少し離れた場所に寝かされていた。着ているローブは緑と金色を基調にした装いで、葉や花をモチーフにした刺繍が施されており、一部編み込まれた長い髪は先端に向かうほど濃い金色のグラデーションになっている。見た目はカインたちとあまり変わらないように見えるが、エルフの外見年齢は人族とは異なるので実際のところはわからない。


「ヴァレリア、これが魔力封じのアーティファクトか?」


 王女の首には見たことのない文字がびっしりと描かれた首輪のようなものが嵌められていた。


「ええ、間違いないわね」

「えっと……壊すのは……マズいんだよな?」

「はあっ!? 壊すって……これがどれだけ貴重なものだと思ってんの!!」


 ヴァレリアはカインから庇うように両手を広げる。その目は完全に研究者のそれになっており、好奇心と探究心が混ざった鋭い光を宿していた。


「そ、そうなのか、それはすまなかった。だが外せるのか?」

「わからないけど……出来なくてもやるわよ!!」

 

 アーティファクトの価値は天井知らずで、実用的なものであれば城ひとつよりも高値で取引される。そんなお宝を目の前にしてヴァレリアの集中力は史上かつてないほどに高まっていた。


「……よし!! やった成功!! やっぱり知識は裏切らないわね!」 


 ほのかに光っていた首輪が輝きを失い、カチッという音と共に外れた。


「よっし、アーティファクトゲットおおおお!!!!」


 お宝を手にしたヴァレリアはめちゃくちゃ嬉しそうである。エルフ族からの聴取は受けるだろうが、基本的に敵の持ち物は倒した者が所有権を手にするのでエルフ族がアーティファクトを欲する場合はヴァレリアと交渉して買い取る必要があるのだが――――


「あれは絶対に手放さないだろうな」

「ああ、そうだな、それにしてもこれは運命なのかな?」

「かもしれないな」


 カインとイヴァリスは複雑な思いではしゃぐヴァレリアを見守る。


 回帰前、ヴァレリアを死に追いやったアーティファクトと同じものが、今は彼女の手にあるのだから。

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